先取りサマーストック総点検、2018年“猛暑関連株”の動向は <株探トップ特集>
―かつてと異なる物色動向、傾向と対策―
今年も日本列島は暑い夏となりそうだ。気象庁が25日に発表した3ヵ月予報でも、6~8月の3ヵ月は全国的に暖かい空気に覆われやすく、向こう3ヵ月の気温は高いとしている。株式市場ではテーマ株の一角として、古くから「サマーストック関連」や「猛暑関連 」として時折物色の矛先が向く。ただ、関連株の“傾向と対策”を一歩誤ると“お寒い”ことにもなりかねない。関連株の動向とその行方を探った。
●「暑くて当たり前」で反応薄も
暑い夏の到来となれば、株式市場では「サマーストック」に目が向きそうなところだが、長期に渡りヒートアイランド現象が問題視されるなか、もはや「暑くて当たり前」という感覚が、どこか投資家の心中にもあり反応を鈍らせているようだ。
かつてサマーストックの王道といえば、清涼飲料水やビール、エアコンといった関連株が挙げられたが、最近では投資家の関心はさほど高くない。もちろん暑い夏は日本経済にも好影響を与え、夏を稼ぎ時とする企業にとっては“恵みの雨”であることは言うまでもない。ただ、個人投資家の視線は、値動きの軽い中・小型株に向きやすいということもあり、大型株に位置付けされる“夏の王道銘柄”には、猛暑関連としてはあまり食指が動かないといったムードだ。時代の移ろいは物色動向の変化も招き、新しい猛暑関連株に目を向けさせている。
●頭角現す喫茶店銘柄、コメダHD、ドトル・日レスに注目
ここ数年、サマーストックとして頭角を現しているのが「喫茶店」銘柄だ。単純な発想だが、暑い夏の到来は、街を歩く人を冷房の効いた喫茶店にいざなうからだ。非常に短絡的な思惑とも言えそうだが、そうでもない。以前取材をした大手喫茶店チェーンの広報担当者は「夏に向けて売り上げ、客数ともに上向くのは例年のこと」と、ただの思惑ではないことを示唆している。とはいえ、当然のことながら目に見える形で決算に反映されるのは秋以降ということになる。
喫茶店株が注目されるキッカケになったのが、2016年6月のコメダホールディングス <3543> の上場だ。高齢化社会が急速に進むなか、昭和のムードを漂わせる店舗戦略もシルバー層の心理を捉え話題となった。同社は、4月11日に19年2月期の連結業績予想を発表、売上高が前期比16.6%増の303億100万円と2ケタ増収を確保、営業利益は同5.0%増となる75億6500万円を見込んでいる。店舗数増加による増収効果が利益面にも貢献する。株価は、4月25日に2241円まで買われ年初来高値を更新、現在は2100円水準で頑強展開を見せている。
また、ドトール・日レスホールディングス <3087> は、4月13日発表の18年2月期の連結経常利益で前の期比2.9%減の103億6900万円になったものの、19年2月期は3.0%増の106億8300万円に伸びを見込み2期ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。株価は、昨年の年末高を経て年初から調整局面、4月16日には年初来安値2158円まで売られ、現在は2300円近辺でもみ合っている。
そのほか喫茶店関連では、「椿屋」などを展開する外食チェーンの東和フードサービス <3329> [JQ]、「喫茶室ルノアール」で知られる銀座ルノアール <9853> [JQ]などに加えて、傘下企業が喫茶業態の「タリーズコーヒー」を展開している伊藤園 <2593> の動向にも目を配っておきたいところだ。
●もはやいう事なしの資生堂、攻勢かけるコーセー
夏と言えば、日焼け・紫外線対策の必要性から「化粧品」関連株に物色の矛先が向かうことがある。ただ、化粧品関連株 はもはやインバウンド関連の中核へと変貌しており、サマーストックとして捉える次元を超越している。とはいえ、夏本番を控え日焼け・紫外線対策などサマーストックとしての切り口もあり、燃える夏に向けて、活躍の場はさらに広がりそうだ。
化粧品関連株では、やはり資生堂 <4911> とポーラ・オルビスホールディングス <4927> が双璧をなす存在といえるだろう。アンチエイジング分野では、シワの改善で資生堂が「レチノール」、ポーラHDが「リンクルショット」で龍虎相うつという状況だ。
