2019年のドル・円の特徴【フィスコ・コラム】

市況
2019年1月20日 7時30分

荒れ模様となった年末年始の相場は、その後落ち着きを取り戻したかにみえます。イギリスの欧州連合(EU)離脱問題はなお流動的でポンドの値動きに警戒は必要ですが、足元の為替相場をみると、ドルは安全通貨としての役割を果たしているようです。

1月3日の外為市場はアジア取引時間帯の早朝、米アップルの業績予想の下方修正をきっかけにドル・円が急激に値下がりし、108円後半から一時103円台まで値を切り下げました。年明け間もないタイミングだったこともあり、「波乱の幕明け」の文字が踊りました。ただ、この日は107円半ばまで持ち直したほか、その後もドルは下値の堅い値動きで、今年最高値の109円70銭台が視野に入ってきました。

一方、アメリカの経済指標は低調な内容が目立ちます。4日に発表された雇用統計は平均賃金と非農業部門雇用者数が予想を上回ったものの、半世紀ぶりの低水準が続いた失業率は4カ月ぶりに悪化し、景気のピークアウトが意識されます。また、消費者物価指数は2017年8月以来1年4カ月ぶりに目安の2.0%を割り込んだほか、NY連銀製造業景気指数も伸びが鈍化するなど、主要データが軒並み悪化を示しています。

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が9日に公表したFOMC議事録(昨年12月18-19日開催分)は、多くの議員が株安への懸念から追加利上げに慎重姿勢をみせるなどハト派色の強いトーンが目立ちました。当局者のなかでもタカ派として知られるジョージ・カンザスシティ連銀総裁でさえ「過剰な引き締めは景気下降を導く可能性もある」とし、「金利正常化を打ち止める良い時期」との認識を示したぐらいです。

年末年始の荒れた相場は、中国の経済指標の弱含みをきっかけに世界経済の腰折れ懸念から大幅株安に陥りました。中国との経済のつながりの深いオーストラリアやニュージーランドが注目され、オセアニア通貨も買いづらい状況です。対照的に、ドルはリスク回避的な状況から買いを集めていたため下落基調となっても極端に値下がりせず、むしろじり高傾向が続いているのだと思われます。

今年最初のヤマ場となったイギリス下院におけるEU合意案の議会採決は、市場の予想通り大差で否決されました。情勢は流動的となり、メイ首相が21日提出する代替策をめぐり憶測が飛び交い、ポンドは当面、乱高下は避けられないでしょう。それが主要通貨の値動きに影響を与える場面も想定されます。こうしたブレグジットの先行き不透明感は引き続きドル買いを誘発する要因となります。

アメリカの経済は「絶好調」が「好調」になっただけですが、景気減速が強調され今後の引き締め中止の観測が広がればドル買い意欲は一層減退に向かうでしょう。一方で、市場が混乱する場面では、やはり買いが入りやすい見通しです。それは円も同様です。2018年はドルと円が同じような値動きとなったことでドル・円はレンジ取引となりましたが、今年も似たように値幅の薄い値動きになるのかもしれません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

提供:フィスコ

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