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2019年1月19日 9時10分
市況

植草一秀の「金融変動水先案内」

第3回 株価下落要因の後退

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

●株価下落をもたらしてきた要因

株式市場の潮流が1月4日を境に変化しました。1月4日の2019年大発会では、 日経平均株価が昨年末比452円安の1万9561円で取引を終えました。昨年末の大納会では大引け間際に2万円の大台を回復しましたが、公的資金による株価買い支えの印象が強く感じられるものでした。それが、新年取引初日にあっさりと2万円を割り込み、2019年市場に暗雲が広がると受け止めた市場関係者が多かったと思われます。

しかし、振り返ってみると、2018年の大発会では、日経平均株価が前年末比741円高の大幅高を演じて2017年初以来の株価絶好調が永続するかに思われました。ところが、株価上昇は1月末高値をもって中断し、その後、この高値が10月初に更新されるまでに9ヵ月の時間を要したのです。しかも、その高値は典型的なダブルトップの形状を示し、2019年初の2万円の大台割れにつながる端緒となりました。

筆者は2017年1月末以来の内外株価下落の要因として、(1)米中貿易戦争、(2)米国金融引き締め政策、(3)日本増税政策、の三つを挙げてきました。(1)米中貿易戦争がとりわけ強く影響したのが中国株価でした。上海総合指数は昨年1月29日の高値から本年1月4日の安値まで、ほぼ一本調子で下げ続け、下落率は32.0%に達しました。米国の中国に対する制裁関税第3弾はまだ実施されていませんが、トランプ大統領による激しい関税率引き上げ方針が中国経済に与えてきた影響が甚大であったことが窺われます。

●1月4日パウエル発言

また、昨年初には、2月にFRB議長に就任することになったパウエル氏の政策運営に対する不安心理が広がりました。しかし、パウエル新議長はハト派政策に振れるとの市場の警戒感を払拭するかのように、タカ派色の強い政策運営を実行してきました。その極めつきが昨年12月19日のFOMCにおける政策決定で、 FRBは昨年4度目の利上げを決定するとともに、2019年に2回、2020年に1回の追加利上げ実施方針を示しました。

トランプ大統領が絶叫にも近いFRB批判を繰り広げるなかで、パウエル議長はその声を黙殺するかのように金融引き締め路線を誇示したことになります。しかし、このFRB方針がNY株価の一段の下落を招き、2019年金融市場の大きな波乱が強く警戒されるに至り、FRBの行動に大きな軌道修正の兆しが表面化したのです。

1月4日発表の12月米雇用統計では非農業部門労働者数が31.2万人増加しました。米国経済の基調が依然として強いことが示唆されました。12月FOMCでの金融引き締め路線堅持をサポートする数値発表となり、金融市場がFRB金融引き締め政策に対する警戒を一段と強めなければならない状況が生じたことになります。

しかしながら、この期に及んで、ついにFRBの行動変化が表面化したのです。1月4日にアトランタで開かれた経済学会で、パウエル議長が「市場は中国経済を中心に世界景気の下振れを不安視している。金融政策はリスク管理だ。迅速かつ柔軟に政策を見直す用意がある。」と発言したのです。12月19日のFOMCを仕切ったFRB議長とは別人かと思わせるような発言を示したのです。

●米中貿易戦争の変化

この発言を境に、グローバル株式市場に大きな変化の胎動が広がることになりました。筆者は1月10日執筆の会員制レポート『金利・為替・株価特報』に、「警戒警報の一時解除」を明記し、「米国政策リスク変化兆候のゆくえを見極め」について詳述しました。

また、グローバルな株価下落をもたらしてきた第一の要因である米中貿易戦争についても重要な変化が観察されました。1月7-9日に、中国・北京で通商問題に関する米中次官級協議が開催され、トランプ大統領が交渉進展を期待するコメントを発表しました。米国は中国の対米輸出2000億ドルを対象とする25%の制裁関税率を2019年1月から発動する方針を表明していましたが、12月初の米中首脳会談で90日間猶予することを決めました。しかし、米中協議が着地するのかどうか、不安心理が残存してきました。

その下で米中間の対立拡大がグローバルな株価下落を加速させるなか、トランプ大統領のスタンスに大きな変化が示され始めたのです。米中貿易戦争拡大が米国にも深刻な影響を及ぼすことを、トランプ大統領がようやく認識し始めたのだとも考えられます。1月30-31日には、中国の劉鶴副首相が訪米して米中閣僚級通商協議が実施されることも発表されています。米中貿易戦争が着地することになれば、株価下落要因が大幅に後退することになります。

昨年10月以降の日経平均株価は、2007年後半以降の株価と酷似する推移を示してきましたが、内外の株価下落要因が後退することになると、両者が連動する必然性は消滅することになります。

●株価反転水準修正に留意

上記『金利・為替・株価特報』では、両者の連動関係が切り離される可能性を指摘しています。安倍内閣は消費税率を2019年10月に10%に引き上げる方針を示していますが、安倍内閣は過去に2度、消費税増税を延期しており、3度目の延期を決定する可能性が多分に残されています。こうしたことから、株価下落をもたらしてきた主要三要因に重要な変化が想定されて、内外株価の反発が観察されています。

ただし、内外株価が反発して経済活動が再活性化されれば、FRBが金利引き上げ政策を再開する方向に路線を切り替える必要が生じることになるので、状況の二転三転に警戒心を緩めるわけにはいきません。それでも、昨年来の株価下落主要因に重要な変化が観察されていることには十分に留意する必要があります。

2019年3月期予想利益基準の日経平均株価PERは11.7倍、利回りは8.5%に達しています。債券利回りがゼロ近辺で推移していることを踏まえると、株式益利回りの突出した高さが際立ちます。このことは、株価が利益水準から見て割安な水準に位置していることを意味しており、金融市場の相場観の変化に伴い、株価が上方に水準修正を示現する原動力になり得ます。

英国のEU離脱をめぐる混乱、米朝首脳会談をめぐる駆け引き、トランプ大統領と議会の確執、米国の対イラン強硬姿勢など、注視しなければならない監視対象が数多く残存しており、予断を持つことは許されませんが、当面は、市場観測の転換に伴う反動推移を軽視しない対応が重要であると思われます。 (2019年1月18日/次回は2月2日配信予定)

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