窪田朋一郎氏【“日銀プレー”で激変した相場の視界、この続きは?】(1) <相場観特集>

特集
2018年7月23日 18時30分

―トランプだけじゃない波乱のタネ、出口戦略への恐怖感―

週明け23日の東京株式市場は売り優勢となり、日経平均株価は300円安で2万2400円台を割り込んだ。ただ、メガバンクをはじめ銀行セクターなどが買われたこともあってTOPIX は小幅の下げにとどまった。日銀の金融緩和策が曲がり角にきているとの思惑がくすぶるなか、来週の日銀金融政策決定会合を控え、為替を絡めた仕掛け的な売りが炸裂した格好だ。きょうのイレギュラーな動きは、ここからの相場展望にも変化を生じさせる要因となるのか。第一線で活躍する市場関係者に話を聞いた。

●「金融政策決定会合まで不安定な地合い続く」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

東京株式市場は、日銀の金融政策変更に向けた地ならしとも思える報道が相次ぐなか、目先不安定な動きを強いられている。トランプ米大統領が打ち出す保護主義政策に対する警戒ムードが一服する一方、当面は日銀を取り巻く思惑が相場の地合いを左右する変数として注目されそうだ。

来週30~31日に行われる金融政策決定会合を前に、この会合で金融緩和による副作用への配慮を検討する方向と伝えられたことが波紋を広げる格好となった。具体的には、これまで10年債利回りをゼロ近傍に抑えていたイールドカーブ・コントロールについて、その水準引き上げを行うのではないかという観測に加え、量的緩和の一環として進めてきたETF買い入れについても、買い入れ手法の柔軟化が規模縮小を招くとの思惑につながり、全体相場の景色を一変させた。

23日は日経平均が急落したが、一方でTOPIXは一時プラス圏で推移するほど底堅い動きをみせた。業種でみると売り買いの対象がくっきりと色分けされている。セクター別の値上がり率上位は、金利上昇でメリットを受ける銀行や保険、証券、ノンバンクが占めており、一方で日米金利差拡大思惑の後退に伴う円高から自動車や電機など輸出セクターが安く、内需でも金利の上昇が調達コストおよび有利子負担増につながる不動産株などが軟調に推移した。

ただし、この流れがしばらく続くのかどうかという点については、来週の日銀金融政策決定会合の結果に委ねられているというよりない。短期スタンスであればメガバンクなどの株価動向は要注目となるが、それは現時点では“日銀プレー”に参戦するかしないかという選択肢に等しい。先行き不透明感が増すなか、ノイズを受けにくいセクターとして、当面は食品や医薬品、電力ガスといったディフェンシブストックが相対的に優位性を持つ。また、人工知能(AI)関連やソフト開発など内需系の中小型テーマ株に個人を中心とした資金が向かう可能性がある。

日経平均は、9月にかけてはっきりとした方向感は出にくいとみている。水準的には2万1500~2万3500円の上下2000円幅のボックス圏推移を想定している。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)

松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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