為替週間見通し:もみ合いか、米利上げ休止観測でドル買い一服も
【先週の概況】
■ドル・円は一時112円08銭、米中貿易協議継続への期待広がる
先週のドル・円は上昇。トランプ米大統領が「米中通商協議において重要な構造的問題で大きな進展があり、対中関税引き上げを延期する」、「交渉も延長し、首脳会談で最終合意を目指す」と表明したことや、2月28日発表の10-12月期米国内総生産(GDP)は前期比年率+2.6%で大方の予想(前期比年率+2.2%程度)を上回ったことがドル上昇につながった。2月27-28日に行われた米朝首脳会談で合意文書に署名することができなかったことや、インドとパキスタンの空爆の応酬によって地政学リスクが高まったことを受けてドル売りがやや強まる場面もあったが、米経済指標の改善を好感したドル買いが勝った。
1日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時112円台に上昇した。クドロー国家経済会議(NEC)委員長は「米中貿易協議がかなり進展した」との見解を示したことや、米政府高官が、「3月中旬に開催されると見られる会談で米中両首脳が貿易協定案署名も可能」との見解を明らかにした。米長期金利は上昇し、リスク選好的なドル買いが優勢となった。ドル・円は一時112円08銭まで上昇し、111円94銭で引けた。ドル・円の取引レンジ:110円36銭-112円08銭。
【今週の見通し】
■もみ合いか、米利上げ休止観測でドル買い一服も
今週のドル・円はもみ合いか。米長期金利の反発や米中貿易摩擦解消への期待が広がっていることから、ドル選好地合いは続くとみられる。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をしばらく据え置く公算であることから、リスク選好的なドル買いがさらに強まる可能性は低いと予想される。
今週7日に開かれる欧州中央銀行(ECB)理事会では、新たな貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)に関し議論されるとの見方が強まり、金融緩和継続を受けたユーロ売りがやや強まる可能性がある。また、欧州連合からの英国の離脱(ブレグジット)に関しては延期の観測が広がるなか、2回目の国民投票の実施を労働党が主張している。国内政治不安や解散・総選挙の思惑が広がっており、欧州通貨買い・米ドル売りがただちに広がる可能性は低いとみられる。
2月雇用統計などの米国の重要経済指標が市場予想を上回った場合、早期追加利上げを期待したドル買いも入りやすいだろう。また、貿易・通商分野における米中協議は長期戦となり、紆余曲折の展開となれば安全通貨としてドルが選好されやすい。ただ、パウエルFRB議長の議会証言では追加利上げに慎重であることを意識させる発言が少なくなかった。3月19-20日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で政策金利は据え置きとなることが確実視されている。ドル・円は1日のニューヨーク市場で112円台に上昇し、年初来高値圏で推移しているが、新たなドル買い材料が提供されない場合、ドルは112円台で上昇一服となる可能性がある。
【米・2月ISM非製造業景況指数】(5日発表予定)
5日発表予定の2月米ISM非製造業景況指数は57.2と、1月の56.7を上回る見通し。米連邦準備制度理事会(FRB)の3月利上げ観測が後退しているが、想定以上に強い内容となれば株高・ドル高を誘発する手がかりとなりそうだ。
【米・2月雇用統計】(8日発表予定)
8日発表予定の2月米雇用統計は、失業率3.9%(前回4.0%)、非農業部門雇用者数は前月比+18.5万人(同+30.4万人)、平均時給は前年比+3.3%(同+3.2%)と見込まれる。失業率や賃金の改善は利上げ期待を高める要因に。
予想レンジ:110円50銭-113円00銭
《FA》
提供:フィスコ