「サプライズ解散」と株価、決算シーズン、投資促進税制【フィリップ証券】
高市首相が1/23召集の通常国会の冒頭に衆院を解散する見通しとなった。1/9の午後11時に読売新聞が「衆院解散を検討」と報じた直後、その「サプライズ」を受けて夜間の日経平均先物(3月限)は5万2000円近辺から一挙に5万3500~5万3900円台まで急騰。週明け1/13以降の日経平均株価は1/14に5万4487円まで上昇した。市場は、各種の情勢調査にみられるように衆院過半数233議席に対し、自民党単独で250議席超を獲得する大勝を織り込んだ可能性がある。
野党の立憲民主党と公明党が1/16、衆院選に向けて新党「中道改革連合」を結成すると報じられた「逆サプライズ」を受けて日経平均株価の上昇の勢いが鈍化したとみられる。日経平均株価の5万3500円台半ばの水準は、自民党の単独過半数超えシナリオと密接に関係してくる可能性があり、注視すべき水準だろう。
政策面では、野党も減税を中心とした財政支出拡大路線になると考えられ、高市政権の「責任ある財政」と軌を一にしている。日銀の金融政策に対しては物価高対策を重視する観点から、野党の方がタカ派的スタンスになりやすい面はあるものの、選挙動向によって株価の方向性が大きく変わるとは考えにくいところだ。
市場関係者の多数が通常国会終了後の解散総選挙を想定していた中、その日程が大幅に前倒しとなることは、今年の日経平均株価が年内高値を付ける時期も前倒しとなる可能性がある点に要注意だろう。今回と同様に、当時の安倍首相によるサプライズ解散となった2017年の衆院選挙では、日経平均株価が10/22の投開票後も上昇して翌2018年1月に2万4129円まで上昇したものの、その後の下落から年内高値を更新するまで8カ月以上を要した。
日本株が幅広い業種にまたがって買われる中、昨年7-8月に付けた昨年来高値から下落基調で推移する銘柄群もある。任天堂<7974>は半導体メモリー市況高騰によりゲーム機の製造コストが嵩むことが懸念されて昨年8月に付けた上場来高値から下落基調にある。高値からの制度信用取引期日到来を控え、押し目買いの時期を探る余地がある。決算発表シーズンを控え、一般的に株価大幅上昇は業績への期待も高まることを意味する。一見すると好決算でも「材料出尽くし」で大きく売られる銘柄が出やすくなっていることに要注意だろう。
高市政権は「強い経済」に向けて、令和8年度税制改正では国内への投資を促すため、原則として全業種を対象とし、機械装置やソフトウェアだけでなく「建物・構築物」もその対象に含める大胆な投資促進税制を定めた。設備投資の恩恵を受けやすい工作機械などの業種は、産業用ロボット関連の「フィジカルAI(人工知能)」も含めて投資の好機が到来している可能性がある。
■2017年衆院解散総選挙を振り返る~当時は北朝鮮情勢と「モリ・カケ」問題
高市首相は1/23召集の通常国会の冒頭で衆議院を解散する見通しとなった。開票日は2/8または2/15の案が出ている。台湾有事に関する首相発言で日中関係が悪化した対外情勢に加え、旧統一教会との関係に関する疑惑といった国内情勢の「内憂外患」を高い支持率を背景に乗り切ろうという意図も窺われる。
今回の「サプライズ解散」は2017年の衆院解散総選挙と状況が類似している。当時は北朝鮮のミサイル発射といった「外患」に加え、森友・加計学園問題の追及といった「内憂」を背景に安倍政権への信任が問われたが、野党の分裂・混乱もあり与党が大勝し、さらなる長期政権化の礎を築いた。「憶測」の朝刊一斉報道から選挙を経て2カ月弱で、日経平均株価は約15%上昇した。

参考銘柄
ヘルスケア&メディカル投資法人<3455>
・介護医療事業を営むシップヘルスケアHD<3360>に加え、三井住友銀行、NECキャピタルソリューション<8793>を主要スポンサーとするヘルスケア特化型J-REIT。2017年にJ-REITで初となる病院資産を取得。
・9/12発表の2025/7期(2-7月)は、営業収益が前期(2025/1期)比1.0%増の25.4億円、営業利益が同1.0%増の12.8億円、1口当たり分配金が同0.6%減の3164円(利益超過分配金335円含む)。7月末保有物件が横ばいの54件、稼働率100%。利益超過分配金は減価償却費の20%方針である。
