すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 ろくすけさんの場合-第1回
10年で2倍を目指していたら、10倍になったすご技
登場する銘柄
金融機関出身のフリーライター。株式、投資信託、不動産投資などを中心とした資産形成に関連する記事執筆を主に担当。相続、税金、ライフプラン関連も数多く執筆。
投資歴約20年のサラリーマン投資家。「多くの人がまだ気づいていない潜在的・本源的価値を見出す」をモットーに企業研究に励み、長期投資を志す。2008年サブプライム問題での相場低迷時に日本株の割安感に着目。投信積み立てから個別株に軸足を移して以降、一歩一歩資産拡大を遂げている。現在の運用資産額は約3億円で、この他にキャッシュで買った自宅も保有。
「10年で2倍くらいに増えればいい」と思って始めた株式投資で、10倍以上に増やすことができてしまった!
そんな羨ましい成果を獲得しているのが、今回登場するろくすけさん(ハンドルネーム)だ。
原資は、会社に入ってから日本株の投資信託を中心に10年間、毎月9万円ほどのペースでコツコツ投資して積み立てた3000万円。それだけでも目を見張るが、さらに驚かされるのが、その3000万円を同じ10年の期間で3億円以上に膨らましたことだ。
投資で稼いだ利益の一部でマイホームを購入、さらに今年に入ってから勤務先を早期退職して専業投資家に転身することにも成功するなど、個人投資家にとって憧れの投資人生を歩んでいる。ろくすけさんが成功した秘訣とは何か。その原点はリーマン・ショックにあった。
リーマン・ショックの起きた2008年から始めた個別株投資
ろくすけさんが投信の積み立て主体から個別株投資に切り替えたのは、リーマン・ショックが起きた08年。米国のサブプライム問題に端を発した株式相場の下落で、割安な日本株が増えたことでチャンス到来と踏んだのだ。
個別株投資を始めた理由に示されているように、ろくすけさんの投資戦略は収益バリュー。すなわち、その企業が持つ潜在的な収益力に対して、株価が低く評価されている状態からの水準訂正を狙うものだ。
デビュー直後にリーマン・ショックが襲ったことで、09年3月末時点の資産は前年より15%も減ってしまった。しかし、その後に長期上昇相場が始まったことを考えると、08年に個別株投資に切り替えたことは、その後の資産膨張の追い風になったのは否定しようがない。
ただタイミングの良さだけでは到底、「資産10倍化」はできなかった。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)が、リーマン後からの10年ほどで3~4倍前後の上昇にとどまっていることをみても明らかだ。では、ろくすけさんが大幅なアルファ(ベンチマークに対する超過収益)を獲得できたのは、どこにあるのか。それはリーマン・ショック後に得たある学びにあった。
■日経平均株価の月足チャート
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
「需要蒸発」に負けない企業の事業モデルに注目
「需要蒸発」という言葉を覚えている人も多いだろう。リーマン後、金融ショックによる信用不安の拡大で、資金の借り手である企業は一斉に生産や投資の縮小に走り、需要が一気に落ち込んだ。その影響はトヨタ自動車などの世界的な優良企業にも及び、09年から10年の決算期にかけて業績を落とす企業が続出した。
そんな企業が多い中、ろくすけさんは仕事をしながらあることに気づいた。取引先の中に、需要蒸発の影響を受ける企業と、ほとんど受けない企業に分かれていることだ。軽微な影響にとどまる取引先を分析してみると、毎月一定の収益を上げられる事業モデルを持っていることが分かった。
『株探』プレミアムの専用記事を愛読していただいている方なら既にお気づきかもしれないが、ろくすけさんは連結会計システムのアバント <3836> 株に投資している。『株探』プレミアムでは、同社のCFO(最高財務責任者)を3人の個人投資家と共に直撃質問する特集記事を、この4月末から3回にわたり掲載している(参考記事)。その3人の個人投資家の1人がろくすけさんだった。
アバント <3836> の特徴は顧客から定期的に入るストック収入があり、全体に占めるストック収入の比率を足元の30%強から5年間で70%強に引き上げようとしている。アバントには、ろくすけさんがリーマン・ショックの時に学んだ危機に強い収益基盤があり、それをさらに強化しようとしている。ろくすけさんたちは、強化策について質問し、目標達成の確度を測るためにアバントに質問したのだ。
足元の相場環境は、米中貿易摩擦による景気への悪影響、さらに円高や消費増税を控え様々な懸念がくすぶっている。先行き不安が襲う相場環境の中で、景気に左右されず業績を上げられる仕組みを持った企業に投資して、長期スタンスでリターンを狙うろくすけさんの投資手法は学ぶべき部分が多い。
今後4回にわたり、そのポイントを紹介していこう。まず本コラムのテーマである、銘柄選びの着眼点についてみていく。
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