エネルギー価格高騰で連想される4年前のグローバル経済【フィリップ証券】
日経平均株価の先物(ラージ、ミニ)とオプションの最終決済のための特別清算値(SQ値)で、3の倍数月の第2金曜日に算出される「メジャーSQ」は、推計値で5万2909円45銭となった。海外投資家は衆議院選挙で自民党が大勝したことを受けて2月の第2週から最終週まで3週間で、現物と先物の合計で約3兆6000億円と大量の買い越しとなったが、2/28の米国とイスラエルによるイランへの攻撃を経て、3月第1週には約7500億円の売り越しとなった。日経平均株価の現物と指数先物の価格差に着目した裁定取引(アービトラージ)の買い残(現物買い・先物売り)も2月最終週に約3兆8600億円と12年ぶりの高水準に上っていたが、3月第1週には裁定解消売りを受けて当限で約7500億円減少した。海外投資家による「高市トレード」への期待が高かったことの反動によって、価格変動が大きくなった可能性がある。
中東産原油へのエネルギー依存度が高い日本の弱点が顕在化したことも日経平均株価の下落幅を大きくした要因と考えられる。円安ドル高の進行は株価の上昇要因になるところ、エネルギーの純輸出国でエネルギー価格高騰の悪影響が相対的に小さい米国経済と比較した場合の日本経済の弱みを示すものと受け取られているようだ。
その米国においては、プライベート・クレジット(ノンバンク融資)が金融関連株を揺さぶっている。米資産運用最大手ブラックロックや投資銀行大手モルガンスタンレーの傘下ファンドで投資家からの解約請求の増加を背景に、解約を制限する動きが相次いだ。米商業銀行最大手のJPモルガン・チェースも、ソフトウェア企業向けエクスポージャーがあるプライベート・クレジット・ファンド向けローンの一部について評価額を引き下げるなど、与信姿勢を厳格化する動きもみられる。
景気循環の波(景気サイクル)には4つの波があり、そのうち在庫循環に伴う短期変動の「キチンの波」は平均約40ヵ月周期とされる。4年前の2022年に遡ると、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、3月にWTI原油先物価格が1バレル130ドル台まで上昇し、供給網の混乱からコストプッシュ型のインフレが加速した。それでも、1バレル100ドルを超えるような高騰は6月までで終わり、数ヵ月のタイムラグで秋以降に米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が反転上昇した。
米国には1973年制定の「戦争権限法」という法律がある。大統領が議会の事前承認なしに軍事行動を開始した場合、48時間以内の議会通知と、原則60日以内の撤退を義務付ける内容である。米国がイランへの軍事攻撃から早期に撤退するシナリオも考えられる。それでもホルムズ海峡の安全な航行が今後も保証されるわけではなく、物価への影響はこれから様々な面で現れてくるだろう。
■日本株物色動向・4年前との比較~エネルギー価格高騰で物色される業種
WTI原油先物価格が3/9、一時2022年6月以来の1バレル100ドル超えとなった。2022年は2/24にロシアがウクライナに侵攻した後に、天然ガスや原油のほか、肥料や食料、植物油、金属資源から半導体材料に至るまで深刻な供給不足と物価高騰を引き起こした。
TOPIX(東証株価指数)33業種について2022年2月末~5月末まで3ヵ月間の騰落率を見ると、鉱業、石油・石炭製品、倉庫・運輸関連業、海運業、電気・ガスが5位までを占めた。これに対し、米国とイスラエルのイランへの攻撃直前の2月末から3/11までの騰落率では、鉱業と海運業が堅調に推移。一方で、石油・石炭製品、倉庫・運輸関連業、電気・ガスはマイナスとなっているものの、原油相場の高騰が続けば上昇余地も出てくるだろう。

参考銘柄
住石ホールディングス<1514>
・1953年に住友石炭鉱業を設立。1691年の別子銅山開坑を会社沿革の起点とする。石炭事業のほか、新素材事業(工業用人工ダイヤモンドの製造等)、採石事業(岩石の採取・加工・販売)を展開。
・1/30発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比12.5%増の82億8600万円、営業利益が1億8300万円(前年同期1300万円)。事業別セグメント利益は、石炭事業(売上比率93%)が22%増の3億1000万円、新素材事業(同2%)が14%増の6700万円、採石事業(同5%)が12%増の1億2600万円。
・通期会社計画は、売上高が前期比5.5%減の97億円、営業利益が同6.2倍の3億円、年間配当が同15円減配の15円。人工ダイヤモンドは経済安全保障上の重要物資であるほか、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、供給懸念の高まりから原油や天然ガス価格が高騰。ロシアのウクライナ侵攻時と同様に、エネルギー源として石炭の活用を見直す動きが今後出てくる可能性がある。
東映アニメーション<4816>
・1948年設立。映像制作・販売事業(アニメ作品の企画・制作・放映権販売)、版権事業(キャラクターのライセンスを許諾しロイヤリティを得る)、商品販売事業(キャラクター商品販売)等を展開する。
・1/30発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比7.6%減の671億円、営業利益が同0.3%減の233億円。事業別セグメント利益は、映像制作・販売事業(売上比率35%)が7%減の80億円、版権事業(同52%)が9%増の189億円、商品販売事業(同9%)が4%減の7億円となった。
・通期会社計画は、売上高が前期比12.7%減の880億円、営業利益が同19.8%減の260億円、年間配当が同横ばいの41円。同社の親会社である東映<9605>は33.71%を保有し、テレビ朝日HD<9409>が19.64%を保有する第2位株主。テレビ朝日は東映の筆頭株主として17.12%を保有。3/12終値の時価総額は、東映アニメーションが5487億円、東映が4290億円と親子で逆転している。
日本農薬<4997>
・1928年にADEKA<4401>の農薬薬品部と藤井製薬が合併して設立。主に殺虫剤・殺菌剤・除草剤など農薬の製造販売のほか、農薬以外の化学品事業、その他事業(造園緑化工事等)を営む。
・2/9発表の2026/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比14.6%増の703億円、営業利益が同60.6%増の58億円。売上比率93%を占める農薬事業は、各地域(国内、北米、中南米、欧州、アジア)での販売増に加え、利益面でブラジルでの原材料価格下落に伴う収益性の改善が貢献した。
・通期会社計画は、売上高が前期比9.3%増の1093億円、営業利益が同7.3%増の92億円、年間配当が同5円増配の27円。同社は昨年4月、親会社のADEKAとともに旧村上ファンド系シティインデックスイレブンスから親子上場に関連して少数株主の保護と株主価値向上策について株主提案を受けていた。当時から状況が大きく変わっておらず、アクティビストによる株主提案の可能性がある。
グローバル・ワン不動産投資法人<8958>
・明治安田生命、三菱UFJフィナンシャルグループ、近鉄グループをスポンサーとするオフィスビル特化型J-REIT。駅近、築浅、大型のオフィス物件を中心に厳選投資の方針で規模拡大よりも質を重視。
・11/19発表の2025/9期(4-9月)は、営業収益が前期(2025/3期)比8.2%増の80億円、営業利益が同20.4%増の50億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が同11.4%増の4271円。東京オフィス賃貸市場が堅調に推移する中、錦糸町と横浜の物件売却益の計上が寄与し、増益。
・2026/3期(10-3月)会社計画は、営業収益が前期(2025/9期)比7%減の75億円、営業利益が同9.9%減の45億円、1口当たり分配金(利益超過分配金を含まない)が3585円。3月末でメインスポンサーが明治安田生命と三菱UFJ信託銀行の2社体制に変更される。
※執筆日 2026年3月9日
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