明日の株式相場戦略=上値重いが個別勝負、不動産株に意外性
14日の東京株式市場は前日の米株高に追随して、日経平均は切り返しに転じたが2万600円台は上値も重く、売買代金をみても分かるように今一つ気勢の上がらない地合いとなっている。トランプ米政権が対中制裁関税第4弾について一部品目の発動を12月に先送りすると発表、これがリスクオフの巻き戻しを演出する材料となったが、米中摩擦に対する懸念が「再燃しては後退する」という今まで何度も繰り返されてきた光景には違いない。
トランプ米大統領は、あくまでクリスマス商戦を念頭に置いた米国消費者のための措置であることを主張、微塵たりとも中国に対しての妥協ではないということをアピールしているわけだが、株価は「米中対立の緩和」との認識で買い優勢となった。これはトランプ氏の思惑通りだろう。日替わりで“トランプ砲”が相場の波紋を変えるのはいつものことだが、これは波であって潮の流れではない。現時点で資金をマーケットに長く寝かしておくような地合いには遠く、引き続き投資する側のスタンスとして地合いを横にらみに機敏に対応していくことが求められる。
今回のトランプ砲がもたらした変化としては、追加関税先送りの一部品目として、スマートフォンやゲーム機などにマーケットの視線が集まった。アップル関連の電子部品株に物色の矛先が向いたほか、売買代金でソフトバンクグループ<9984>を押さえてトップとなった任天堂<7974>は、ゲーム機で恩恵を享受する銘柄として連想買いの対象となった。同社株は1700円近い上昇で4万円台を回復。信用取引を使った個人投資家の売り買いが活発化したもようだが、「回転のスピードは速く、個人全体では大きく売り越しだった」(ネット証券大手)という。
また、きょうの相場で目を引いたのは光通信<9435>の株価躍進だ。きょう前場取引終了後に発表した19年4~6月期決算は売上高が2ケタ増収で営業利益は前年同期比1.5倍に膨らんだ。中小企業向けに展開する光回線や電力、ウォーターサーバー、保険などの顧客契約数が増勢で収益に貢献している。好決算を評価する形で後場はしばらくカイ気配のまま水準を切り上げた。時価はITバブル期以来、19年5カ月ぶりの高値。実質的には最高値圏を駆け上がっているような状況だ。この株の特徴はとにかく売り玉が少ない点。時価総額は1兆円を超えているのだが、下手な小型株よりもよほど上値が軽い。そして“光通信ファンド”といえるくらい上場企業に投資している。保有銘柄数は現在125に及び、株価が大化けを果たした銘柄も多数あり、その含み資産が注目されている。
個別ではパソコン関連株に強いものが目立つ。前週好決算を発表したAKIBAホールディングス<6840>が26週線を足場に体勢を立て直しているほか、中低位で値動きの軽いピーシーデポコーポレーション<7618>なども動意。更に悠然と青空圏を舞うエレコム<6750>や、過去最高値に急接近のアドソル日進<3837>などもその存在を知っておきたい銘柄だ。個人投資家資金の離散が言われるなかも、静かに我が世の春を謳歌している銘柄は少なくない。内需系企業は消費増税を控え向かい風が強い、というのは一般論としてはその通りだが、個別企業ごとにその定義が当てはまるわけではない。
また、内需といえばREIT市場の強さも特筆される。市場では「マイナス金利環境下にあってREITの平均利回りは3.7%前後と高い。ここに韓国系ファンドが目をつけており、かなりの勢いで資金を投下している」(国内証券アナリスト)という。ちなみに、東証REIT指数は連日の年初来高値更新となっているが、時価はリーマン・ショック前の2007年秋口以来約12年ぶりの高値圏にある。
基本的にREITは分配金利回りに着目した買いであり、これが不動産セクターの個別株を買う動きにはなかなか繋がらないが、根元は一緒ともいえる。超低金利環境が担保されているなかで不動産株には追い風が強い。リターンリバーサルを狙うのであればこの範疇に属する銘柄が有力と思われる。目先的にはTOCビルや大崎ニューシティなど流通関連ビル最大手のテーオーシー<8841>や、小型株では関西地盤で住宅リフォームに強いウィル<3241>などを注目してみたい。このほか、直近IPO銘柄で不動産査定サイトを展開するリビン・テクノロジーズ<4445>なども面白い位置にいる。
日程面では、あすは5年国債の入札。海外では7月の米小売売上高、鉱工業生産指数・設備稼働率などの発表がある。(中村潤一)
出所:みんなの株式(minkabu PRESS)