・2026/1期(8-1月)会社計画は、営業収益が前期(2025/7期)比3.5%増の26.3億円、営業利益が同4.3%増の13.4億円、1口当たり分配金が同2.7%増の3250円。2026/7期まで含めた会社予想分配金利回り(1/15終値)が5.16%、株式のPBRに相当するNAV(純資産)倍率が0.89倍、JCR(日本格付研究所)による長期発行体格付はA+。国内金利上昇の逆風下でも高稼働率を背景に業績は安定。
ゴールドウイン<8111>
・1951年に富山県西砺波郡津沢町で津沢メリヤス製造所を設立。スポーツ用品関連として、アウトドア関連ブランド、アスレチック関連ブランド、ウインター関連ブランドのそれぞれの商品を主に扱う。
・11/6発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比4.2%増の555億円、営業利益が同35.5%増の69億円。直営店を中心に主力ブランド「THE NORTH FACE」の実需回復が進んだ他、インバウンド需要が高水準で推移。原価設計適正化や価格改定を受けて粗利益率が1.5ポイント改善。
・通期会社計画は、売上高が前期比6.2%増の1405億円、営業利益が同18.2%増の259億円、株式分割の影響を考慮後の年間普通配当が同3.67円増配の58円。同社は日本国内で商標権を持つ「THE NORTH FACE」に加え、海外で中国を中心に「ゴールドウイン」ブランドを展開。26年はニューヨーク、ロンドン等で出店予定。2月開催の「ミラノ・コルティナ冬季五輪」も追い風になると見込まれる。
エイチ・ツー・オー・リテイリング<8242>
・2007年10月に阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合により持株会社として設立。百貨店事業(阪急阪神百貨店)、食品事業(イズミヤ、関西スーパーマーケット他)、商業施設事業を主として展開。
・10/31発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比0.5%増の3330億円、営業利益が同21.0%減の118億円。主なセグメント利益は、百貨店事業(売上比率26%)が前年の好調なインバウンドの反動減と改装による売場閉鎖から35%減の82億円、食品事業(同63%)が14%増の42億円。
・通期会社計画は、売上高を前期比1.1%増の6890億円(従来計画6900億円)へ下方修正の一方、営業利益は同13.9%減の300億円、年間配当は同2円増配の44円と従来計画を据え置いた。阪急百貨店は外商部隊を強化し、沿線に住む富裕層の邸宅に御用聞きに出向いて顧客ニーズを捉える戦略に定評。日中関係悪化に伴うインバウンド減少の影響を相対的に受けにくい面があるだろう。
コナミ・グループ<9766>
・1969年創業。家庭・携帯用ゲーム「デジタルエンタテインメント」、施設向けビデオゲーム「アミューズメント」、カジノ施設向け「ゲーミング&システム」、スポーツクラブ運営「スポーツ」の4事業を営む。
・10/30発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比22.1%増の2248億円、売上高から売上原価と販管費を控除した事業利益が同29.6%増の650億円。デジタルエンタテインメント事業(売上比率75%)は主力コンテンツが好調により28%増収(1687億円)、事業利益が32%増の613億円。
・通期会社計画は、売上高が前期比2.0%増の4300億円、事業利益が同4.5%増の1140億円、年間配当が同1円増配の166円。2026年は、2月の「ミラノ・コルティナ冬季五輪」にはじまり、3月に「2026ワールドベースボールクラシック(WBC)」、6月から7月にかけて「サッカー・ワールドカップ(W杯)北中米大会」が開催されるなど、スポーツのビッグイベントが目白押し。同社への追い風が見込まれる。
※執筆日 2026年1月16日
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