富田隆弥の【CHART CLUB】 「高値圏の8月アノマリー」
◆異例のコースを辿った台風12号が通り過ぎ、日本列島に猛暑が戻ってきた。半月あまり調整を入れている株式市場にも熱いサマーラリー復活を期待したいところ。日米の金融政策会合を終え、堅調な米国株と為替の円安を背景に日本株にも上値追いの可能性はある。ただし、チャートでは高値圏で迎える8月相場は調整しやすいアノマリー(経験則)もあり、基調を崩す下値ポイントには注意しておきたい。
◆日経平均株価は7月18日の高値2万2949円で頭を叩いた。5月から続く2万3000円の節を抜けずに調整入りしたが、日足は移動平均線(25日、75日、200日)の集まる2万2300円処を下値抵抗に値固めが続き、流れは悪くない。
◆為替(ドル円)も113円台から110円50銭まで下落したが、この調整は定石通りの初押し(プルバック)であり、再び円安方向に切り返す可能性は十分にある。為替が113円台、114円台と円安に進むのならば日経平均は節の「2万3000円」突破を目指すことになろう。
◆ただし、日足の下値ポイントはしっかり押さえておきたい。日経平均は移動平均線の集まる「2万2300円」、ドル円は「110円50銭」。これを割り込むことがあればサマーラリー期待はいったん棚に上げ、スタンスは慎重に傾ける。
◆気がかりな点がいくつか出てきた。例えば、 NASDAQは7月25日に7933ポイントと最高値を更新したが、ここにきてフェイスブックやツイッターが20%を超す急落を見せ、NASDAQも7604ポイント(7月30日)まで調整を入れた。そして、世界の投資マネーが集中する米大手IT銘柄(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル、アップル、インテルなど)で構成する「FANGプラス指数」も調整を余儀なくされ、世界の投資家が気をもんだのは言うまでもない。
◆好決算を背景にアップルは最高値を更新するが、FANGやNASDAQの上昇基調に亀裂が入ると全体に売り逃げ競争が起きてもおかしくない。そうなると11年前、格付けの低い商品を組み込んだ仕組み債を世界中の投資家が買い込んで急落した「サブプライムショック」を彷彿させることになる。ちなみに、11年前の下落の初動は「8月」だった。
◆日銀金融政策決定会合とFOMC(米連邦公開市場委員会)が終わった。FOMCは現状維持で終わったが、年内あと2回の利上げが観測されている。金利の上昇を無視して米国の好景気がいつまでも続くとも思えない。
◆日銀決定会合は金利の変動容認(0.1%→0.2%)やETF買いでのTOPIX型の拡大など柔軟な姿勢を打ち出したが、いずれも事前に伝わっていた内容でサプライズはなかった。ただ、先行き避けられない「出口論」へ布石を打ったことは間違いだろう。そして、市場では動き出した長期金利と国債が目を引く。長期金利は2日に1年半ぶりとなる0.145%に上昇、債券先物(国債価格)は149.75円まで急落した。どちらも日銀のコントールによりチャートは1年半にわたりこう着していたが、ここで大きく放れ足を見せる。金利上昇と国債急落が今後どのように影響するのか、特に株式市場への影響を注視すべきと思われる。
◆このようにFANGやNASDAQ、日本国債などに少し異なる動きがでてきたことは注意信号として捉えるべきだろう。そして酷暑の8月となり、甲子園とお盆を迎える。ここは無理せず頭と体を休めておくのも一策ではないだろうか。
(8月2日 記、毎週土曜日に更新)
株探ニュース