為替週間見通し:下げ渋りか、欧州リスクがドルに対する支援材料に
【先週の概況】
■米中貿易協議進展への期待でドルは下げ渋る
先週のドル・円は強含み。「3月中にフロリダで米中首脳会談の開催が検討されている」との報道を受けてドル買いが先行した。米政府機関の再閉鎖が警戒されたことからドルは上げ渋る場面があったが、13日発表の1月米消費者物価コア指数は市場予想を上回ったことから、ドル買いが再び優勢となった。トランプ米大統領が米政府機関の再閉鎖を望んでいないとの意向を表明したことから、ドル・円は再び111円台に戻した。
しかしながら、14日発表の12月小売売上高は市場予想を下回る大幅な減少を記録したことから、ドルは110円台半ばまで反落。一部で米中貿易協議の進展に対する懐疑的な見方が浮上したこともドル売り材料となった。
15日のニューヨーク外為市場でドル・円は、110円台半ば近辺でもみ合う展開となった。米中貿易協議における合意への期待や米政府機関の再閉鎖回避を意識してドル買いがやや優勢となったが、1月の米鉱工業生産は予想外の減少を記録したことや、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁が米紙WSJとのインタビューで「本年、利上げを見送る可能性がかなりある」との見解を示したことからドルは伸び悩み、110円43銭でこの週の取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは109円69銭から111円13銭となった。ドル・円の取引レンジ:109円69銭-111円13銭。
【今週の見通し】
■下げ渋りか、欧州リスクがドルに対する支援材料に
今週のドル・円は下げ渋りか。米中政府は北京で行っていた閣僚級貿易協議を終え、今週ワシントンで協議を再開する方針を明らかにしたことから、協議進展を期待した円売りは継続する可能性がある。
米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを休止するとの見方が広がっていることや、世界経済の減速懸念は消えていないことはドルの下押し要因となりそうだが、ユーロ圏の景気減速を懸念したユーロ売りや英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)の不透明感を背景としたポンド売りによって、安全逃避のドル買いが入りやすい。
直近の米インフレ指標の伸び率は鈍化しており、12月の小売売上高は9年ぶりの大幅減が示された。2月末に発表予定の10-12月期国内総生産(GDP)が低調な内容だった場合、新たなドル売り材料となるだろう。
ただ、米国金利の先高観はすでに後退しており、現時点でリスク回避的なドル売りが大きく広がる可能性は低いとみられる。欧州委員会が今年と来年の域内経済の成長について下方修正したことや、ドイツ経済の悪化を警戒してユーロ売り・米ドル買いは継続する可能性がある。スペインにおける政治不安が台頭していることもユーロ売り材料になるとみられる。
こうした欧州リスクから逃避資金がドルに流入する展開で、ドル・円の取引ではドル買いが縮小する可能性は低いとみられる。ドル・円は14日にかけて111円13銭まで上昇した。110円は短期的な下値目途(サポートポイント)になるとみられており、ドル・円が110円台を維持している間は、リスク回避的なドル売りが大きく広がる可能性は低いと予想される。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(20日公表予定)
米FRBは20日に1月29-30日に開催したFOMC議事要旨を公表する。政策金利を2.25-2.50
%に据え置くことが決定されたが、議事要旨の内容が市場の想定よりハト派寄りであった場合はドル売り材料となる。
【米・12月耐久財受注】(21日発表予定)
21日発表の12月耐久財受注は前月比+1.7%と予想されている。11月実績の同比+0.7%を大幅に上回る見込みだが、1月以降の数値を確認する必要があり、市場予想と一致してもドル買い材料となるかどうか、定かではないとみられている。
予想レンジ:109円00銭-112円00銭
《FA》
提供:フィスコ