全体相場の“浮上示唆”、空売り減に見える「売り枯れ」の予兆 <東条麻衣子の株式注意情報>
注目イベントであった米国の中間選挙を通過したのもつかの間、米長期金利の動向を横睨みに世界の景気減速懸念が浮上する中、日経平均株価は上値の重い展開が続いている。
米国と中国の貿易摩擦問題も依然として相場の重石となっている。米中通商交渉で進展がなかった場合、来年1月にも中国からの輸入品2000億ドル相当への追加関税の税率は現行の10%から25%に引き上げられる予定だ。
現在のマーケットでは、市場関係者の関心は金利上昇や景気減速、米中貿易摩擦など山積する懸念材料に集まっている。
■解決が遠ざかる米中貿易摩擦
11月12日、日本や欧州連合(EU)、米国などは世界貿易機関(WTO)に、WTO改革案を提示した。
このWTO改革案では、中国特有の国家資本主義が抱える“歪み”にメスが入る。不透明な巨額補助金など中国の自国産業に対する優遇策はかねて問題視されてきたが、改革案では加盟国が報告を行わずに補助金交付や規制導入などの優遇策を続けた場合、制裁が科せられることになる。
米国・EU・日本は一般理事会での改革案承認を目指すものの、中国が容易に受け入れられる内容ではなく、同国は反発を強めよう。11月末にアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議、そのG20に合わせて開かれる米中首脳会談で貿易摩擦の解決が図られる可能性はほぼないとみてよいだろう。
■“売り枯れ”から11月にかけて基調転換も
11月6日の米中間選挙では投票前から下院を民主党、上院を共和党が制する「ねじれ議会」の現出を懸念する見方が市場にあったが、結果はまさにその通りとなった。
だが、市場がネガティブな材料として警戒していたビッグイベントが迫る中、日経平均は投票結果が出る6営業日前の10月30日からすでに反発に転じていた。
この日経平均の動きについては、空売り(価格規制あり、以下「空売り」)金額との連動性が指摘できる。
過去4年間の空売りの週間ベースの金額推移を見ると、週間ベースで6兆円から7兆円の金額をつけると、その後、数週間かけて空売りの週間金額は減少に向かっている。
機関投資家やヘッジファンドは空売りを大きく仕掛けた後は、買い戻し(利益または損失の確定)を行う。筆者は週間金額がピークをつけた後、このように空売りが減少していく動きを「空売りの売り枯れ」と呼んでいる。
直近では、その金額は10月29日~11月2日に7兆8491億円でピークをつけ、11月5日~9日には6兆1338億円まで減少している。
先に述べた米中間選挙前に日経平均が反発を開始したのが、空売り金額がピークをつけて減少に転じたこの期間にあたる。
11月12日の金額を見ても1兆107億円であることから、今週(11月12日~16日)も空売り金額は減少していく可能性がありそうだ。
とはいえ、先週時点でまだ6兆円を超す高水準であり、今週ないし来週初め頃までは上値の重い展開が続くかもしれない。
だが、「空売りの売り枯れ」、そして直近のネガティブなイベントを前に上昇に転じた日経平均の反応を考えると(米国が9月24日に約2000億ドル相当の中国製品への10%の追加関税を発動した際も、日経平均はその9営業日前の9月10日から上昇基調に転じている)、11月末のG20、米中首脳会談に向けて基調が転換する可能性は十分あるのではないか。
チャートに亀裂を入れた10月2日からの急落を踏まえると、今年の高値2万4448円を奪回する動きは難しいかもしれない。だが、10月2日高値2万4448円から10月26日安値2万971円への下げ幅の3分の2戻し水準である2万3289円辺りまでを目指す動きが、11月末に向けて表れてもおかしくないと考えている。 (11月12日 記)
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。
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