サイバー防衛関連“2019夏の大玉花火”、急騰の宴が近づく5銘柄 <株探トップ特集>
―5G時代到来で注目必至、スマホ決済や自動運転などリアル社会の脅威と戦う―
トランプ米大統領が中国に対する追加関税第4弾を表明したことで、1日の米国株市場が波乱の様相を呈し、東京株式市場もリスクオフの大波に襲われた。2日の日経平均は一時600円近い下げで2万1000円台を割り込む急落を余儀なくされたが、投資家としてここは怯える場面ではない。米国を中心とする世界的な緩和マネーがセーフティーネットとなって株式市場の下値を支える。深押し場面は買い下がるチャンスと心得たい。
株式市場では19年4-6月期決算発表がたけなわ、この時期は個別企業が開示する業績にマーケットの視線が集まりやすく、テーマ買いの動きが鳴りを潜めるケースも多いが、こういう時こそ、投資テーマで買える銘柄をしっかり選別しておくことが大切となる。年後半相場で注目しておきたいのは、ずばりサイバー防衛関連だ。時流に乗るだけでなく急騰銘柄の宝庫でもあり、ここはうまくタイミングを捉えて高パフォーマンスをあげたい。
●デジタル社会の発展はセキュリティー次第
現在、インターネットを介したサイバー犯罪は増勢の一途にあり、年間のサイバー犯罪検挙数は既に9000件を上回る状況にある。不正アクセス数も昨年は1つのIPアドレスに対し1日当たり換算で2752件に達し、これは前年比で45%の増加と凄まじい勢いで伸びている。最近ではスマートフォン決済の「セブンペイ」への不正アクセスが大きくクローズアップされた。セブンペイは9月末でサービスを終了することになってしまったが、これはデジタル社会が発展していく過程で、セキュリティーの充実がいかに重要であるかを改めて印象づける事件でもあった。
そしてキャッシュレス決済分野のリスクはほんの断片に過ぎない。あらゆるものがネット空間と接続されるIoT時代の到来が本格化するつれ、サイバー犯罪の脅威が我々のリアルな日常生活にも及ぶ可能性が排除できなくなっている。家電製品やオフィス機器のほか、近い将来に普及が見込まれる自動運転などエレクトロニクス武装が進む自動車も次世代高速通信規格の5G環境のもとでIoT社会の端末と化していく。サイバー攻撃は、看過できない実社会のリスクとして企業や組織、国家レベルで論議を進めていかなければならない問題となっている。
●5Gで爆発的に増加するサイバー攻撃リスク
次世代高速通信規格の5Gが世界で本格的に商用化されれば、ネット空間とつながるIoT機器が爆発的に増加することは必至であり、それに伴うサイバーセキュリティーへのニーズも接続端末数に比例する形で急膨張していくことになる。
また、世界的な見地に立っても政権内部や大手企業を狙ったサイバー攻撃が激化しており、さながら情報を巡る国際戦争の様相を呈している。国家安全保障の観点から各国政府はその脅威への対策が喫緊の課題となっており、安倍政権ではその認識のもと米国政府の動向を含め各国の動きを注視しながら、対応を検討していく方針を示している。
特に日本の場合、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて対策が急務となっていることはいうまでもない。大会の組織委員会や官民の中枢をターゲットとしたサイバー攻撃からの防御は、国策として最優先で取り組むことが求められる時代となっている。昨年の平昌五輪では競技団体などの外部端末がウイルスに感染し、会場の中枢システムに侵入されてしまうという事件があったが、もちろんこれは日本にとって対岸の火事ではない。NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)は2017年から、過去の五輪大会における攻撃や被害及び対策を学ぶ勉強会を定期的に開催している。株式市場でも、今年後半から来年にかけて、国策を追い風に投資資金の流入により株価の居どころを変える銘柄が、数多く輩出される可能性が高まっている。
●サイバー防衛で大化けモード突入期待の5銘柄
関連銘柄としては、未知のウイルスを検知する技術に長じ、標的型攻撃に特化した自社開発ソフトで業界を先駆するFFRI <3692> [東証M]、セキュリティーソリューションで抜群の実績を有するラック <3857> [JQ]、米新興メーカーの最新技術製品を代理店販売するテリロジー <3356> [JQ]、セキュリティー製品販売及びSE派遣で強みを持つセグエグループ <3968> 、情報漏洩防止フィルタリングでトップシェアのデジタルアーツ <2326> 、指紋など生体認証技術に優れ官公庁向けでも太いパイプを持つディー・ディー・エス <3782> [東証M]、米ヒューレットパッカード系のソフト開発会社で認証セキュリティーソフトにも強いジャパンシステム <9758> [JQ]などが挙げられる。
