米議会“ねじれ”突入の影響は――総点検「年末相場シナリオ」 <株探トップ特集>
―東京市場は選挙結果横目に乱高下、中間選挙後「株高」アノマリー再現は?―
米中間選挙は6日(日本時間7日)投開票が行われ、激戦の末、下院は民主党が勝利した。上院は共和党が制したことで、米国議会は上院と下院で多数派が異なる「ねじれ」に突入することになった。市場には「トランプ政権の政治基盤がぜい弱になった」ことを懸念する声がある一方、「イベント通過で不透明要因がなくなったことはプラス」「米長期金利の低下につながることは評価できる」との見方も少なくない。今回の米中間選挙は、年末に向けた株式市場にどんな影響を与えるのか。
●東京市場は米選挙結果を睨み乱高下、午後にかけ日経平均は下落
この日の東京市場は、米中間選挙の行方を固唾を呑んで見守った。午前中、下院で共和党が優勢との見方が強まると日経平均株価は一時、前日比で300円近く上昇。ドル円相場も113円80銭台までドル高・円安が進んだ。ただ、正午以降、民主党が巻き返し「下院での過半数獲得が確実」と伝わると、日経平均は上昇幅を縮め、ドルも円高方向に振れた。結局、「上院は共和党、下院は民主党」が勝利を収め、日経平均は引けにかけ売りが膨らみ61円安で引けた。ドル円は午後5時時点では113円ライン前後で推移している。
●スキャンダル追及と景況感の良さの綱引き状態に
サクソバンク証券の倉持宏朗チーフマーケットアナリストは、今回の結果を「想定の範囲内だ」という。今後、過半数を確保した民主党がロシア・ゲートなどスキャンダルを追及することで、トランプ大統領の政策遂行力が落ちることが懸念されている。その一方、「米国の景況感は強い。今後は民主党によるトランプ大統領に対するスキャンダルの追及と米国の好景気の綱引きになる」と同氏は予想する。
下院での劣勢が伝えられていた共和党は選挙直前の巻き返しも報道されていただけに、この日の午後の取引では失望売りも出た。とはいえ、「中間選挙通過で不透明感がなくなったことを前向きにとらえる向きも少なくなく、下値には買いが入った」と同氏は指摘する。
●金利上昇懸念の後退はプラス材料、オバマ政権時の状況に回帰
米国が「ねじれ議会」に突入することの懸念材料は、ひとつにはロシア・ゲートのようなトランプ大統領のスキャンダルが蒸し返される可能性があることだ。また、「民主党がどの議案を優先して議論するかの決定権を持つため、トランプ大統領による中間層に向けた減税政策などは後回しにされてしまうことが予想される」と上田ハーローの山内俊哉執行役員は警戒する。加えて、連邦予算が通りにくくなることで、来春に向けて政府閉鎖などが話題に上がる可能性もある。
ただ一方で、前向きな材料としては「減税による財政悪化懸念が後退することで、米長期金利は低下が期待できる。これは、株価にもプラス要因だろう。オバマ政権の8年間のうち、6年間は民主党が両院を制することはなかった。あの時と変わらない」と山内氏は指摘する。
気になるのは、米中貿易摩擦の行方だ。民主党が下院を制したことで、共和党による中国への厳しい締め付けが緩むことを期待する声もある。しかし、「中国と対峙する路線は民主・共和の両党とも大きくは変わらないだろう」(アナリスト)とみられている。
●過去の例では中間選挙後は「株高」、米インフラ投資関連に期待
第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「トランプ政権の2年間で、すでに多くの重要な法案は成立している」としたうえで、「長期的視点からはともかく、短期的には不透明感が払拭したことは前向きに捉えられてもおかしくない」という。中間層向けの追加減税の実現が不確かになったことに関しても、「追加減税はあまり相場には織り込まれていない」と影響は限定的とみている。
「米国企業の決算は堅調であり、ファンダメンタルズは悪化していない。NYダウは年末に向け2万6000ドル乗せが期待できる」と桂畑氏は予想する。過去の例からみても、米中間選挙後は「株高」との期待も強い。
市場は共和党が両院を制することによる高ボラティリティ相場を期待したかもしれないが、「結局、従来通り米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策や企業決算を注視する従来の相場に戻るだけ」と前出の山内氏は指摘する。
また、サクソバンクの倉持氏は今後の物色動向に関して「民主・共和の両党ともに前向きな意向を示しているのがインフラ投資だ。今後、インフラ投資に絡む資本財や素材セクターなどが注目できる」と予想している。
株探ニュース