為替週間見通し:ドルは底堅い動きか、米金融当局者の発言でドル買いも
【先週の概況】
■新興国通貨安への警戒感でリスク回避の円買い継続
先週のドル・円は弱含み。週初はトルコリラ、南アフリカランドなどの新興国の通貨安に対する警戒感が高まり、リスク回避の円買いが優勢となった。トルコ中央銀行は13日、金融安定と金融市場の正常な機能を支える一連の措置を発表したことから、トルコリラは主要通貨に対して反発した。
しかしながら、トルコのエルドアン大統領は米国からの輸入品に対して追加関税を課す措置を発表したことや、トルコで拘束されている米国人牧師の解放に関する米国とトルコの協議は進展せず、トルコと米国の関係改善への期待は大きく後退したことから、15日以降にリスク回避の円買いが再び活発となった。
一方、米中貿易協議が今月22-23日に行われるとの報道を受けて、米中貿易摩擦緩和への期待が浮上し、米国株が強い動きを見せたことから、リスク回避の円買いは拡大しなかった。17日のニューヨーク市場では、豪ドル、NZドルに対する円売りも観測されており、ドル・円は、110円32銭まで下落後、110円66銭まで反発し、110円51銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:110円11銭-111円43銭。
【今週の見通し】
■ドルは底堅い動きか、米金融当局者の発言でドル買いも
今週のドル・円は底堅い展開か。米カンザスシティ地区連銀主催の経済シンポジウム(ワイオミング州ジャクソンホールで開催)で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は24日に講演を行なう予定となっている(プログラムの詳細は現地時間23日午後6時公表予定)。パウエルFRB議長は金融政策について話すとみられており、講演内容から年4回の利上げを予見することができれば、リスク選好的なドル買いが再び強まるとみられる。
22日公表される連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(7月31日-8月1日開催分)がタカ派寄りの内容であれば9月と12月を含めた年4回利上げシナリオへの期待から、ドルの先高観は後退せず、ドル買い・円売りの材料になると予想される。
一方、トルコリラなどの新興国通貨安に対する市場の警戒感は低下していないため、ドル・円相場の反発を抑える一因となりそうだ。トルコ政府は、2016年のクーデター未遂事件に関与した疑いで自宅軟禁中の米国人福音派牧師の解放をめぐり、トランプ政権と対立している。ムニューシン米財務長官は16日、「米国人牧師が解放されなければ、対トルコ追加制裁を賦課する準備がある」と述べており、米国が強力な制裁を発動した場合、トルコ経済への影響が懸念され、再びリラ売りが優勢になり、リスク回避のドル売り・円買いが誘発される可能性がある。
なお、米国と中国は貿易摩擦の回避に向けた動きを見せており、今週22-23日にワシントンで開催される米中貿易協議で何らかの進展があれば、通商問題に関する懸念は後退し、リスク選好的なドル買い・円売りは活発となる可能性がある。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(22日公表予定)
22日(日本時間23日午前3時)に公表される7月31日-8月1日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で9月と12月の追加利上げに関する明確な手がかりを得られるか注目される。利上げ継続を支持する意見が多く見られた場合、ドル買い材料になるとみられる。
【ジャクソンホールでの経済シンポジウム】(8月23-25日)
米ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム。今年のテーマは「変化する市場構造と金融政策への影響(Changing Market Structure and Implications for Monetary Policy)」。パウエル米FRB議長の講演は24日に予定されており、米国経済や金利見通しに関する見解が表明された場合は、有力な手掛かり材料となりそうだ。
予想レンジ:109円50銭-112円50銭
《MK》
提供:フィスコ