富田隆弥の【CHART CLUB】 「何のことはない」

市況
2019年7月6日 10時00分

◆参院選の戦いが始まり、安倍首相は「経済好調、税収も過去最高」とアピールする。たしかに株価は2万円台に乗せ、税収は昨年度60.4兆円と過去最高を記録した。だが、日経平均株価は昨年2万4000円台でダブルトップを形成し、今年は停滞続きで活気が失せている。税収は給与や株式売却益の増加が寄与したようだが、何のことはない。そこには今年度に還付するソフトバンクグループ <9984> の配当課税4000億円が含まれており、それを除けば過去最高(バブル期の1990年度60.1兆円)ではなかった。

◆2日付の日本経済新聞に過去10年間の日本株投信(ファンド)の成績に関する記事が載っていたが、何のことはない。日経平均の年間リターン10%を上回る成績を収めたファンドはたったの6本。それ以外のファンドはすべて指数を下回っていたという(※年間リターンは2009年6月から2019年5月までの年率換算)。過去10年といえばリーマンショックのあとで、株価は大きく上昇したところであり、その期間で10%以下とは情けない。

◆「株式投信(ファンド)」と言えば「資産を増やす」というイメージがあるだろうが、元本保証はない。最近のファンドは「ESG(環境・社会・ガバナンス)」をキーワードにするものが増えているが、何のことはない。組み入れている銘柄はどこも似たり寄ったりでESGに関係ないような銘柄も強引に組み入れ、日経平均などの指数に連動するように組成されているファンドが多い。つまり、そんなファンドだから成績は「相場次第」であり、運用の責任など誰も負ってはいない。そのようなファンドにわざわざ高い手数料を払って購入する意味があるのだろうか。上場投信(ETFブル)を購入する方がマシなのではないか。

◆老後資金2000万円の問題勃発で「ファンド(投信)」や「NISA」「ポイント投資」などが注目されている、という。若者たちが「投資」に関心を寄せ、株式市場に注目するのはすばらしいことだと思うが、何のことはない。お国の「タンス預金を引き出せ」「投資にまわせ」という旗印のもと、金融業界がマスコミを巻き込んで騒いでいるだけで、証券の現場サイドでは「実感がない」のが実情のようだ。

NYダウが過去最高値を更新したが、日本の株式市場は閑散地合いが続く。選挙を前に首相は アベノミクスの成果をアピールするのにあれこれ懸命だが、国民(個人投資家)は“ボ~”と生きている訳ではない。消費増税でどうなるかくらいは知っている。マンネリ化したアベノミクスや停滞ぎみの株式市場に“喝”を入れるなら、証券取引税の撤廃(もしくは引き下げ)を決断すべきなのではないか。

(7月4日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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