為替週間見通し:ドルはもみ合いか、貿易摩擦問題と経済指標内容を見極める展開

通貨
2018年7月7日 15時11分

【先週の概況】

■ドル伸び悩み、米中貿易戦争への懸念強まる

先週のドル・円は伸び悩み。主に110円台後半でもみ合う状態が続いた。米利上げ継続への思惑で一時111円14銭まで買われたものの、通商問題を巡って米国と中国の対立は続いており、貿易戦争状態に突入したことからリスク選好的なドル買いは拡大しなかった。

2日発表された米国の6月ISM製造業景況指数は予想外に改善し、トランプ米大統領が「いくつかの公正な貿易協定の合意が非常に近い」と述べたことから、3日の東京市場でドル・円は111円14銭まで上昇した。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、「経済は非常に強く、漸進的な利上げが必要」との見解が再確認されたこともドル買い材料となった。

しかしながら、米国と中国は6日、340億ドル相当の輸入品に対する関税を互いに発動し、問題解決に向けた具体的な交渉がすみやかに行われる可能性は低いとの思惑が広がったことから、ドルの上値は再び重くなった。6日のニューヨーク市場では、通商・貿易問題を巡る米中の対立は長期化するとの懸念が高まったことや、6月米雇用統計で平均時間給の伸びが市場予想を下回ったことから、主要通貨に対するドル売りが優勢となり、ドル・円は110円69銭から110円38銭まで反落し、110円46銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:110円28銭-111円14銭。

【今週の見通し】

■ドルはもみ合いか、貿易摩擦問題と経済指標内容を見極める展開

今週のドル・円はもみ合いか。米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ継続の方針を堅持しており、引き続きドル買いに振れやすい地合いは続きそうだ。ただ、貿易・通商問題を巡る米中の対立は続いており、さらに深まる可能性があるため、世界経済の停滞を警戒したリスク回避的な円買いが再び広がり、ドルの上昇を抑える可能性は残されている。

ただし、5日に公表された連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(6月12-13日開催分)から、景気拡大基調を背景に金利引き上げ方針を堅持する方針が確認されており、9月と12月を含めた年4回の利上げ観測は特に後退していない。FRB以外の主要中銀による金融引き締め(または金融正常化)の作業は遅れ気味であり、金利面でドルが買われやすい状況にあることは否定できない。

12日発表の6月消費者物価指数(CPI)は5月実績の前年比+2.8%を上回ると予想されており、米国金利の先高観がただちに後退する可能性は低い。足元のドル・円は110円台後半で上げ渋っているが、インフレ関連の経済指標や長期金利の動向などを手がかりにドル・円が111円台を回復する可能性は残されている。

一方でFOMC議事要旨は、米中貿易戦争の経済への影響について意見交換があったことを示唆している。先に発表された米国の1-3月期国内総生産(GDP)確定値は、下方修正されるなど成長率は鈍化した。今後発表される経済指標が市場予想を下回るケースが多くなった場合、米利上げ継続シナリオは修正を余儀なくされるとみられており、通商問題に対する市場の関心は引き続き高いとみられる。

【米・6月消費者物価指数(CPI)】(12日発表予定)

12日発表の6月消費者物価指数(CPI)は、前年比+2.9%、コア指数は同比+2.3%と5月実績を上回る見通し。市場予想と一致した場合、年4回利上げへの期待は持続し、ドル買い要因となろう。

【米・7月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値】(13日発表予定)

13日発表の7月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は98.2と、6月実績の98.2と同水準になる見込み。消費者信頼感は高水準を保っており、個人消費の力強さなどが確認できれば、米国経済の拡大を期待したドル買いは継続しよう。

予想レンジ:109円00銭-112円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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