為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、米中貿易摩擦再燃で米9月追加利下げの可能性高まる

通貨
2019年8月3日 14時40分

【先週の概況】

■対中輸入関税第4弾の発動計画でドル下落

先週のドル・円は下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で世界情勢の不透明感やインフレ圧力の緩和を背景に、政策金利の0.25ポイント引き下げが決定されたが、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「長期にわたる利下げ開始を意味するものではない」との認識を示したことから、9月の追加利下げ観測は後退し、一時ドル買いが優勢となった。

しかし、トランプ政権が対中関税第4弾の発動計画(9月から残り3000億ドルの中国輸入品に10%追加関税)を発表したため、成長減速懸念が一段と強まり、9月の追加利下げ期待が再燃。米債利回り低下に伴うドル売りが加速し、ドル・円は107円を下回った。

2日のニューヨーク外為市場でドル・円は、107円28銭まで買われた後に、106円51銭まで下落した。この日発表された7月米雇用統計で失業率は上昇したものの、平均時給の上昇率は6月実績を上回っており、全体的には市場予想と差のない内容となった。ただ、米中貿易戦争の激化で世界経済の成長は大幅に減速するとの見方が強まり、9月追加利下げ観測が一段と広がったことから、リスク回避のドル売りが拡大した。ドル・円は106円58銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:106円51銭-109円32銭。

【今週の見通し】

■ドルは伸び悩みか、米中貿易摩擦再燃で米9月追加利下げの可能性高まる

今週のドル・円は伸び悩みか。米中貿易交渉の難航で貿易摩擦の再燃を懸念したドル売りは継続するとみられる。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ長期化への思惑は一時後退したが、9月1日より3000億ドル相当の中国製品に対して10%の輸入関税が賦課される可能性があることから、9月追加利下げ観測が広がっている。

7月30-31日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り政策金利の0.25ポイント引き下げが決定された。パウエルFRB議長は「下振れリスクに対する保険」とし、長期にわたり緩和政策が続くとの観測に否定的な見解を示した。3000億ドル相当の対中輸入関税発動が回避された場合、9月利下げ観測は大幅に後退すると予想されるが、輸入関税発動の成否については、予断を許さない状態が続くとみられる。

なお、今週は豪準備銀行とNZ準備銀行が政策金利を発表する。NZ準備銀行は0.25ポイントの利下げを行なう可能性があり、豪準備銀行は緩和的な政策スタンスを示す見通し。また、ユーロ圏の弱い経済指標で回復の遅れが目立つなか、欧州中央銀行(ECB)の9月利下げも見込まれる。主要国の中央銀行のなかではFRBが最も緩和に消極的との見方はあるものの、パウエル議長は年内追加利下げの可能性を指摘しており、今後発表される経済指標が低調だった場合、次回9月のFOMC会合で追加利下げが決定される可能性は高まると予想される。

【米・7月ISM非製造業景況指数】(8月5日発表予定)

5日発表予定の米7月ISM非製造業景況指数は55.5と、6月の55.1を上回る見通し。好不況の節目となる50は上回るものの、大幅な改善は期待薄か。7月の数値が市場予想を下回った場合、ドル売りが強まる可能性がある。

【米・7月生産者物価コア指数】(8月9日発表予定)

9日発表予定の7月生産者物価コア指数(PPI)は前年比+2.4%と予想されており、インフレ率は6月実績の+2.3%をやや上回る見通し。市場予想と一致した場合はドル買い材料になるとみられる。

予想レンジ:105円50銭-108円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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