正念場の米民主党【フィスコ・コラム】

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2018年11月18日 9時00分

アメリカのトランプ大統領誕生までを追ったマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画『華氏119』が11月2日から日本で公開されています。終わったばかりの中間選挙の結果と重ね合わせると、興味深い背景が見えてきます。

11月6日に行われた中間選挙で、上院は共和党が過半数を維持、下院は民主党が多数派を奪還との大勢は判明しています。ただ、大接戦で開票作業に混乱が生じ再集計に入った選挙区もあり、確定にはなお時間がかかるようです。トランプ大統領が注力していた上院は、100議席中54と改選前から3議席上積みすると見込まれていましたが、最終的には52にとどまる可能性が出てきました。

投票から1週間あまりが経過して改めて振り返ってみると、反トランプ票が想像以上に多かったと総括できるのではないでしょうか。大手メディアの調査では、投票総数だけで比較すると、民主党は共和党を800万票も上回ったといいます。しかし、だからといって次の大統領選で民主党候補が現職のトランプ氏を破るシナリオを容易に描けない現状をムーア監督は描いています。

映画では、2年前の大統領選の民主党候補者選びで、バーニー・サンダース上院議員の支持がヒラリー・クリントン元国務長官を上回っていたにもかかわらず、結果を捻じ曲げ無理やりクリントン氏を指名したと指摘。それをお膳立てしたオバマ前大統領の在任中の、ミシガン州フリントの水道水汚染問題で水を口に含むパフォーマンス、その後の通告なしの軍事演習が民主党の信頼失墜につながったとしています。

今回の中間選挙で、テキサス州が全米の注目を集めました。上院テキサス州選挙区は、ビル・クリントン大統領時代の1994年の中間選挙で議席を失った後、20年以上にわたり共和党の牙城となっています。民主党は同選挙区に莫大な選挙資金を投じ、下院議員のベト・オルーク候補に託し議席の奪還を試みました。しかし、激しく追い上げたものの、現職のテッド・クルーズ氏に逃げ切られました。

オルーク氏は46歳ですが、ワイシャツ姿での若々しい演説が話題を集め、民主党支持者の間で人気が高まりました。クルーズ氏に勝てば大金星で2年後の大統領選の指名候補となった可能性もあります。民主党は現時点で最有力候補として名前が挙がっているのがジョー・バイデン元副大統領(75歳)という「役者」不在の状態で、その意味でもオルーク氏の敗北は痛手になったと思われます。

『華氏119』は、差別主義的なトランプ大統領の過去の言動を洗い出すとともに、同氏を国家のリーダーにさせたのは、エスタブリッシュメント気分の民主党執行部が草の根の有権者を無視したためだと断罪しています。今回の中間選挙で民主党が獲得した票は、親民主党というより反トランプ政権で、その意味ではチャンスが訪れていますが、党内の路線対立は深まるばかりです。

民主党が今後さらに迷走するのか、あるいは分裂した党の立て直しに真摯に取り組むか、正念場を迎えています。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

提供:フィスコ

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