インバウンド銘柄の代表格となった資生堂の株価は上昇一途、上場来高値圏でもみ合う展開となっている。業績も当然のごとく絶好調で、11日に発表した第1四半期(1-3月)連結決算では、営業利益が前年同期比95.3%増の471億4400万円、純利益は同2.1倍となる288億7000万円と大幅増益を達成。インバウンド需要の拡大や「選択と集中」により強いブランドを確立した効果で、国内事業が2ケタ増となったことに加えて、プレステージブランドが中国をはじめグローバルで大きく拡大したことが業績を牽引した。
ポーラHDも業績好調で、株価も高値圏で強調展開が続いている。1日に第1四半期(1-3月)連結決算を発表しており、営業利益が8.9%増の99億4300万円、純利益64億600万円(同10.9%増)だった。基幹ブランドであるPOLAブランドは既存顧客売り上げが堅調に推移したほか、育成ブランドのTHREEブランドおよびDECENCIAブランドも好調に推移した。
注目はコーセー <4922> の攻勢だ。同社は4月27日に発表した18年3月期の連結経常利益では、前の期比22.6%増の485億800万円になり、19年3月期も前期比8.0%増の524億円の見込みと、6期連続で過去最高益を更新する見通しとなった。株価は4月6日に2万3920円まで買われ年初来高値更新した。その後は軟調展開をしいられていたが調整一巡、再び上昇気流に乗り年初来高値を視野に入れる状況だ。そのほかでは、男性化粧品の雄といえるマンダム <4917> にも注目。
●東京五輪控え「遮熱」で佐藤渡辺、大日本塗など
ここ数年、夏になると時折物色の矛先が向かうのが、遮熱やクールエリアの創出に絡む銘柄だ。2020年の東京五輪が7月24日~8月9日という真夏に開催されることから、マラソン、競歩などといった公道で行われる競技および観戦者には厳しい環境となることが想定され、その対策として関連銘柄に注目が集まっている。
遮熱性舗装を手掛ける企業は、三井住建道路 <1776> [東証2]、佐藤渡辺 <1807> [JQ]、NIPPO <1881> 、世紀東急工業 <1898> など数が多い。また、遮熱塗装では大日本塗料 <4611> を中核に日本特殊塗料 <4619> 、アサヒペン <4623> [東証2]、エスケー化研 <4628> [JQ]にも目を配って置く必要がある。東京五輪に向け、遮熱性舗装、遮熱塗装にはスポットライトが当たりやすい状況なだけに、夏本番に向け注視しておく必要がある。
クールエリアの創出では、丸山製作所 <6316> や能美防災 <6744> などのミスト関連株に注目。ミストとは霧のことで、噴霧エリアは気温を低下させる効果がありクールエリアの創出には最適だ。特に丸山製は、昨年7月に開催された「猛暑対策展」にも出展、ラグビーワールドカップと東京五輪を見据え、ミスト利用の猛暑対策や演出をテーマに、さまざまなシーンで使用できる製品を展示するなど意欲的だ。薄商いが難点だが、急騰習性もあるだけにチェックは怠れない。
●サマーストックは秋口に買え?
いわゆる猛暑関連の場合は、「大雪関連」のように自然の猛威で都市機能がマヒするといったこともなく、気象状況だけで急騰することは極めて少ない。例えば、日本列島に寒波が襲来すれば、スコップ需要拡大思惑から最大手の浅香工業 <5962> [東証2]が急動意することが往々にしてあるが、最近の猛暑関連では五輪やインバウンドなど副次的な産物として、それらに関する話題が浮上した場合に株価が動意するケースが多く見られる。
もちろん暑い夏は、飲料、エアコンなど従来のサマーストックにとっても好影響を与えるのは言うまでもない。こうした関連銘柄の株価は、暑い夏の思惑高で5月前半から6月中旬にかけて上昇、その後いったん売られ、秋口以降に上昇スタートし年末高に突入する傾向がみられる。夏を手前にいま買うのもよし、あす売ることもひとつの投資戦略といえる。ただ、ここ数年の関連銘柄の株価推移を見てみると、「サマーストックは秋口に買え」、そんな声も聞こえてきそうな状況だ。
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