TOKAI Research Memo(7):中期経営計画ではM&AとABCIR+S戦略の推進により成長を加速する方針

特集
2019年6月5日 15時57分

■TOKAIホールディングス<3167>の今後の見通し

3. 中期経営計画の進捗状況

(1) 基本方針と取り組み状況

2018年3月期よりスタートした新中期経営計画(IP20)では、基本戦略としてトップラインの成長を最優先に「守りの経営」から「攻めの経営」に転じることを打ち出した。2021年3月までに顧客基盤の拡大につながるM&Aやアライアンスを積極的に推進し、総額1,000億円の戦略的投資を実行していく方針となっている。

M&Aの対象としては、中核事業であるガス、CATV、情報通信サービス等で顧客基盤を持つ企業のほか、既存の生活関連サービスの周辺領域についても対象としている。2019年3月期までの実績としては、CATV事業で2件(東京ベイネットワーク、テレビ津山)、2019年3月期には都市ガス事業で2件(群馬県下仁田町、秋田県にかほ市)、情報及び通信サービス事業で1件(サイズ)の合計5件となり、株式取得費用として約50億円を投下している。同社は現在も複数の案件について精査を行っている状況にあり、引き続き積極的な投資を行っていく計画となっている。1年前と比べると特に、都市ガス事業やCATV事業でのM&A案件が増加しているようで、今後の成約が期待される。

また、「ABCIR+S」をテーマとした先進技術を活用した新たな顧客基盤の拡大や競争力の強化、新サービスの開発にも取り組んでおり、専任組織として2019年3月期に立ち上げた「次世代経営戦略本部」の体制をさらに強化し、「デジタルマーケティングプラットフォーム(以下、DMP)」の構築を推進していく方針となっている。DMPは同社グループの顧客データベースとWeb閲覧情報を顧客単位でデータ統合することで、個人ごとの傾向(趣味嗜好、解約予兆等)を把握し、この情報を基に営業活動及び解約防止活動等の効率化と競争力の強化を実現する新たなマーケティング手法となる。既にプラットフォームは完成しており、今後、データベースの収集・分析を行い、シナリオを複数用意した上で実用化していく予定にしている。

(2) 業績の進捗状況

中期経営計画の経営数値目標では、2021年3月期に連結売上高で3,393億円、営業利益で225億円、親会社株主に帰属する当期純利益で115億円、グループ顧客件数で432万件以上を掲げている。これに対して、2019年3月期までの進捗状況を見ると、当初目標に対して売上高で104億円、営業利益で9億円、親会社株主に帰属する当期純利益で1億円、顧客件数で9万件の未達となった。顧客件数を事業別で見れば、ガス及び石油事業はほぼ計画どおり、CATV事業で計画をやや上回るペースで進捗しているのに対して、情報及び通信サービスが想定以上に減少していることが主因となっている。

また、今回発表された2020年3月期の業績予想は、目標値に対して売上高で240億円程度乖離しているが、これはM&Aの進捗が遅れていることが主因と見られる。一方で、営業利益が20億円程度の乖離となっているが、中期計画策定段階と比較してLPガスの仕入価格が上昇しており、その影響で20億円前後の下振れ要因になっていると見られ、同要因を除けばおおむね順調に推移していると認識だ。2021年3月期の目標達成は今後のM&Aの状況次第となる。また、収益拡大施策として注力している複数契約率に関しては2019年3月期末で17.8%(前期末16.7%)となっており、2021年3月期末の目標20%に向けて順調に上昇している。

一方、財務面を見ると2019年3月期は自己資本比率で37.4%、有利子負債/EBITDA倍率で1.8倍とおおむね中期経営計画目標の範囲内で推移している。今後、大型のM&Aが決まるようなことがあれば有利子負債が増加することになるが、自己資本比率は30%台をキープし財務の健全性を保ちながら積極投資を実施していく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SF》

提供:フィスコ

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