国内株式市場見通し:海外イベント睨みの神経質な展開に
■米中摩擦が再び影落とす
前週の日経平均は下落した。週間ベースでは5週ぶりのマイナスとなった。週初4日の日経平均は米1月雇用統計と円安が進行したことを好感して3日続伸となった。5日はさらに、為替市場で円安が1ドル=110円台まで進み、NYダウも続伸したことから日経平均は寄り付き直後に20981.23円(前日比97.46円高)まで上昇したが、節目の21000円手前での戻り売り圧力は強く、業績下方修正を発表したパナソニック<6752>などの下げもあり、日経平均は4営業日ぶりに反落した。6日は3日続伸となった米国株高を好感して反発となった。ただ、ここでも節目の21000円には届かず上値の重さが意識される展開のなか、ソニーが下落、取引時間中の決算発表で通期純利益を下方修正したトヨタ<7203>がマイナス転換し、日経平均の上げ幅は小幅にとどまった。また、同じく場中に伝わったトランプ米大統領による一般教書演説にサプライズはなく、東京市場には中立だった。7日の日経平均は反落した。NYダウが4日ぶりに下落したことなどを受けて、東証1部銘柄の74%が値下がりするなど利益確定の売りが広がった。しかし、米財務長官などによる米中通商協議の再開が伝わるとともに、1月29日以来となる日銀の上場投資信託(ETF)買い入れもあり、日経平均の下値も限られた。このほか、前日に市場予想を上回る第3四半期決算と自社株買いを発表したソフトバンクG<9984>がストップ高と急騰したことが話題となった。8日の日経平均は続落し、大引けでは前日比418.11円安(2.01%安)と大発会に次ぐ今年2番目の下げ幅を見た。欧州委員会がユーロ圏成長見通しを下方修正したことで欧州株が全面安となったことに加えて、米中貿易摩擦の改善期待が後退しNYダウが大幅続落となったことを嫌気した。3連休を控えていることから買いも手控えられた。
■日経平均は下値抵抗力を試す
今週の日経平均は調整ムードが強まる展開となりそうだ。日経平均は、下値サポートラインだった5日移動平均線を7日に割り込んだのに続いて、上昇に転じてきた20500円近辺を走る25日移動平均線も8日に下回ってきたことで、目先的には調整色が強まってきている。今後はこの25日線を回復し、新たなサポートラインとして機能するかどうかが焦点となってこよう。また、米中首脳会談が貿易協議の3月1日の期限前に実現しないことが強まったことで、8日の東京市場は一段安となったことからわかるように米中問題が相場に与える影響は引き続き大きいとみられる。特に、11日の週には米中協議の責任者である米通商代表部のライトハイザー(USTR)代表とムニューシン財務長官が北京を訪れて閣僚協議を行う予定にある。27日、28日で予定されるベトナム・ハノイでの米朝首脳会談の前後に米中首脳会談が設定されるとの説もあっただけに、米中貿易問題は大きなヤマ場を迎えることにもなりそうだ。閣僚協議の結果次第で相場は、上にも下にも大きく振れる可能性がある。加えて、今週は米国と中国は経済統計の発表も複数あり、15日には米つなぎ(暫定)予算の期限を迎え、春節明けで11日から取引が再開される中国・上海市場の動向とともに波乱要素を抱えるイベントが控えている。東京市場もこの外部要因を睨んで神経質な展開となりそうだ。連休のため来週は4営業日で18日は米国市場が休場とカレンダー的にも積極的な買いが見送られやすい。日経平均は節目の20000円に迫ってきており、下値抵抗力を試す場面ともなっている。
■決算発表は一巡
こうしたなか、14日で決算発表は一巡する。今後は12日に鹿島<1812>、日産自動車<7201>、楽天<4755>、13日にリクルート<6098>、ダイキン<6367>、14日に日本郵政<6178>。東京海上<8766>と内需型の企業の決算が増える。三菱電機<6503>、パナソニック<6752>、そして保有株式の評価損とはいえトヨタ自動車<7203>と業績の下方修正が相次ぎ、企業業績の面からも相場を刺激する買い材料が乏しくなっている。一方、マザーズやジャスダックの新興市場は好決算銘柄、材料出現銘柄が素直に買いあげられている。4日連続ストップ高のあと5日に寄り付いたサンバイオ<4592>がその後は戻りを試していることは好感される動き。全般は物色テーマも定まっていないなかで個別株物色が引き続き選好されそうだ。
■米暫定予算期限、米消費者物価、中国貿易収支
今週の主な国内経済関連スケジュールは、11日は建国記念の日で東京市場休場、12日は1月マネーストック、1月工作機械受注、10-12月期GDP速報値、15日は12月設備稼働率、12月鉱工業生産・確報値が予定されている。一方、米国を含む海外経済関連スケジュールでは、13日に米1月消費者物価指数、米12月財政収支、14日に米1月生産者物価、中国1月貿易収支、15日は米1月小売売上高、米1月輸出入物価、米1月鉱工業生産・設備稼働率、中国1月消費者物価・生産者物価が予定されている。このほか、国内外で予定されているイベント・トピックスとしては、13日は米下院でスプリントとTモバイルUS合併に関する公聴会、16日は故金正日総書記の誕生日となっている。
《FA》
提供:フィスコ