馬渕治好氏【相場観特別編・著名エコノミストに聞け! 年後半「令和相場」の行方を占う】(1) <相場観特集>

特集
2019年4月29日 8時00分

馬渕治好氏【相場観特別編・著名エコノミストに聞け! 年後半「令和相場」の行方を占う】(1) <相場観特集>

―“逆業績相場”の向かい風に世界の株式市場は果たして耐え得るか?―

「目先天井圏で下値リスク大、年末は復活高へ」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

世界の株価は強調展開にあるが、次第にリスクが高まっていると感じる。振り返って、昨年10~12月の株価下落は思惑先行で下げのスピードが速過ぎた。これが今年の戻り相場の下地となったことは確かだが、株価が上昇した背景を考えると心もとない部分がある。米中協議の進展期待や米利上げの停止期待など後講釈的な理由を繰り返し、中国景気についても勝手な悲観論の後に楽観論を繰り出すような恣意的なものが目立つだけに、違和感は拭えない。主要国の経済指標や企業収益見通しは悪化している状況で、これがここからの株価下落に反映される公算が大きい。

●米株に追随し下押すも年末再浮上がメインシナリオに

米国の景気は強弱入り混じった経済統計で、依然として強い米経済を主張する声もあるが、19年内にリセッション入りする恐れがあると考えている。景気拡大にブレーキをかけるのは主に18年の好景気の反動、景気後退を見込んでの銀行の貸し渋り、関税引き上げの3点が挙げられる。更に、これにバイアスをかけるのが中古住宅の売り急ぎや自社株買いの減退などである。もっとも、米連銀は利下げ実施のカードも懐に忍ばせており、健全な金融機関の融資姿勢を考慮してもリーマン・ショックの再来はないと考えられる。したがって、米国株市場は実勢経済の悪化を先取りする形でいったん下値を試した後、年後半以降は戻り相場に向かう可能性がある。

では、日本はどうか。経済は輸出が勢いを失っている、個人消費は雇用環境こそ良好ながら、今秋の消費税率引き上げを控え、消費者心理としては慎重なムードが漂っている。年央に向け海外経済の悪化を跳ね返すだけのポジティブ材料は日本国内にはなく、米株安に追随する形で日経平均株価も大きく下値を試す局面は回避できないであろう。特に消費税率の引き上げは、日本固有の株安誘導材料で、これは実施される前の段階で株価の下げに織り込まれる展開が予想される。ただし、これを前倒しで株安に反映する分、戻りのタイミングも早まる。株価は年央以降にいったん崩れるものの、年末に向けて回復歩調に向かうというのがメインシナリオとなる。

●2万円割れの公算大だが、そこは買い場提供場面

現在の日経平均2万2000円台は当面の天井圏にあるとみている。世界的なリスク回避に向けた歯車が回り出せば、(アルゴリズム売買などのもたらす一方通行の下落圧力なども加わることで)下げ足はことのほか早まり、2万円大台を割り込んで、昨年12月の安値1万9155円を大きく下回るような展開となっても全く不思議はない。その際、外国為替市場でもリスクオフの円買いが進み1ドル=100円台を下回り97円近辺への円高進行が想定され、一気に外部環境の風向きは強い逆風へと変わる。

しかし、そこは逆に買い場となる。前述のように米株市場が年末にかけて戻り足に転じるケースでは、リスク回避的なムードも漸次後退することで、日経平均もそれに歩調を合わせて再浮上に転じる公算が大きい。2020年以降の世界景気回復を見越して株価は上値追い基調へと転じ、12月末までに日経平均は2万4000円近辺までの上昇余地があると考えている。その際、戻り相場で有力視される物色セクターとしては、世界景気に連動しやすい海運、商社、非鉄金属。加えて、設備投資回復の流れを見込んで機械や電機セクターなども狙い目となろう。(談)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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