大石哲之:ビットコイン最新の見通し(3月20日)【フィスコ・仮想通貨コラム】

通貨
2018年3月20日 13時16分

以下は、フィスコ客員アナリストの大石哲之(「ビットコイン研究所)」代表、ツイッター@bigstonebtc)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

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※2018年3月19日に執筆

コインチェックは送金先を追跡できない匿名性の高い仮想通貨3種類の取り扱いを打ち切る方向で調整していると時事通信が報じた。

この3通貨とは、DASH(ダッシュ)、Monero(モネロ)、Zcash(ジーキャッシュ)の3種類である。

まずこの3つの匿名性について簡単に解説したうえで、匿名通貨の見通しについて簡単に私見を述べる。

DASHであるが、主にコインジョインという手法で、いくつかの送金をまぜこぜにして、送金元と送金先の対応がわかりにくくするという技術が採用されている。あくまで解析がしづらいというだけで、送金内容自体はブロックチェーン上で明らかになる。

Moneroの場合は、リング署名という手法をつかい、送金のアドレスが秘匿できる。ただし、数量は秘匿できない。

Zcashの場合は、Z-SNARKというゼロ知識証明の技術を用いており、完全な秘匿を可能にする。つまり、送金のアドレス及びに、数量のどちらも秘匿できるため、外部からはどのような送金が行われたか一切伺い知ることはできない。

このような特性上マネーロンダリングに使われるのではないかと言われているが、私は疑問だ。そもそも、仮想通貨の送金は追跡できないし、止めることも、検閲することもできない、という前提にたって、現金との交換の接点である取引所を重点的に取り締まり監視しようというのが、世界的な対策の流れだ。日本もこの路線にそって、仮想通貨交換業の許認可を導入し、犯罪収益移転防止法の適用などを決めた。

取引所で補足する、というのが基本の作戦であったわけだが、匿名通貨自体の取り扱いを禁止するということは、追跡できない通貨を認めないということであり、仮想通貨そのものの追跡性の領域に踏込んでしまっているように思える。

秘匿トランザクションは非常にサイズが大きい。たとえば、Zcashの秘匿トランザクションは通常の送金にくらべて20倍以上のデータサイズがあるとされている。つまり、送金にかかる手数料も20倍になってしまう。ただですらブロックサイズが逼迫しているビットコインや、処理遅延をおこしているイーサリアムにおいて、20倍ものデータがやり取りされる状況は考えづらい。

コインのプライバシーや検閲耐性と、処理容量というのがトレードオフになっているため、現時点ではビットコインやビットコインキャッシュ、イーサリアムには秘匿性のある処理は導入されないだろう。

だからといって、これらのメインストリームのコインの開発者が、プライバシーや検閲耐性という概念を軽視しているわけではない。むしろこのトレードオフを技術的にどのように解決し、最終的に秘匿性をどのように確保するかを慎重に考えているといってもよい。ビットコインにしろ、イーサリアムにしろ、最終的には、相当の秘匿性を獲得するだろう。

たとえば、セカンドレイヤーといわれる技術においては、秘匿性を高めることは容易である。データの容量が問題にならないため、秘匿機能をつけることができるほか、そもそもの取引自体がオフチェーンであり、誰もが閲覧できるブロックチェーン上には最終的な取引残高しか記録されない。

また、MASTと呼ばれるスクリプトの内容を一部秘匿するような技術では、スマートコントラクト実施にどのような条件の取引が行われたのかが、わかりにくくなる。こうした技術はどんどん発展するはずで、重要性を増していくだろう。

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執筆者名:大石哲之

ブログ名:ビットコイン研究所

《SI》

提供:フィスコ

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