“貿易戦争”懸念が支えるゴールドの行方、安値ではETFに逃避買い <コモディティ特集>

市況
2018年4月4日 13時30分

―レンジ相場ブレイクの条件は? 価格差拡大プラチナの割安感検証―

金(ゴールド)は今年に入り、1300~1365ドルのレンジ相場が続いている。インド勢などの実需筋が高値での買いを見送っていることや、ドル買い戻しの場面で利食い売りが出やすいことが上値を抑える要因である。しかし、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ予想が年3回に据え置かれたことや、米財政赤字の拡大見通し、米国の保護主義による貿易戦争に対する懸念が支援要因であり、安値では金ETF(上場投信)に逃避買いが入った。中長期では今回のレンジをどちらに放れるのか、当面の材料を検証する。また、金とプラチナ(白金)の価格差が400ドル以上に拡大し、過去最高を更新した。プラチナが割安なのかどうかも確認する。

●中国の報復関税で貿易戦争に対する懸念が高まる

中国は2日、米国の鉄鋼・アルミニウムの輸入関税に対抗し、米国製品128品目に最大25%の関税を課す報復措置を発動した。中国の商務省は「米国の措置は世界貿易機関(WTO)の安全例外条項を乱用したもの」と批判した。

トランプ米大統領は、中国の知的財産権侵害に対し、中国からの輸入品600億ドル相当へ制裁関税を課す大統領覚書にも署名した。貿易戦争回避のための交渉も行われているが、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が中国との交渉期間を「2ヵ月」に区切る考えを示しており、6月には制裁関税が発動されるとみられる。米中間の貿易戦争がエスカレートすると、金ETF(上場投信)に投資資金が流入し、価格が押し上げられる。

●中朝首脳会談で北朝鮮の非核化は本気か?

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が3月25~28日、中国を訪問し、北京で中国共産党の習近平総書記と会談した。朝鮮半島の非核化実現に尽力する、と表明する一方、見返りとして米国と韓国による「和平実現のための段階的な措置」に言及し、米国に圧力路線からの転換を求めた。5月までに予定されている米朝首脳会談を控えて進展が見られており、地政学的リスクが後退するようなら金の上値を抑える要因である。

しかし、北朝鮮の対話の動きは、米国本土に到達可能な核弾頭ミサイルなど兵器開発を進めるための時間稼ぎ、との見方も出ている。ただ、米朝首脳会談で北朝鮮が曖昧な態度を示せば、即開戦となる可能性もある。韓国の政府当局者は南北首脳会談を4月27日に開催するとしており、北朝鮮の非核化が本気かどうかを確認することになりそうだ。

●リスク回避で金プラチナ比差が拡大

プラチナはドルが買い戻されたことに加え、貿易戦争に対する懸念などを受けて パラジウムが調整局面を迎えたことが圧迫要因になり、950ドルから下げ幅を拡大した。株式市場が急落する場面も見られ、リスク回避の動きとなり、プラチナETF(上場投信)の買いが見送られていることも下げ要因である。

ただ、900ドル前後まで下落すると、鉱山会社の生産コストが意識されるとみられ、割安感が強まる可能性がある。今年のプラチナのファンダメンタルズは昨年から供給過剰幅を縮小し、中立となる見通しであり、貿易戦争に対する懸念が後退すれば、1000ドル付近まで戻す可能性が出てくる。

また、3月の米自動車販売は前年同月比6.3%増の年率1748万台となった。ゼネラル・モーターズ(GM)の販売が事前予想を上回っており、販売減少に対する懸念が後退すれば、プラチナやパラジウムの下支え要因になるとみられる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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