米当局、クアルコム買収案に「待った」 中国5G標準化主導に警戒

経済
2018年3月12日 8時03分

米国企業への直接投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)はこのほど、米半導体大手クアルコム(Qualcomm)に対する買収案に異を唱えた。CFIUSが公開した声明文で、米政府は、買収案には国家安全保障のリスクがあり、中国当局が第5世代移動通信システム(5G)の標準化を主導する可能性があると懸念した。

シンガポールに本社を置く同業のブロードコムは2月下旬、無線通信最大手でもあるクアルコアに対して、1株当たり79ドル、総額1170億ドルを提示し買収交渉を行った。クアルコム側は、これまでの買収提示額と同じく低すぎると主張し、買収に難色を示していた。

世界各国通信企業は2020年、超高速・大容量・多接続・低遅延などの特徴を持つ通信を実現する5Gの商用化を目指している。クアルコムは5Gの規格や特許の開発をリードする米通信企業のなかでもリーダー的な存在だ。

CFIUSは、クアルコムを買収後、中国当局が世界の5G通信規格標準化プロセスにおいて、主導権を持つことを警戒している。このため、CFIUSはクアルコムに対して、審査結果が出るまで、買収案をテーマとする株主総会開催の延期を要請した。

これを受けて、クアルコムは3月6日に行う予定だった株主総会を4月5日に延期した。株主宛の通知とともに、CFIUSの声明文が同封されたという。

中国当局は5日の全国人民代表大会(全人代)会議で、経済発展の新たな原動力として、製造業の振興策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」の推進を強調したばかり。当局は、5G産業への全面的サポートを明言した。

CFIUSは同声明文で、5Gの技術分野で中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の急成長に対して強い懸念を示した。

CFIUSは、ブロードコムの買収案について、私募ファンドから資金を調達する手法を疑問視した。買収が成立すれば、クアルコムの研究開発などへの長期投資が減らされ、イノベーション向上ができなくなる恐れがあり、クアルコムが弱体化するだろうとした。その隙に、中国当局が5G標準化プロセスに強い影響力を発揮する可能性が高いと指摘した。

当局は「ファーウェイなどの中国通信企業による国家安全保障上のリスクを考慮した上、同買収案によって、5G主導権が中国側に渡る可能性があり、米国の安全保障にマイナスの影響を与えるだろう」との認識を示した。

クアルコムは民間の通信インフラだけではなく、米国防省の機密プロジェクトなどにも通信サービスを提供している。

米通信技術企業、インターデジタルが17年初めに発表した調査によると、5G特許の開発に関して、これまでクアルコムが168件、米同業インテルが103件。しかし、中国のファーウェイは234件で、世界1位となった。主因は、ファーウェイは5G技術の研究開発に投資を拡大し続けているためだ。

(翻訳編集・張哲)

【ニュース提供・大紀元】

《HT》

提供:フィスコ

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.