ピート市長、都へ行く【フィスコ・コラム】

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2019年4月21日 9時00分

2020年の米大統領選はトランプ氏再選の機運が高まるとみていました。民主党候補がバーニー・サンダース上院議員以外はドングリの背比べで、盛り上がりを欠いていたためです。ところが、人口10万人あまりのある市長が名乗りを上げ、にわかに注目を集めています。

その市長とはピート・ブティジェッジ氏。姓の正しい読み方すら知られていなかったのが、最近大手メディアが取り上げ一躍話題の人となりました。2011年に29歳で出身地、インディアナ州サウスベンドの市長に就任し、「ピート市長」の愛称で親しまれています。4月14日に民主党候補として大統領選に出馬宣言。当選すれば選挙の時点で38歳と史上最年少、ゲイを公表した初の大統領となります。

大学教授の両親の間に生まれ、高校時代には政治に関する論文のコンクールでサンダース上院議員に関する論評を書いて優勝したこともあります。その後ハーバード大学、オックスフォード大学で政治や経済、哲学の学位を取得。2004年の大統領選では当時民主党候補だったジョン・ケリー氏の選対に政策リサーチ専門家として参加し、アメリカ大統領選に接点を持ちました。

市長就任当初から都市開発に注力し、空き家や廃屋を修復して再利用するプロジェクトを起ち上げ、目標を達成するなど実行力を発揮。2014年には海軍情報将校としてアフガニスタンに赴任します。2015年にインディアナ州の「宗教の自由回復法」に対しLGBTQ差別につながりかねないとの考えから反対を表明し、自身がゲイであることを公言。その後の市長選で対立候補に大差をつけて再選を果たしました。

地方の首長としては十分な経歴ですが、他の才能にも恵まれています。フランス語やスペイン語だけでなくアラビア語、ペルシャ語など7カ国語をマスターするほど語学には堪能といいます。また、コンサート・ピアニストとしてサウスベンド交響楽団と共演したこともあり、その多才ぶりをレオナルド・ダ・ビンチになぞらえて「ルネッサンス・マン」と呼ぶコメンテーターもいるほどです。

民主党候補としてこれまで20人近くが立候補を表明するなか、直近の支持率調査で出馬のタイミングを計るジョー・バイデン元副大統領、左派寄りの政策で若者に人気のサンダース上院議員に次いで、ピート市長は3位に浮上しました。ただ、党の指名争いは始まったばかり。いまだオバマ前大統領の幻影を追う党執行部は、ベト・オルーク前下院議員などを前面に押し出していますが、今後の政策論戦次第でしょう。

一方、ペンス副大統領の影響力が強いインディアナ州でも論理的かつ知的な話し方などが受け、無党派層や反トランプの共和党支持者を取り込む可能性があります。トランプ政権は現在、国内の雇用創出を目指し主要国との貿易赤字是正に向け奮闘中ですが、ピート市長の目にはトランプ政策を1950年代の復活と映っているようです。トランプ大統領はあらゆる意味で自身と対局的な同市長を、今後どのように“表現”するでしょうか。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

提供:フィスコ

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