GTS Research Memo(5):バイオシミラーは2020年3月期以降、2品目の上市が視野に入る(1)
■ジーンテクノサイエンス<4584>の開発パイプラインの状況
1. バイオシミラー事業
バイオシミラー事業では、2020年3月期に「GBS-011」(ダルベポエチンアルファBS)、2022年3月期に「GBS-007」(ラニビズマブBS)の上市が見込まれており、その他のパイプラインでも2020年3月期中に臨床試験入りする可能性があるものがある。なお、既に国内で上市しているフィルグラスチムBSについては提携先である富士製薬工業向けを中心とした原薬販売等で年間約9億円の売上実績を挙げており、薬価次第ではあるが、今後も横ばい水準で推移する見通しとなっている。
(1) GBS-011
「GBS-011」は腎性貧血治療薬であるダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)のバイオシミラーで、共同開発先の三和化学研究所が2018年9月に製造販売承認申請を行った。平均審査期間は1年余りのため、順調に進めば2020年3月期中にも製造販売承認を取得できる見通しだ。同社は上市後に販売高に応じたロイヤルティ収入を得られることになる。同品目の製造は、韓国のDong-A STで行っており、同社は三和化学研究所の開発を支援する形式で共同開発に携わってきたため、収益へのインパクトそのものは大きくないと考えられる。なお、2018年度のネスプの国内売上高は537億円となっており、BSの潜在市場規模※は約225億円と推計される。三和化学研究所と同時期にJCRファーマも販売承認申請を行っているほか、前述した協和キリンフロンティアがバイオセイムを2019年後半にも販売開始する見込みとなっており、バイオセイムの影響がどの程度あるのかを図る試金石となる。
※潜在市場規模は先行品の約40%相当額として算出(先行品の売上高×バイオシミラー浸透率60%×先行品の薬価の70%)。
(2) GBS-007
「GBS-007」は加齢黄斑変性治療薬である抗VEGF抗体薬のラニビズマブ(商品名:ルセンティス)バイオシミラーで、共同開発先の千寿製薬が2019年2月に第3相臨床試験の最終患者登録の完了を発表している。観察期間は1年間のため、2020年2月にすべての治験が終了し、その後数か月で治験データの収集・解析・申請書類の準備を行い、これらが整い次第、製造販売承認申請を行うことになる。順調に進めば2022年3月期に販売承認を取得できることになる。国内の加齢黄斑変性治療薬としてはラニビズマブとアフリベルセプト(商品名:アイリーア)の2つの抗VEGF抗体薬が販売されており、ルセンティスの売上高は約230億円、アイリーアは約600億円となっている。このため、加齢黄斑変性治療薬のバイオシミラーの潜在総需要としては国内で約350億円、うちルセンティスの代替需要としては約90億円と試算される。両薬剤の違いは、投与期間がルセンティスで1ヶ月半程度なのに対して、アイリーアは2ヶ月程度とやや長いこと、患者によってそれぞれの薬剤に効果が異なること等が挙げられる。眼球注射で患者負担が大きいため、投与期間が長いアイリーアが選好されやすい。
なお、世界市場におけるルセンティスの売上高は約2,000億円、アイリーアは約7,000億円となっているため、海外でバイオシミラーを販売することができれば、業績面でも大きなポテンシャルが生まれることになる。日本での特許はルセンティスが2020年、アイリーアが2022年にそれぞれ満了するため、バイオシミラーの販売が可能となる。なお、投与期間が約3ヶ月とさらに薬効を高めた新型の抗VEGF薬が2020年に上市される見込みだが、低価格なバイオシミラーのニーズはあると見られる。海外ではサムスン・バイオエピスほか1社が第3相臨床試験を行っている程度であり、同社の参入余地は大きい。
こうしたなか、同社は2019年1月に中国のOcumension Therapeutics(以下、Ocumension)と中国、台湾における独占ライセンス契約を締結したことを発表している。今後は千寿製薬及びOcumensionと同社の3社で役割分担に応じて、原薬または製剤の供給、臨床試験等を行い、中国及び台湾での上市を目指すことになる。今回の契約締結により、同社と千寿製薬は、Ocumensionから契約一時金を受領し、開発段階に応じた開発マイルストン収入並びに上市後の販売高に応じたロイヤリティを受領する予定となっている。また、欧米市場での導出活動についても継続して取り組んでいく予定となっている。
(3) GBS-010
GBS-010はフィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで投与回数を減らし、効果の持続性を増したペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ/ニューラスタ)のバイオシミラーとなる。非臨床試験が既に終わっているほか、2020年代早々に臨床試験入りする可能性がある。ペグフィルグラスチムBSは既に上市実績のあるフィルグラスチムBSの原料をベースとしているため、開発を進めるうえで同社にとってはアドバンテージとなる。2022年秋頃の先行品の再審査期間満了に合わせて遅滞なく上市ができるように開発を進めていくものと思われる。国内のジーラスタの2018年度の売上高は207億円となっており、バイオシミラーの潜在需要は約80億円と試算される。
(4) その他
その他、同社はバイオシミラーのパイプラインで、あと1~2品目のシーズを保有しており、提携先が見つかり次第、プロジェクト化される予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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提供:フィスコ