GTS Research Memo(6):バイオシミラーは2020年3月期以降、2品目の上市が視野に入る(2)

特集
2019年7月3日 15時56分

■開発パイプラインの状況

2. バイオ新薬事業

バイオ新薬に関しては、抗α9インテグリン抗体を科研製薬にライセンスアウトしたが、開発状況については殆ど進展がない状況にある。こうしたなか、ジーンテクノサイエンス<4584>は眼科疾患やがん領域の新規抗体医薬品候補として「GND-004」に注力している。「GND-004」はルセンティスやアイリーアとは異なる作用機序(抗RAMP2抗体)による新生血管形成阻害剤となるため、両製剤が効かない眼科関連疾患の患者あるいはべバシズマブ(商品名:アバスチン)が効かないがん患者等に対しての需要が見込まれる。2017年9月に当該抗体に関する特許を出願しており、現在は動物実験により導出に必要なデータを蓄積している段階にあり、データを創出しつつ、早期の製薬企業への導出を目指している。

3. 新規バイオ事業

再生医療/細胞治療分野では、2019年5月に人工骨充填材「ReBOSSIS(レボシス)※1」を開発販売しているORTHOREBIRTHと共同研究開発契約を締結し、乳歯歯髄幹細胞とReBOSSISを組み合わせた口唇口蓋裂の治療法創出に向けた研究をスタートする。口唇口蓋裂は神経堤細胞※2の異常が原因であり、同じ神経堤細胞である歯髄幹細胞は最適な細胞ソースであること、綿状の人工骨充填材であるReBOSSISは、その特性上、歯髄幹細胞と相性が良く、高い骨再生能力が見込めることから開発に成功する確立は高いと思われる。

※1 ReBOSSISは米国FDAによって骨折治療において既に認可されている製品で、安全性と高い骨再生誘導能力が証明されている。生分解性素材でできているため、骨再生後には消失するため、人工成分が体内に残留するリスクはない。

※2 神経堤細胞とは、外胚葉(将来皮膚や神経を形成する細胞)のうち、表皮になる部分と神経になる部分の境目に形成される細胞で、もともとは外胚葉由来の細胞だが、発生過程において体の中の様々な領域に移動し、移動した先で外胚葉由来の組織や器官のみならず、中胚葉や内胚葉由来の組織に分化することができる多分化能を持つ細胞。

ポイントは、非侵襲性で就学前治療が可能なこと、低コストでの治療が可能になることの2点が挙げられる。従来は患者自身の腸骨を自家移植する手術が必要で、かつ十分な量の腸骨を取り出せるようになる年齢まで治療を待つ必要があり、侵襲性が高いことが課題であったが、歯髄幹細胞を用いた再生医療による治療法が確立されればこうした課題も解決される。まずは、試験管レベルで歯髄幹細胞と人工充填材の最適化の検討を進め、動物実験で骨再生能力の効果を実証していく予定となっている。臨床開発においての課題は、小児が対象となるため臨床試験の内容をどのように策定するか、また被験者のリクルートメントをどのように進めていくかと言う点が挙げられる。

その他のパイプラインとしては、2016年10月に資本業務提携したNKグループの日本再生医療において、世界初となる心臓内幹細胞を用いた心機能改善を目的とした治療法に関する臨床試験が、先駆け審査指定制度※により進んでいる。臨床試験が順調に進捗し、結果が良好であれば2020年代前半に製造販売承認を取得できる可能性がある。同社は非臨床試験や製法開発などで日本再生医療をサポートしている。また、現在の臨床試験は自家移植によるものだが、今後は他家移植や適応拡大の可能性の検討等を共同で行い、将来的には欧米市場への展開も視野に入れている。

※対象疾患の重篤性など一定の要件を満たす画期的な新薬などについて、開発の早期段階から対象品目に指定し、薬事承認に関する相談・審査で優先的な取扱いをすることで、承認審査の期間を短縮することを目的としたもので、同制度を活用することにより審査期間の目標を従来の約半分となる6ヶ月に短縮することが可能となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《ST》

提供:フィスコ

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