為替週間見通し:米中対立継続を警戒してドルは上げ渋りか
【先週の概況】
■米中対立長期化への懸念などで円買い強まる
先週のドル・円は弱含み。米商務省が中国通信機器大手華為技術(ファーウェイ)との取引禁止措置の一部緩和を発表したことで、リスク回避のドル売り・円買いは一時縮小した。しかし、米トランプ政権が中国の監視カメラ最大手についても米企業による取引の制限を検討しているとの報道などで、通商問題などを巡る米中の対立はさらに深まるとの懸念が強まり、リスク回避のドル売り・円買いが再び優勢となった。
ユーロ圏や米国の企業景況感が悪化したことや、英国のメイ首相が辞意を表明し、英国は欧州連合(EU)からの合意なき離脱(強硬な離脱)を選択する可能性が高まったことも、ドル売り・円買いを促す要因となった。
24日のニューヨーク外為市場でドル・円は一時109円65銭まで上昇した。この日発表された4月の米耐久財受注速報値は市場予想を下回ったが、トランプ大統領が米中協議で合意した場合、ファーウェイ排除の動きを緩和させる可能性に言及したことから、米国株式は反発し、株高を意識したドル買いが観測された。ただ、米中協議の進展に対する懐疑的な見方が多いことから、ドルは109円台後半で上げ渋り、109円31銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:109円27銭-110円67銭。
【今週の見通し】
■米中対立継続を警戒してドルは上げ渋りか
今週のドル・円は上げ渋る展開か。欧州議会選の結果や英国政局の流動化を背景に、欧州通貨との比較でドル選好地合いが続く見通し。ただ、通商問題などを巡って米中の対立は続いており、早い時期に妥協点を見出すことは難しいとみられていることから、一部で利下げ観測がくすぶっており、積極的なドル買いは手控えられそうだ。英国、欧州の政治不安が高まっていることは円買い材料となる可能性がある。
メイ英首相は24日、6月7日に党首を辞任すると表明した。次期英首相は欧州連合(EU)からの離脱に対しメイ氏より強硬な路線をとる可能性が高いとみられており、英国は「合意なき離脱」を選択する可能性がある。英議会で合意なき離脱の方針は一度否決されているが、新首相が「合意なき離脱」に突き進む可能性は残されている。この場合、欧州通貨に対する円買いが強まる可能性があり、ドル・円の取引でも円買いが優勢となりそうだ。また、23-26日の欧州議会選で右派勢力が拡大すれば、ユーロ圏の維持が困難との見方が高まりそうだ。欧州の政治不安を意識して欧州通貨に対するドル買いが優勢となる可能性があるが、クロス円取引では円買いが増えるとみられており、この影響でドル・円は上げ渋る可能性がある。
なお、トランプ米政権は中国のファーウェイの取り扱いをめぐり規制を一部緩和したものの、監視カメラで世界シェア首位の中国企業(杭州海康威視数字技術)への禁輸措置を検討していることから、米中対立への懸念は払しょくされていない。新たな制裁措置が導入された場合、リスク回避的なドル売り・円買いは増える可能性があり、ドルの反発を抑えることが予想される。
【米・1-3月期国内総生産(GDP)改定値】(30日発表予定)
30日発表の1-3月期国内総生産(GDP)改定値は、前期比年率+3.1%と速報値の+3.2%をやや下回る見通し。ただし、主要国の成長率は総じて鈍化しており、3%台を維持できれば、ドル買い材料になるとの見方が多い。
【米・4月個人消費支出(PCE)】(31日発表予定)
31日発表の米4月個人消費支出(PCE)のコア指数は前年比+1.6%と予想されている。上昇率は3月実績と同水準と見込まれているが、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である前年比+2.0%を下回る状態が続くことから、ドル売り材料となる可能性がある。
予想レンジ:108円00銭-111円00銭
《FA》
提供:フィスコ