そして今回、ここから大化けの可能性を秘める5銘柄を総力を挙げてリストアップ。梅雨明け後の夏の夜空に咲く大玉花火よろしく、サイバー防衛関連の全面開花を堪能したい。
【ハイパーは子会社連携で本腰、4ケタ睨む新波動へ】
ハイパー <3054> [東証2]が底値圏離脱に向け動き出した。3月につけた年初来高値610円を通過点に4ケタ大台を睨んだスケールの大きい相場が期待できそうだ。同社は中堅企業向け中心にパソコン販売を手掛けるが、その幅広い顧客基盤を生かしてサイバーセキュリティー分野に積極展開を図る方針を掲げている。セキュリティー子会社2社(リステック、セキュリティア)と連携を取りながらセキュリティー製品の販売を強化し、会社側では中長期的な成長部門として育成を進める方針。19年12月期営業利益は前年同期比19%増の4億1000万円を見込むが、第1四半期時点で進捗率は50%を超えており上振れが濃厚。20年12月期も20%以上の成長が視野に入るだけに、500円台の株価は安すぎる。
【JBCCHDは増額含みで2000円台指向】
JBCCホールディングス <9889> の1500円台は強気対処して大きく報われそうだ。7月末にマドを開けザラ場高値1730円まで買われた後調整を入れたが、ほぼマドを埋めて切り返しが有望、2000円台を目指す動きが見込まれる。同社は日本IBMとの連携が厚く、ITインフラの構築やシステム販売を展開。超高速開発の大型案件や業務改善アプリ開発などが好調なほか、クラウドや情報セキュリティー分野でも強みを発揮している。クラウド型セキュリティーをITインフラと同時提案して収益に反映させており、19年4-6月期決算は営業利益が9億2900万円と前年同期比4割増の高変化をみせた。20年3月期は29億円(前期比10%増)見通しだが上方修正される可能性がある。
【ソフバンテクは上値大、“レジリエンス”に重点】
ソフトバンク・テクノロジー <4726> の2200円近辺は絶好の買い場といえる。同社はeコマースサイトの運営受託などを含むセキュリティーに強みを持つほか、企業や官公庁向けにクラウドを活用したハイスペックな管理システムの導入で実力を発揮。ソフトバンクグループ向け開発案件も順調で収益基盤を支えている。サイバー攻撃の脅威に対し、侵入を前提として組織の継続を最優先に被害に対処して復旧する「サイバーレジリエンス」に傾注、需要取り込みが進んでいる。20年3月期営業利益は前期比19%増の30億円を見込むが、21年3月期も2ケタ増益基調が継続する公算が大きい。上値余地は大きく、昨年10月高値3310円が中期的な上値目標となりそうだ。
【ソリトンはITセキュリティー特化で存在感】
ソリトンシステムズ <3040> は7月18日に997円をターニングポイントに戻りトレンドを強めている。同社は売り上げの90%を、セキュリティー対策ソフトと、認証システム開発などを主軸としたITセキュリティー部門で占めている。悪性ドメインへのアクセスをブロックし、多層防御を強化する新サービスの提供や、サイバー攻撃を受けてしまった場合に、そのインシデントによる組織へのダメージを可能な限り最小化する「CSIRT」体制の構築・運用支援サービスなどで注目度が高い。17年3月から開始した「サイバーセキュリティ総合支援サービス」では新メニューを随時加え、バージョンアップを図り顧客ニーズの囲い込みが続く。19年12月期営業利益は前期比9.7%増の15億円を計画。
【テクマトは青空圏飛翔へ、負荷分散装置が好調】
テクマトリックス <3762> はちょうど1年前の8月初旬に2498円の上場来高値を形成しており、ここを上抜き1年ぶりの青空圏を走る展開が有力視される。ITインフラ構築で高い実力を持ち、標的型攻撃などのサイバー攻撃に対して、セキュリティー関連機能で優位性を持つ負荷分散装置に引き合いが旺盛だ。脅威の検出と可視化、セキュリティー運用を行う最上位のサービス「TPS」で企業の高い評価を獲得。特許取得済みのCDR技術を採用したイスラエル企業の無害化ソリューションの代理店販売も開始している。19年4-6月期営業利益は前年同期比58%増と急拡大した。なお、同社は経産省と東証が選定した「攻めのIT経営銘柄」において、「IT経営注目企業」に2年連続で選ばれている。
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