S&P500 月例レポート ― 12月としては1931年以来の大幅下落 (2) ―

市況
2019年1月19日 11時00分

●主なポイント

・12月のS&P 500指数は2506.85で取引を終え、11月末の2760.17から9.18%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス9.03%)、12月の騰落率としては1931年12月(14.53%下落)以降の最低、1ヵ月の騰落率としては2009年2月(10.99%下落)以降の最低を付けました。11月は1.74%の下落でした(同プラス2.04%)。過去3ヵ月間では13.97%下落(同マイナス13.52%)、2018年通年では6.24%下落(同マイナス4.38%)、過去2年間では11.97%上昇(同プラス16.49%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2139.56)以降では17.17%上昇(同プラス22.29%、年率換算でそれぞれ7.67%とプラス9.84%)となっています。

S&P 500指数は調整モードに入ってからも下落基調が続き、終値で2018年9月20日に付けた直近高値(2930.75)から14.46%下げて12月を終え、弱気相場の水準であるマイナス20%に近づきました。

ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は23327.46ドルで取引を終え、11月末の25538.46ドルから8.66%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス8.59%)。11月は1.68%の上昇でした(同プラス2.11%)。過去3ヵ月間では11.83%下落(同マイナス11.31%)、年間では5.63%下落(同マイナス3.48%)となりました。

・2018年第3四半期の業績は、営業利益、米国の一般会計原則(GAAP)に基づく利益、売上高が過去最高を更新し、市場の注目は2018年第4四半期に移り始めています。第4四半期の企業利益は2.3%減が予想されますが、減税実施前の2017年第4四半期比では19.4%増となる見通しです。年間では、2018年は2017年比で26.1%増益、2019年は減速して9.4%増益(過去最高を更新する見通し)となることが予想されています。

・S&P 500指数構成企業の第3四半期の自社株買い額は予想通り、3四半期連続で過去最高を更新し、2000億ドルの節目を初めて超えて2038億ドルとなり、2018年の第1四半期から第3四半期までで、2007年に記録した年間最高額にあと約1%に迫りました。より多くの銘柄が株式数を大幅に減らしていることで、EPSが増加しています。

・S&P 500指数構成企業の2018年第4四半期の1株当たり配当金額は過去最高の14.19ドル(総額1198億ドル)、年間での1株当たり配当金額も過去最高の53.76ドル(総額4563億ドル)となりました。

・アナリストはボトムアップベースで算出した1年後の目標値を引き下げましたが、相場の下落幅ほど大きな見直しではなく、引き続き高い水準を予想しています。目標値はS&P 500指数が3153(現在値から25.8%上昇、11月末時点は3179)、ダウ平均は2万8865ドル(同23.7%上昇、同2万9020ドル)となっています。

○トランプ大統領と政府高官

・ミック・マルバニー行政管理予算局長が、2018年末で退任するジョン・ケリー氏に代わり、トランプ政権の首席補佐官代行を務めます(ケリー氏は2017年7月にラインス・プリーバス氏に代わり首席補佐官に就任しました)。

・ジム・マティス国防長官がトランプ大統領との見解の相違を理由に、2019年2月末で退任することを発表したところ、トランプ大統領がマティス国防長官の退任日を年内に早め、パトリック・シャナハン副国防長官(以前はボーイング社に勤務)を暫定的な長官代理に指名しました。

・テキサス州連邦判事は医療保険制度改革法(オバマケア)を違憲とする判決を下しました。この事案は上級裁判所で再審理されます。

・米国-メキシコ国境の壁の建設費用問題により、米国の政府機関の一部が閉鎖されました(2018年12月21日金曜日の真夜中)。閉鎖されたのは連邦政府の約25%で(残りはそれ以前に資金が供給済み)、重要性の高い一部の機関は引き続き業務を行いました。クリスマス休暇の週には政府機関の閉鎖の影響は大きくありませんでしたが、1月も閉鎖が続くようであれば、影響は拡大すると思われます。注意すべき点は、労働統計局が閉鎖期間中も経済指標の発表を続けるのに対して(ただし、発表時期は遅れる可能性あり)、米商務省は指標(GDP統計、インフレ指標)を発表しないと表明したことです。

○各国中央銀行の動き

・欧州中央銀行(ECB)は予定通り(かつ予想通り)、危機期に実施された量的緩和プログラムを2018年末で終了すると発表し、月額150億ユーロ(170億ドル)の債券購入を打ち切りました。ECBによれば、償還債券の元本再投資期間は延長される予定です。金利は据え置きとなりました。

