為替週間見通し:ドルは底堅い動きか、4-6月期中国GDPなどを見極める展開
【先週の概況】
■米インフレ加速の思惑でドル・円は一時112円80銭
先週のドル・円は堅調推移。米トランプ政権が「追加で2000億ドル相当の中国製品(6031品目)に10%の関税課す」と発表し、中国も対抗措置を表明したことで、ドル売り・円買いが一時活発となった。しかしながら、11日発表の6月米生産者物価指数が市場予想を上回ったことや、地区連銀総裁らのタカ派的な発言を意識してドル買いが一段と強まる展開となった。111円台前半でストップロスとみられるドル買い・円売りが執行されたことから、ドル・円は11日の欧米市場で112円台前半まで上昇した。
13日の東京市場でドル・円は一時112円80銭まで買われたが、同日のニューヨーク市場では6月米輸入物価指数や7月米ミシガン大学消費者信頼感指数が市場予想を下回ったことを受けてドル買い・円売りは一段落。米国株はこの日も強い動きを見せたが、米長期金利はやや低下し、ドル・円は、112円63銭から112円28銭まで下落し、112円36銭でこの週の取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは110円30銭から112円80銭となった。ドル・円の取引レンジ:110円30銭-112円80銭。
【今週の見通し】
■ドルは底堅い動きか、4-6月期中国GDPなどを見極める展開
今週のドル・円は底堅い動きとなりそうだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ加速期待を背景にドル買いの興味は増しており、今年最高値を目指す展開となりそうだ。反面、米中貿易摩擦が激化し、中国の経済成長が阻害されるリスクが台頭した場合、世界経済の減速懸念で円買いが強まる見通し。ドル・円は5月高値(111円40銭)を上抜けておりたことで、ドル買いムードが強まっている。次の節目である113円や1月8日に付けた今年最高値113円38銭が意識されそうだ。
12日に発表された6月の米消費者物価コア指数(CPI)は前年比+2.3%で5月実績を上回り、11日発表の6月生産者物価指数(PPI)と合わせ、年4回(あと2回)への利上げ期待が高まった。米中貿易戦争が経済に与える影響については、見方が分かれているようだ。米トランプ政権は中国の知的財産権侵害に対する追加制裁を発動する方針だが、発動時期は9月とみられるため過度な懸念は後退しており、円売りに振れやすい。
ただ、16日発表の中国4-6月期国内総生産(GDP)が市場予想(前年比+6.7%程度)を下回った場合、世界経済の減速に対する警戒感が高まり、リスク回避の円買いが増える可能性がある。6月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、米中貿易戦争が経済に与える影響について意見が交わされており、状況によっては利上げシナリオ修正の可能性もある。
なお、16日に米ロ首脳会談が開かれる。トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領による初の正式会合となるが、北朝鮮問題やシリア、ウクライナ情勢、核軍縮などが主要議題になるとみられている。安全保障問題などについて米ロが協調的に取り組むことで一致すれば、地政学リスク低下の観点で円売り材料になるとの見方が出ている。
【米・6月小売売上高】(16日発表予定)
16日発表の米6月小売売上高は前月比+0.6%と、5月の+0.8%を小幅に下回る見通し。想定を大きく下回らなければ個人消費の下振れ懸念にはつながらず、ドル売りにはなりにくい見通し。
【米・7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数】(19日発表予定)
19日発表の米7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数(景況調査)は20.0と6月の19.9をやや上回ることが予想される。良好な米国経済を裏づける見通しであり、予想通りならドル買い材料となろう。
予想レンジ:111円00銭-114円00銭
《FA》
提供:フィスコ