来週の相場で注目すべき3つのポイント:トルコリスク、米エヌビディア決算、米中経済指標

市況
2018年8月11日 19時31分

■株式相場見通し

予想レンジ:上限22500-下限22000円

来週の日経平均は、一時的に下値を試す展開が想定される中、上下へのボラティリティも高まる可能性がある。日経平均は底堅さの拠り所となってきた5日移動平均線(22500円台)を10日に大きく割り込んできた。チャートは7月5日安値21462円からの戻り一巡後のもみ合いが煮詰まるなか、上昇中の75日移動平均線を、上向きに転じた25日移動平均線が上抜けるタイミングにあったものの、下振れたことで調整色が強まっている。テクニカル的には、22100円台を走る26週移動平均線が目先の下値メドとして意識される。2日からニュージャージー州で実質的な夏休みに入っている米トランプ大統領は14日からホワイトハウスに本格復帰するとみられる。上海総合指数、円相場、トルコ・リラ急落による金融市場の混乱といった外部要因でアクションがあれば、薄商いの中で先物主導の上げ下げに、日経平均は振られやすくなることが予想される。このほか、9日に米モルガン・スタンレーが米国市場の半導体セクターの投資判断を引き下げた。半導体関連には日経平均寄与度が高い銘柄も多く、警戒感も働き始めている。

ただし、悪材料ばかりではない。9日から開催されていた日米の閣僚級貿易協議(FFR)の初会合では、9月の次回会合へ合意が先送りされて、日米の対立が先鋭化することは回避された。米中、米欧との貿易摩擦に巻き込まれず一定の距離を置くことに成功し、9月下旬に計画されている日米首脳会談まで時間的余裕ができたことはプラス材料だ。物色的にも、3月期企業の第1四半期を中心とした決算発表が14日で一巡する。4月以降はドル高・円安で推移した結果、企業業績は相対的に堅調なことは買い材料として働こう。8月中旬という企業の夏季休暇も増えるカレンダー事情から、手掛かり材料が乏しくなる中で、個別企業に対するアナリストの投資判断などに注目度が高まりやすくなる。

主な国内経済関連スケジュールは、15日に7月訪日外客数、16日に7月貿易統計と経済指標の発表は少ない。一方、米国を含む海外経済関連スケジュールは、14日に中国7月鉱工業生産と7月小売売上高、15日に米7月小売売上高、米8月NY連銀製造業景気指数、米7月鉱工業生産・設備稼働率、米6月企業在庫、米8月NAHB住宅市場指数、16日に米7月住宅着工件数、米8月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、17日に米7月景気先行指数、米8月ミシガン大学消費者マインド指数と、米国は景気関連の経済指標の発表が相次ぐ。このほか、14日は米国連邦議会予備選挙(コネチカット、ミネソタ、バーモント、ウィスコンシン)、15日は韓国・光復節(北朝鮮は解放記念日)にあたる。

■為替市場見通し

来週のドル・円はもみ合いか。貿易問題を巡って米中の対立は激化している。また、トルコリラの急落を受け、欧州中央銀行(ECB)は欧州の一部銀行のトルコリスクを懸念しており、金融市場への影響を懸念したリスク回避的な円買いは継続する可能性があるものの、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ継続の方針を背景に主要通貨に対するドル買いがただちに縮小するとの見方は多くないようだ。

トルコを含めた新興国の経済悪化を警戒して投資資金が米国に還流するとの見方もドル買い材料となる。ユーロ圏経済のファンダメンタルズやECBの金融政策を意識したユーロ買い・米ドル売りが大きく広がる可能性は低いことや、米中貿易摩擦の長期化によって中国経済の減速が予想されていることもドルに対する支援材料となる。こうした背景から、米経済指標が堅調な内容となり、FRBのタカ派姿勢を後押しできれば、9月と12月の追加利上げを見込んだドル買い・円売りは継続するだろう。一方、9日に米ワシントンで開かれた日米通商協議(FFR)の初会合では、米国側が2国間交渉の開始を要請したのに対して、日本側は環太平洋連携協定(TPP)が日米双方にとって最善との考え方を表明したようだ。茂木経済再生相によると日米は貿易拡大で合意し、次回の日米貿易協議は9月めどに開く予定となっている。

日本が米国の要求に応じて日米自由貿易協定(FTA)の交渉を近く開始するとの見方は後退していないが、対米貿易黒字縮小の観点からFTA締結はドル買い・円売り材料になるとの声が聞かれている。ただし、米中貿易摩擦激化に対する警戒感は消えていないことから、リスク選好的なドル買い・円売りが大きく広がる可能性は低いとの見方も残されている。

■来週の注目スケジュール

8月13日(月):中・マネーサプライや資金調達総額など

8月14日(火):中・鉱工業生産指数や小売売上高、独GDP改定値など

8月15日(水):トルコ・失業率、米・小売売上高や企業在庫など

8月16日(木):日・貿易収支、豪・失業率、米・エヌビディア決算など

8月17日(金):欧・経常収支、欧・ユーロ圏消費者物価指数改定値など

《SK》

提供:フィスコ

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.