ラクオリア創薬 Research Memo(9):ロイヤルティの拡大で収益の安定性が着実に増大。19年12月期黒字転換へ

特集
2018年4月16日 18時24分

■業績見通し

前述のように、ラクオリア創薬<4579>は3ヶ年中期経営計画『Odyssey 2018』において、2020年12月期までの業績計画を公表している。各年の大まかな収入構成は以下のようになっている。

前述のように、2017年12月期と2018年12月期は、臨床試験の費用計上時期が当初計画からずれ込んだ影響で業績のトレンドが大きく変わってしまった。当該臨床試験は約2ヶ月遅れで2018年2月までに完了している。これに関する研究開発費332百万円の計上時期を当初計画どおり2017年12月期として長期の業績推移を表すと、以下のようになる。研究開発の進捗に伴い売上高が着実に伸長し、それにつれて営業損失も縮小して2019年12月期の営業黒字転換へとつながる流れが読み取れる。

1. 2018年12月期の見通し

2018年12月期について同社は、売上高予想の1,388百万円の約9割は、確実性の高いマイルストンやロイヤルティで構成されているとしている。その具体的な中身を以下に掲げた。これらのいずれもが実現可能性が非常に高いものであることは前述のとおりだ。具体的な金額は開示されていないが、マイルストンは契約で金額がある程度決まっており、見通しから変動する可能性は小さいと弊社ではみている。一方ロイヤルティは売上高に応じて変動する性質のものだ。動物薬について同社がどの程度の売上高を前提としているか明らかにされていないが、過大な想定はしていないと弊社では見ている。CJヘルスケアがP-CABを上市する見込みであるが、これによるロイヤルティは実質的には来期からになるとみられ、今期予想には織り込まれていない模様だ。

前述した旭化成ファーマに対するP2X7受容体拮抗薬のライセンスアウトに伴う契約一時金は、2018年12月期の業績予想に織り込み済みとみられる。同社は2013年11月以来、約5年間にわたり共同研究を続けてきた。その進捗状況に照らし、旭化成ファーマとのライセンス契約は確実性の高い収入項目として位置づけられていたとみられる。今期業績のサプライズ要因とはならないものの、想定通りにライセンスアウトされたことによって、今期から来期以降の業績予想の蓋然性が一段と高まったことは評価されるべきであろう。

これらに加えて同社は、売上高予想の約1割について新規契約による収入を織り込んでいる。候補化合物としてはP-CAB(日米欧を対象)、グレリン受容体作動薬、モチリン受容体作動薬、選択的ナトリウムチャネル遮断薬、TRPM8遮断薬などがある。業績への織り込み方については、具体的な物質を想定するのではなく、ライセンス契約に伴う一時金収入のポテンシャルと発生確率で算出した結果を織り込んだとみられる。実際の契約はオールオアナッシング(100か0か)であり、P-CABのような大型の化合物の導出が決まれば大きく上振れとなる可能性もある一方、全くのゼロとなる可能性もある。但し、前述のEAファーマからのマイルストン収入については、今期の業績予想に織り込み済みと発表されているものの、おそらく確実性の低い1割相当分に組み込まれていたと見受けられることから、EAファーマのマイルストン達成により1割相当分についても一定の収入を確保できたものと弊社では考えている。

事業費用については、基本的には2017年12月期実績から大きく変動しない計画となっている。ただし研究開発費は、前述したように英国でのP-I臨床試験関連費用が今期に計上されるため、前期から大きく膨らみ利益を圧迫することになる。

2. 2019年12月期の見通し

2019年12月期は売上高が1,961百万円と前期比573百万円の増収が見込まれている。従来の予想との比較でも273百万円の上振れとなっている。このベースを形成するのは動物薬2剤とCJヘルスケアのP-CABからのロイヤルティだ。ここにMeiji Seikaファルマからのジプラシドンの承認申請にかかるマイルストンや、子会社のテムリックが導出したTM-411についてSyrosの臨床試験の進捗によるマイルストンなどが加わり、売上高の大幅増収が実現されるとみられる。

事業費用では研究開発費が通常レベルに戻るほか、他の費用項目も前期比横ばい圏で推移するとみられる。売上高の大幅増収の一方、事業費用が減少する結果、営業損益は182百万円の黒字に転換することが見込まれる。

3. 2020年12月期の見通し

2020年3月期は売上高が前期比111百万円の減収が予想されている。これは、動物薬2剤とP-CABのロイヤルティは順調に拡大し、またジプラシドンからのロイヤルティが新たに加わると期待されるものの、マイルストンについては端境期となることを織り込んだ結果だ。一方事業費用でも、マイルストンにかかる原価が減少することで事業費用総額が前期比減少し、営業利益は前期比減益ながらも黒字を維持する見通しとなっている。

弊社では、2020年12月期の減収減益見通しについて、今後の変動要素も多く、現時点で過度に懸念する必要はないと考えている。マイルストンは2018年12月期及び2019年12月期の新規導出によって変動し得るほか、CJヘルスケアがP-CABを中国企業にサブライセンスした件について進捗する可能性もある。また、新規導出による契約一時金がマイルストンの端境期を埋め合わせることも起こり得るとみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《MW》

提供:フィスコ

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