マイナーのインセンティブ問題【フィスコ・ビットコインニュース】

通貨
2018年2月20日 13時01分

ビットコインは、その発行量に上限を設けられている。この設定が、ゆくゆくのネットワーク維持について多大な影響を与えるのではないかという疑問が以前から存在する。この疑問に対してよく述べられている、技術革新とBTC価格高騰によって解決できるとする予測について考察してみたい。

ビットコインの発行量が上限を迎えると、マイナーがマイニングを行うことで得られる報酬はビットコインの取引手数料のみとなるため、誰もマイニングを行うインセンティブが起こらなくなり、ネットワークを維持できないのではないかというものだ。

ビットコインのネットワークは、マイニングと呼ばれる取引を成り立たせる膨大な計算作業を、不特定多数のマイナーと呼ばれる参加者が行うことで維持されている。この計算作業は、高性能のコンピューターを利用し、多大な電力を消費することで行われる。これに対してマイナーには報酬として1ブロックをマイニングするたびに新規発行されるビットコインが与えられ、この利益がマイニングを行う動機となっている。また、マイナーは1ブロック毎の取引手数料も得ることができる。

2018年時点では1ブロックのマイニングにつき12.5BTCが新規発行され、報酬としてマイナーに支給されている。この新規発行ビットコインは約4年(21,000ブロック毎)に一度半減していき、2140年頃までにすべてのビットコインがマイニングされるようプログラムされている。つまり2140年に近づく過程で、マイニングをすることで得られる報酬はどんどん減少していき、新規発行分がなくなった後は1ブロック内の取引手数料分のビットコインのみとなるのだ。

この問いに関する議論の中でよく述べられる見解のひとつは、技術の進歩が問題を解決するというものだ。年月の経過とともにマイニングを行うためのマイニング・チップ(半導体チップ)がより小さく、安価になることで、どのようなエレクトロニック・デバイスでもマイニングできるようになれば、現在のようにコストがかかるものではなくなる。マイニング機器が安価になり、マイニングの際にかかる消費電力も抑えられることによって、マイニングという行為が現状のように多大な設備投資の下で行われるビジネスではなく、日常的に誰もが参加できる行為となるというものだ。また、マイニング・マシーンのエネルギー効率性が高くなることで、取引手数料だけでも十分に消費電力+ハードウェアのコスト以上の利益を出すことができるようになるのではないかというものである。

もうひとつの見解は、ビットコインの価格が現在よりもさらに高騰することで、取引手数料を得るだけで十分な利益となるというものである。では、実際問題どれだけ価格が上昇すればよいのだろうか。

2月13日時点で、ビットコインのネットワーク全体における過去一ヶ月(4,801ブロック)のブロック毎の平均取引手数料は1.6BTCである。マイナーが得られる報酬全体に占める取引手数料の割合は約13%となっている。(データはBTC.comより)

もし仮にブロック毎の取引手数料が現在の水準を維持し、かつ各マイニングプールを維持するのに現状と同程度の収入が必要とした場合、1ブロックあたりの平均取引手数料である1.6BTCが現時点で1ブロック毎にマイナーの得られる利益12.5BTC+1.6BTC=14.1BTCに匹敵する必要があり、これには1BTCがここ1カ月の平均価格の8.8倍となる90,569.6ドル(約975万円)となる必要がある(ドル/円は107.7円、BTC価格は2月13日時点の過去1カ月におけるBTC/USD価格の平均価格、10,292ドルより計算、数値はCoin Market Capより)。これはあくまで技術革新などによる電力コストの低下などを顧みないものではあるが、ひとつの参考となるだろう。

また、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の在北京アナリストであるソフィー・ルー氏は2月6日、一時ビットコイン価格が約7,000ドルまで下落したことを受けて、電力消費が非常に少ない一部のマイナーを除いて多くが利益の出ない状況に陥っていると報告していた。仮に現状で1BTC=7,000ドルが損益分岐点となっているとしてみた場合には、マイニングによる利益が取引手数料だけとなった時にはビットコイン価格は54,600ドル(約588万円)となっている必要がある。

これらの概算は、マイニング・マシーンの性能向上による電力消費の将来的な低下や、ライトニングネットワークなどの技術革新による取引手数料の短縮がどのように進められるのかといったいくつかの要素を省いた考察だが、少なくとも現状では、ビットコインは今後120年あまりの間にビットコイン価格が高騰することに依拠した設計となっているといえる。

《MT》

提供:フィスコ

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