【植木靖男の相場展望】 ─ 米株の落ち着きを待つ
「米株の落ち着きを待つ」
●世界の覇権争い、その先に待つもの
米国株価が再び急落商状をみせている。トランプ大統領が、中国製品に高関税を課す制裁措置を正式に表明、貿易摩擦が激化するとの警戒感が強まっているからだ。
米国株は2月8日の2万3860ドルに接近、とばっちりを受けた日本株は3月5日安値2万1042円をあっさり割り込んでしまった(※日米ともに終値ベース)。
しかも、世界の市場の中で、日本の下げが最もきつい。
株価の本質は企業収益にあるが、まず急伸する円高が企業収益を直撃する。また、わが国の輸出も対中国が最も多い。さらに結果として、わが国景気への影響も大きい。企業収益にマイナスである。
株価の下落も逆資産効果からすれば景況感を悪化せしめ、企業収益に不利となる。
では、今後をどう読むか。
トランプ大統領の狙いは、あくまでも対中国であり、知的財産権の保護、貿易赤字の縮小である。
だが、真の狙いは、近年中国は軍事・経済で米国に迫る勢いで成長をみせ、まもなく追い抜くとみられている。これまで猫をかぶってきたが、ここへきて牙をむき出してきた。これに米国は脅威を感じたのではないか。しかも中国は、共産党独裁専制の統治システムを世界に拡大せんとしているとすればなおさらである。
まさに米中激突は、すなわち世界の覇権争いといえよう。
●株価反発の条件は?
とはいえ、貿易摩擦は米中ともに傷つき、世界経済を窮地に陥れる。これは米国にとっても本意でなかろう。まして中国は巨額の米国債を保有しているのだ。
とすれば、中国の知的財産権面での改善、対米輸出の自粛といった形で折り合いがつく可能性もあろう。期待したい。
とはいえ、日米株価ともに年初来安値を下回ることになれば、下値のメドは定めがたい。
ざっくり言えば、13年5月の急落時には20%余の下げで止まり、年内には年初来高値近辺に戻している。今回に当てはめると、1万9000円台前半がその水準だ。果たしてどうか。
株価反発の条件は、わが国市場の主役が海外勢である限り、ここ10週間連続で売り越している彼らが買い戻しに入ることしかない。
それには米国株が下げ止まることが絶対条件である。米国株とて株安は国民の意に沿わないことは言うまでもない。悲観し過ぎは禁物である。
とにかく当面は、様子見に越したことはないだろう。先人は言う。“急落したとき、株価の先行きを予想するより、まずは自らのポートフォリオをどう処理するかを考えよ”。
2018年3月23日 記
株探ニュース