S&P500 月例レポート ― 「大いなる期待感」がもたらした好調な企業利益 (2) ―

市況
2018年5月18日 13時30分

●S&P500指数

市場は再び10%の調整ポイント近くで膠着し、それまでの9年間の強気相場から獲得した利益はマネー・マネージャーにとって魅力的だったため、企業業績への期待の大きさ、貿易戦争への懸念、ワシントンで続く対立はいずれも、4月の相場上昇観測が「エープリルフール」に終わる可能性を示唆していました。しかし、予想外のプラスとなった売上高に伴う良好な利益、貿易戦争が貿易交渉に移行したこと、さらに北朝鮮問題も(少なくとも今のところは)沈静化するなど、良好な条件が整いました。その結果、市場の不安は薄れ、ファンダメンタルズがより注目されるようになり、振り返ってみると、ポートフォリオの入れ替えは通常の規模となりました。相場が上昇して月を終えたことは喜ばしいことですが、何よりも良かったのは、大きな落とし穴となりうるあらゆる懸念要因を回避できたことです。

決算発表は峠を越したものの、その後、小売業の発表が始まるため、5月も企業業績の影響は続くと予想されます。また5月2日にはFOMCが開催され(結果は午後2時発表)、声明文の内容に注目が集まるでしょう。現時点で政策変更は見込まれていません。景気が予想通りに拡大すれば、次回の利上げは6月に、そして年内さらに2回(おそらく9月と12月)の利上げが予想されます。5月には、減税の影響に関する分析も関心の高いテーマになるとみられます。実際の節税額が算出され、予想節税額が再評価される中、企業への影響が検証されるでしょう。経済指標によって消費者の支出の詳細(小売売上高、住宅改修など)が明らかになれば、米国GDPの70%を占める消費支出に対する減税の効果への関心も高まるでしょう。

過去の実績を見ると、5月は57.8%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.17%、下落した月の平均下落率は4.63%、全体の平均騰落率は0.13%の下落となっています。今後のFOMCのスケジュールは、2018年5月1日-2日、6月12日-13日*、7月31日-8月1日、9月25日-26日*、11月7日-8日、12月18日-19日*(*は記者会見が行われる)となっています。

4月のS&P500指数は0.27%と、小幅ながら待望の上昇となり(配当込みのトータルリターンは0.38%)、過去2カ月連続のマイナス(3月は2.69%下落、2月はさらに大幅な3.89%下落。その前の1月は過去最高値を数回更新して5.62%上昇)から辛うじて反転しました。年初来では0.96%下落(同マイナス0.38%)と依然としてマイナスで、2018年1月26日に付けた終値ベースでの最高値を7.83%下回っています。大統領選当日からは23.77%(同27.42%)の上昇となりました。

2月に始まったボラティリティの上昇は4月も続き、1%以上変動したのは月間取引日数21日中6日でした(上昇が3日、下落が3日)。出来高の大幅な変動やプログラム取引による大きな影響はなく、相場は落ち着いていました。月初めは貿易関連を中心にニュースが相場全体の流れを決めていましたが、企業の決算発表が始まると、特に貿易戦争の問題が落ち着き、北朝鮮問題も沈静化したことから、個別銘柄での動きへと徐々に移行しました。

業績は良好でも事前の高い期待と比較され、一部で下値を拾う動きが見られるなど、セクター別の騰落率は引き続きまちまちで、その差は拡大しました。4月は最も値上がりしたセクター(エネルギーセクターが反発)と最も値下がりしたセクター(生活必需品セクターは引き続き下落圧力にさらされた)の騰落率の差は13.81%と、3月の7.86%および2月の11.23%から拡大しました(1月は12.34%)。

4月は11セクター中6セクターが上昇し、3セクターが上昇した3月と全セクターが下落した2月を上回りました。月間のパフォーマンスが最も高かったのはエネルギーセクターでした。需給が均衡点に向けて収斂する様子を見せる中、同セクターはプラス9.29%と4月も上昇し、年初来のパフォーマンスは2.09%とプラスに転じました。とはいえ、2014年6月(原油価格は1バレル=105ドル)の水準と比較すると、エネルギーセクターは依然として25.16%下落しており、S&P500指数の中で下落率が最も大きいセクターとなっています(同期間で最高の騰落率を示したのは情報技術セクターで、プラス80.56%)。公益事業セクターもプラス2.05%と反発しましたが、年初来ではなお2.24%の値下がりでした。

消費者関連の2つのセクターは引き続き対照的な動きを示しました。一般消費財セクターは、景気の加速に加えて、減税によって消費者の所得が増すという期待が追い風となって4月に2.27%上昇し、年初来では5.09%の上昇となりました。一方、生活必需品セクターは4月に4.52%値下がりして11セクター中最低のパフォーマンスとなり、年初来ではマイナス11.94%と、2桁の下落率を記録しました(全セクターで最低)。情報技術セクターは、個人情報の利用とプライバシー保護に関する懸念が新聞紙上(および米議会)を賑わせたものの、0.03%と小幅に値上がりし、その結果、年初来では3.24%上昇、大統領選挙後では48.82%上昇となりました。金融セクターは企業決算(および相場)が好調だったにもかかわらず、4月に0.48%値下がりし、年初来の騰落率はマイナス1.85%、大統領選挙後ではプラス37.26%となりました。

過去3カ月の市場の動きの一部は、値固めと新たな経済環境(減税、貿易問題、さらに言うまでもなく、政治)の再評価を反映するものであったとみられています。本稿執筆時点では、背景で個別の値動きはあるものの、市場がレンジ内に留まっていることは、今後の上昇に向けた値固めとして前向きに捉えられています。

銘柄の変動をみると、4月は一転して、値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は265銘柄(平均上昇率は5.02%)となり、3月の193銘柄(2月は88銘柄)を上回りました。このうち10%以上上昇した銘柄数は31銘柄(3月は8銘柄)でした。一方、4月に値下がりした銘柄数は240銘柄(平均下落率は4.91%)で、3月の312銘柄から改善しました。そのうち24銘柄は10%以上値下がりしました(3月は23銘柄)。年初来では引き続き、値下がりした銘柄数が値上がりした銘柄数を上回っており(とはいえ、改善しました)、220銘柄(3月は208銘柄)が値上がりしました(平均上昇率は9.85%)。10%以上値上がりした銘柄数は81銘柄(3月は64銘柄)で、そのうち11銘柄が25%以上値上がりしました。値下がりした銘柄数は285銘柄(3月は296銘柄)で(平均下落率は9.27%)、10%以上値下がりしたのは115銘柄(3月は93銘柄)、そのうち7銘柄が25%以上値を下げました。

※「「大いなる期待感」がもたらした好調な企業利益 (3) 」へ続く

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