為替週間見通し:もみ合いか、トランプ・シーリングが意識される可能性も

通貨
2018年8月4日 16時09分

【先週の概況】

■ドル上げ渋り、米中貿易摩擦激化への懸念強まる

先週のドル・円は上げ渋った。7月30-31日に開かれた日本銀行金融政策決定会合で、政策金利のフォワードガイダンスが導入されたことや、米国金利の先高観は後退しなかったことはドル買い材料となった。1日の東京市場では日経平均株価の上昇などを好感してドル・円は一時112円15銭まで買われた。7月31-8月1日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合では、政策金利(フェデラルファンドFF金利の誘導目標)を1.75-2.00%に据え置くことが予想通り決定されたが、声明では、景気やインフレ判断を上方修正し、さらなる段階的な利上げが必要との見解が表明され、9月の追加利上げを示唆した。

ただ、米トランプ政権は対中国制裁で2000億ドル規模の輸入品への関税上乗せ分を25%に引き上げる計画があると発表し、これに対して中国は3日、600億ドル相当の米国製品に追加関税を課す報復措置を講じる方針を発表した。米中貿易摩擦激化への懸念は一段と高まっていることから、リスク選好的なドル買い・円売りは拡大しなかった。

3日のニューヨーク外為市場では、ロス商務長官が「中国が行動を改めなければ、圧力を強める」との方針を表明したことや、米7月雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったことから、ドル・円は、111円62銭から111円10銭まで下落し、111円27銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:110円75銭-112円15銭。

【今週の見通し】

■もみ合いか、トランプ・シーリングが意識される可能性も

今週のドル・円はもみ合いか。7月31日-8月1日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)から、9月利上げへの期待が高まり、日米金利差の拡大を意識したドル買いは継続する見通し。FOMC後の声明では米国経済の力強さが強調され、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月と12月に追加利上げを決定するとの見方が広がっている。今週発表されるインフレ関連指標などでFRBの見解の妥当性が証明された場合、ドルは主要通貨に対して上昇する展開となろう。

反面、トランプ大統領は7月19日、足元のドル高について「望ましくない」、「強いドルは米国を不利な立場に置く」などと発言し、ドル・円は今年最高値(113円39銭)が射程圏内に入ったものの、113円台前半から大きく押し下げられる展開となった。利上げ継続への期待でドル・円はひとまず112円台を目指すとみられるが、ドル高・円安の進行に伴い、トランプ大統領の「口先介入」への警戒感が広がる可能性は残されている。特にドル・円が直近高値(7月19日の113円19銭)に接近する局面では口先介入(トランプ・シーリング)が意識され、ドルは上げ渋る展開が予想される。トランプ政権は輸入関税の税率引き上げなど対中制裁を強化しつつあり、米中貿易摩擦激化への強い警戒がドル買いを弱める要因となろう。

【米・7月生産者物価指数(PPI)】(9日発表予定)

9日発表の7月生産者物価指数(PPI)は前年比+3.4%、コア指数は同比+2.8%が市場コンセンサス。物価上昇率は6月実績と同水準になると予想される。市場予想と一致すれば、ドル買い材料になるとみられる。

【米・7月消費者物価指数(CPI)】(10日発表予定)

10日発表の7月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.0%、コア指数は同比+2.3%と予想されている。インフレ鈍化の兆しはみられないことから、市場予想と一致した場合、金利先高観が強まり、ドル買い材料となりそうだ。

予想レンジ:110円00銭-113円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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