米中貿易摩擦について考える

経済
2018年4月3日 18時28分

トランプ米政権は3月22日、中国による知的財産権の侵害に対して通商法301条に基づき、最大で1300品目、600億ドル相当の輸入に25%の関税賦課を適用することを決定。また、翌日23日には米国の安全保障を理由に、通商拡大法232条に基づき、鉄鋼に25%、アルミに10%の高関税を課す措置を発動した。同関税の対象国には中国、日本が含まれる。

米国の鉄鋼等への追加関税措置発表を受け、中国政府は3月23日、対抗措置として、果物、ワイン等120品目に15%、豚肉やアルミスクラップ等8品目に25%の関税を上乗せする案を公表し、今月2日にはトランプ米政権による鉄鋼、アルミニウムの輸入制限に対抗し、米国製品128品目に最大25%の関税を上乗せする措置を発動した。報道によると、中国の商務省は2日に談話を発表し、「米国の措置は世界貿易機関(WTO)の安全例外条項を乱用した」と批判し、早急に輸入制限を撤回するよう米国に求めている。

米国政府は知的財産権の侵害を巡る制裁関税の対象リストを今月上旬頃に発表し、6月までに制裁関税を導入するものとみられている。通商・貿易分野における米中の対立がすみやかに解消されることは期待できないとの見方が多い。

ただ、国際通貨基金(IMF)によると、米国、中国の経済規模を考慮した場合、これまでに公表されている米国、中国の制裁・報復措置が全て発動されたとしても、新たに発生する関税額は最大で200億ドル程度にとどまる。経済規模で世界1位と2位の大国間で生じている貿易摩擦の影響を軽視することはできないものの、関税額の上乗せが両国の経済活動に重大な影響を及ぼすとは思えない。

中国側では、米国産の果物、ワイン、豚肉などの輸入が減少してもブラジル、NZ、ロシアなど他国からの輸入量を増やすことで十分対応できるとみられている。事態の進展を楽観視すべきではないが、米中間で生じている貿易摩擦が世界的な貿易戦争へとエスカレートする可能性は現時点では低いと思われる。米中双方が妥協できるレベルで制裁措置や報復措置をある程度まで緩和する可能性は残されていると思われる。

《MK》

提供:フィスコ

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