【植木靖男の相場展望】 ─ 10年来高値更新銘柄の威力
「10年来高値更新銘柄の威力」
●暴落“終盤期”に差し掛かる
日経平均株価は7月いっぱい、7月2日高値の2万1754円(終値ベース)を抜かんと再三再四、買い方は全力を挙げて高値突破を目指したが、それはかなわず、ついに8月に入って刀折れ矢尽きて急落している。
この下げは暴落相場といってもよい。そして目下、6月安値の2万408円の安値を巡って売り方、買い方の激しい攻防戦が続いている。
ところで、暴落相場は崖崩れと同じで3段階に分かれる。まず初期は、パラパラと木くずや小石が崖を落ちる。しかし、中盤になると一気に土砂や木が崖を滑り落ちる。株価でいえば、窓を開けて急落する。しかし、この段階から次は終盤を迎える。一見、静かになるが地盤が緩んでいるため、じわじわと崩れる。まさに大名行列よろしく、下に下にと株価は水準を下げていく。
この期間が意外に長いのだ。短くても1ヵ月は優にかかる。
では、いまはどの段階にあるのか。大雑把にいえば、終盤期に入るところとみている。
材料的に見てどうか。米中貿易戦争がこれまでの株安の背景であったが、いまや為替戦争へと戦線が拡大してきた。中国もしたたかである。1ドル=7元突破を容認している。各国も通貨安を狙っている。我が国も例外ではない。1ドル=106円処は限界とみている。この水準を死守するために公的年金が米国債を購入している、との噂もある。中国が米国債の売却をほのめかしているなか、我が国が米国債を買うのは日米ともウィンウィンであるはず。
さて、米中戦争による景気悪化を防ぐため、また、株価を意識して米国は利下げに走ろうとしている。だが、皮肉にもここへきて利下げはむしろ株安要因になってきている。当たり前である。いまの株価の位置は逆業績相場の真っ只中にあるのだ。利下げしても効果はないのも当然である。
●高まる不確実性、チャートを重視すべきとき
こうしたなか、株価は世界的な下落相場にある。ときに反発しても、なかなか買いシグナルが灯ることはないとみる。
では、いま注目されている米中貿易戦争が劇的に決着をみせたらどうか。また、なんらかの要因で金利が急騰したらどうなるか。悩みはつきない。ただ、念頭に置く必要はありそうだ。いずれにしても、あまりにいまの市場環境は不確実性が高い。材料というよりも罫線(チャート)をより重視するときのように思われる。
当面の物色はどう見るか。いまのような下げ相場でも、日々50~60銘柄の年初来高値更新銘柄がある。こうした環境下でも高くなるのは、やはり、それなりの人気、材料があるからだ。
なかでも、10年来の高値更新銘柄はより注目されてよい。おそらく、10年前に比べ企業変革が進み、時代に合った新しい製品を生み出している、または生むと予想されているからだ。
今回は、10年来の高値を更新したNEC <6701> に注目。5Gが材料か。次いで内需の陸運株の中から、出遅れの富士急行 <9010> だ。富士急ハイランドの入園料無料は大胆だ。富士登山鉄道構想も面白い。このほかでは日本新薬 <4516> 。医薬品株のなかでは出遅れたが、自社開発薬で業績を押し上げ16円増配は立派だ。
2019年8月9日 記
株探ニュース