急拡大する市場、“株高の夢”搭載する「トランクルーム関連株」を買え <株探トップ特集>
―都市部住宅の収納不足などを背景に全国で増加中、2025年1000億円規模に―
トランクルーム(セルフストレージ)が近年、全国に続々と増えている。かつてはコンテナ型のトランクルームが野ざらしとなっている光景が主流だったが、近年では遠目にはマンションのような外観の施設が増加。温度や湿度の管理に加えて、防犯カメラの配備やスタッフの配置など安全・安心をアピールすることで、若い女性層などの利用も増えている。
トランクルーム増加の背景には、都市部を中心とした住宅の収納不足などがある一方、長引くデフレでテナントの撤退が相次ぎ、空室率が高くなったビルのオーナーや地主が参入してきたことなどがあるといわれている。今後も市場の拡大が見込まれており、関連銘柄への関心も更に高まりそうだ。
●市場規模は10年間で2.5倍
日本セルフストレージ協会(東京都中央区)によると、トランクルーム発祥の地である米国では1970年代から広がりをみせ、現在では全米に5万カ所、1700万室以上が存在し、10世帯に1世帯が利用するまでに広く浸透しているという。一方、国内では80年代後半から普及し始めたが、一気に広がったのは2度の大震災以降のことで、災害の発生に備えて、家財道具や思い出の品などを預けるケースが増加した。
また、都市部を中心とした日本の住宅事情も普及に拍車をかけている。国土交通省によると、日本の新設住宅の1戸当たり床面積は18年度約80.4平方メートルで、2000年の統計より16.5平方メートル減少した。特に近年では、建築資材や人材不足に伴う建築価格の高騰を受けて、居室や収納面積を縮小する傾向にあり、都心部では30平方メートル台の小型マンションも多い。限られた居住空間を快適にしようとすると、外部に収納スペースを求めるほかはなく、トランクルームの活用が広がる。
トランクルーム業界大手で、「Quraz(キュラーズ)」ブランドのトランクルームを展開するキュラーズ(東京都品川区)の調べによると、トランクルームの店舗数は18年に約9500店舗に拡大し、ファミリーレストラン(約9600店舗)市場に肉薄。延べ室数は40万室を突破し、42万8000室に拡大した。
また、市場規模は10年前に比べて2.5倍増となる590億円へと成長した。更に25年には1000億円規模へ拡大する可能性を秘めているとしており、当面、高成長が期待できそうだ。
●大手の一角を占めるエリアリンク
トランクルーム業界には、前述のキュラーズや、「REISE BOX(ライゼボックス)」を展開するライゼ(大阪市北区)グループなど未上場企業が多いが、上場企業で大手の一角を占めるのがエリアリンク <8914> [東証M]だ。
同社は「Hello Storage(ハローストレージ)」のブランドでコンテナタイプや室内タイプのトランクルームを展開しており、19年12月期は第2四半期までに2340室を出店し総室数を9万3885室まで拡大した。ここ数年は出店ペースの加速で同事業の利益率は低下傾向にあったが、今後は稼働率の向上で収益性も改善が見込まれている。
また、7月25日には19年12月期連結業績予想について、ストレージ流動化事業(受注による出店、土地付きストレージの販売)などの好調から営業利益を従来予想の26億9400万円から28億円(前期比0.6%増)に上方修正しており、足もと業績も堅調だ。
パルマ <3461> [東証M]は、トランクルーム業界向けに、申込受付や入金管理などの運用業務の受託と滞納保証を付加したアウトソーシングサービスを提供。このほか、投資家や事業者向けに「Keep It(キーピット)」ブランドのトランクルーム物件の開発・販売も手掛けている。初期開発物件は1施設50~60室で個人へ販売していたが、近年では機関投資家の資金流入により150~200室の施設の開発が増えており、今後も150室以上の施設を中心に開発を進めるとしていることから、業績へのインパクトも大きくなっている。
業績も好調で、第3四半期累計(18年10月-19年6月)単独決算では、営業利益は前年同期比31.7%増の1億2000万円に拡大。19年9月期通期は同4億1000万円(前期比25.9%増)を見込んでいる。
パルマと組んで「Keep It」ブランドのトランクルームを開発しているシーアールイー <3458> もセルフストレージの開発に力を入れている。同社のセルフストレージ事業は、合弁会社の日本パーソナルストレージが施設管理を行うスキームで、管理面積が拡大すれば業績への貢献度も高まる。また、シーアールイーでは、セルフストレージファンドの組成も計画しており、ファンドのプロパティマネジメントも合弁会社が行う予定だ。
●三協フロンテは一時滞在型なども展開
三協フロンテア <9639> [JQ]は、「U-SPACE(ユースペース)」のブランドでトランクルームを全国に展開している。自社設計・自社生産のユニットハウスを利用しているのが特徴で、一時滞在型などの新たな取り組みも行っている。第1四半期(4-6月)連結決算は、営業利益が前年同期比17.9%増の14億400万円と2ケタ営業増益と好調で、20年3月期は同67億円(前期比10.6%増)を見込んでいる。
少し変わったところでは、イオン <8267> がグループ会社を通じてレンタル収納スペース事業を展開している。一般的なトランクルームやレンタル倉庫とは異なり、ショッピングセンター内にあるため空調や防犯対策が完備されているのが特徴で、買い物ついでに気軽に利用してもらえるようになっている。現在8店舗を展開しているが、19年内に更に2店舗を増やす予定で、10店体制を目指すとしている。
このほか、法人向けが中心だが、三菱倉庫 <9301> 、東陽倉庫 <9306> 、中央倉庫 <9319> などもトランクルームを展開しており、関連銘柄として注目したい。
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