・FOMCは2018年で4回目となる利上げを発表し、金利を(予想通り)0.25%ポイント引き上げました。発表されたFOMC声明と経済見通しでは、今後数年の金利見通しがやや下方シフトし、過半数のメンバー(17人中11人)が2019年に必要な利上げを2回と考えていることが示されました(それに対して、9月の会合では7回が予想されていました)。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、「経済的背景は力強い」とした上で、FRBは「数ヵ月前の予想に比べて軟化を示唆する動きがある」とみている一方、目下のバランスシート縮小プログラムに満足しており、それを変更するつもりはないと述べました。2019年の利上げを1回と見込んでいた市場はこの発言に否定的に反応し、株価は会見前の1.5%高から反転して、終値で1.5%安となりました。

・スウェーデンのリクスバンクは予想外の利上げを発表し(2011年以降で初めて)、政策金利を0.25%ポイント引き上げましたが、それでも依然として-0.25%(利上げ前は-0.50%)とマイナス金利となっています。また同中銀は2019年に0.25%の追加利上げを2回実施する見通しを示しました。

・メキシコの中央銀行は(予想通り)金利を0.25%ポイント引き上げ、2008年以来の高水準となる8.25%としました。

○ファンダメンタルズ

・業績面では、S&P指数の全構成銘柄が2018年第3四半期の決算発表を終え、497銘柄中382銘柄で営業利益が予想を上回り、75銘柄が予想を下回り、40銘柄が予想通りとなりました。売上高は494銘柄中302銘柄で予想を上回り、過去最高を更新しました。第3四半期の売上高は前期比2.0%増、前年同期比10.7%増となりました。これまでに既に17銘柄が第4四半期の決算発表を終えましたが、利益が予想を上回ったのが13銘柄、予想を下回ったのが2銘柄、予想通りだったが2銘柄となり、売上高では17銘柄中8銘柄が予想を上回っています。現時点で、市場参加者は第4四半期の営業利益は第3四半期から2.3%減(前年同期比19.4%増)になると予想しています。2018年通年では、利益は2017年を26.1%上回る見通しで(大半は減税効果による)、2019年は2018年から9.4%の増益が予想されています。

配当に関しては、2018年第4四半期の配当総額が1198億ドル、通年では4563億ドルとなり(2017年は4198億ドル)、いずれも過去最高を更新しました。減税で利益が膨らんだ分が配当に回された結果ですが、自社株買いの実施額には及びませんでした。自社株買いは、減税分の一部の使い道として利用された結果、2018年第3四半期の総額が2038億ドルと過去最高を記録しました(過去12ヵ月間では4460億ドル)。

石油に関しては、OPECがウィーンで開催された総会で暫定的な減産で合意しました(詳細については協議を継続)。具体的には、日量120万バレルの減産で、OPEC加盟国が80万バレル、ロシアなどの非加盟国が40万ドルとなっています。原油価格は1バレル=43ドルを割り込む42.36ドルまで値下がりし、10月3日に付けた4年ぶりの高値となる76.41ドルを40%下回る45.81ドルで今年の取引を終えました。

M&A関連では、タバコ大手Altria(MO)が、カナダの医療用大麻事業Cronos Group(CRON)の株式45%を18億ドルで取得することを公表しました。Altriaはまた、幾つかの電子タバコのブランドを売却し、電子タバコ大手Juulへの投資を検討していることも明らかにしました。ヘルスケア製品メーカーPfizer(PFE)と英国の製薬大手GlaxoSmithKline(GSK)は、両社の消費者ヘルスケア事業(店頭販売商品)部門を統合することを発表しました。

IPO関連では、配車大手Uberが2019年の早い時期にIPOを計画しているとの報道がありました(直近の時価総額は760億ドル。市場環境次第では1200億ドルとなる可能性もあり、今がIPO実施時期として最適とはいえません)。競合のLyftに先を越されたくないとの判断があるようです。SNSサービスのPinterestも2019年初めのIPO予定企業リストに名を連ねています。同社の直近の資金調達での企業価値は120億ドルとなっています。

注目すべきニュースとしては、欧州司法裁判所の法務官は、他のEU加盟国の同意がなくても英国は離脱手続きを一方的に撤回できるとの見解(法的拘束力はありません)を示しました。英国のメイ首相は離脱協定が承認されないことが確実になったため、下院での採決を先送りしました。首相に対する不信任投票が実施されましたが、与党によりメイ首相は信任されました(信任200票、不信任117票)。なお、今後1年間は信任投票が再実施されないことになっています。離脱時期は2019年3月29日となっていますが、合意(ルールブック)なしの離脱となった場合、経済面での運営と手続きが著しい打撃を受ける可能性があります。

※「12月としては1931年以来の大幅下落 (3) 」へ続く

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