アップル・ショックと日本株の行方 <東条麻衣子の株式注意情報>
2019年の年明け早々に伝わった米アップルの業績下方修正を受けて、日本市場は大きく下落して始まった。最近の相場のボラティリティの高さも相まって手が出しづらいと考えている投資家の方も多いかもしれない。
今回は大発会の下落要因となったアップルについて筆者の考えを述べたい。
■iPhoneの販売減がもたらした衝撃
米アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)が1月2日に行った2019年第1四半期(2018年10-12月期)の業績修正の内容は下記の通りだった。(カッコ内は2018年11月時点での従来予想)
・売上高 840億ドル(890億ドル~930億ドル)
・粗利益 38%(38%~38.5%)
・営業費用 87億ドル(87~88億ドル)
クックCEOは下方修正の要因として、中華圏(中国、台湾、香港)での主力「iPhone」の販売台数の減少、バッテリー交換値下げプログラムなどの影響を挙げている。
とりわけ影響の大きかった中国での販売減少は、現地メーカーの躍進や同社製品の競争力後退に加え、米中貿易摩擦に伴う反米意識の高まりが米国の象徴的企業である同社に逆風として作用した面もあろう。
米中対立が続く限り、中国におけるiPhoneの販売減は継続する可能性がある。他国での販売台数についても減少をたどるかもしれないが、すでに同社はiPhoneの頭打ちを睨んで端末単価の引き上げに動いてきた。また、同社の収益構造はハードからサービスへと移行しつつあり、サービス事業の売上高はMac、iPadなどのハードウェアを上回り、すでにiPhoneに次ぐ規模に育っている。
これまでのような高成長期待を源泉とする高株価は望めないかもしれないが、高収益体質はなおも維持されるものと考える。1月4日のアップルの株価は148.26ドル。PER12.53倍は底値圏といえると思う。
確かに米中貿易摩擦は今後も懸念材料としてくすぶるだろうし、しばらくはボラティリティの高い相場が続くとみられるが、アップルに対する株式市場の行き過ぎた悲観は修正されていくものと考える。
■日本株への影響
米アップル株が落ち着きをみせていくことで、米国市場は決算に向けて売りを仕掛けにくい環境が醸成されていくのではないか。
そうであれば、日本の株式市場にとっても下支え要因になるだろう。
ただし、日銀は長期国債の買い入れペースを年間目途80兆円の半分程度に抑えている。2013年に物価上昇率2%の達成期限を2年程度(2015~16年)として導入した異次元緩和だったが、目標を達成できずに予想を超えて長期にわたったことで資産購入も限界にきている印象がある。
日米通商交渉において米国は日本に「為替条項」の導入を求めてくるとみられ、円安を支えてきた異次元緩和がターゲットとなる可能性がある。外圧での政策転換であれば、政府・日銀も容認せざるを得ないのではないか。
3日の外国為替市場ではドル・円は一時104円台を記録しており、今後も円高傾向が続く可能性は否めない。
アップルへの部品提供を行っている日本の関連企業にとっては、円高・iphone販売台数減のダブルパンチとなることから厳しい状況となりそうだ。
だが、日本株を個別にみれば、アップル株同様に底値圏で推移しているとみられる銘柄も増えてきている。特に為替の影響を受けにくい内需系の割安銘柄では、決算に向けて売られる場面があれば買い下がる戦略も有効ではないか。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
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