すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 今亀庵さんの場合-最終回
40億円達成には肉食系の得意技も貢献! ストップ高・飛び乗り作戦とは
登場する銘柄
日本マイクロニクス<6871>、アステリア<3853>、さくらインターネット<3778>、アスコット<3264> など
金融機関出身のフリーライター。株式、投資信託、不動産投資などを中心とした資産形成に関連する記事執筆を主に担当。相続、税金、ライフプラン関連も数多く執筆。
リーマン・ショック直後の2009年から、退職金から2000万円をREITに投入してわずか1年で億り人に。その後、割安日本株に集中投資、アベノミクス相場の追い風もあり保有資産を最大40億円(不動産を含む)にまで膨らませた「すご過ぎる」腕の持ち主。運用資産を200倍に膨張させたのは退職後だが、投資は大学生時代から経験を積み重ねてきた超ベテランの投資家だ。株で稼いだ利益で10億円の不動産を購入後も日本株投資を続け、足元の運用資産は20億円になる。
8月に入って日本列島は猛暑が続くが、日本株の方は日経平均株価が直近高値から数日で8%近く下げるなど背筋が寒くなるような状況が襲うことに。投資意欲は夏バテを通り越して床に伏せるくらい弱ってくるが、今亀庵さん(ハンドルネーム)は「いかなる時期も大きく上がる要素のある銘柄は潜んでいる」という考えの下、相場から離れることはしない。どんな局面でも基本は長期を見据え、フルインベストメントで攻めていく。
どんな相場環境であろうが、対応できるようにと今亀庵さんが手札の中に加えている投資戦略がある。それは「ストップ高・飛び乗り」作戦――。これまで紹介してきた割安成長株狙いの印象が強いと、思わず「え!」と叫んでしまう手法のように感じる人もいるだろう。だが「ストップ高・飛び乗り」作戦は、割安成長株狙いと同様に、「常識を疑う」という今亀庵さんの根幹の部分では変わらない。
例えば、興味を持っていた銘柄がストップ高をつけた場合、「今から手を出しても遅い」「短期で急騰した反動が来る」と考えるのが一般的で常識的だろう。だが今亀庵さんは自身の分析でいけると思った場合は、強気で買い向かう。
長期にわたる量的緩和で相場の底上げが進む中、従来型のバリュー戦略が徐々に効きにくくなりつつある。それまでの成功体験に支配されていたら、リターン獲得の機会を損失してしまう。その打開策の1つが株価モメンタムに乗ること。常に創意工夫を続ける今亀庵さんの姿を、この最終回で紹介していこう。
冷えた相場を横目に何億円も稼ぎ出した成功4連発
今回のテーマである「ストップ高・飛び乗り」作戦とは、文字通り株価が急に動意づいてストップ高(以下、S高)、またはそれに近い状況まで急騰した銘柄に飛びつく投資法だ。この方法でもいくつか成功例はあるのだが、特に際立ったのが2013年後半から16年中盤にかけて4連発で資産拡大につなげた快挙だ。
具体的には半導体の計測機器や検査装置が主力の日本マイクロニクス<6871>、システム開発のアステリア<3853>、データセンター運営大手のさくらインターネット<3778>、マンション開発・分譲のアスコット<3264>がある。
これらの銘柄の急騰が寄与し、特に15年夏に起きたチャイナ・ショック等の影響が続き、日経平均株価が高値から25%程度もの下げがあった16年でも、全体の不調をよそに今亀庵さんは約6億円にも上る利益をたたきだした。
これも「こんな時期は伸びる銘柄など見つからないだろう」とか、反対に「急上昇した銘柄に後から飛び乗っても遅い」「反動売りが出そう」という多くの人が抱えそうな思い込みにとらわれず、自分の考えを構築してこれを信じた結果と言えそうだ。
■日経平均株価の週足チャート(2015年1月~16年12月)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
「ムリ」と思わず、とことん買い注文を出す
では、いったいどんなやり方でS高・飛び乗りを成功させるのか。
まず今亀庵さんが投資で行うルーティンを紹介すると、基本は中・長期投資を目指しつつもトレード自体は毎日行う。実際にパソコンの前に座って手を動かすのは、午前中の前場の時間帯。
日々値動きなどを監視するのは、保有銘柄を含めた200銘柄程度が対象だ。『株探』などのインターネットの株式情報やテレビの情報番組等で日々のニュースを追いながら、保有銘柄のウエート調整などを行っていく。
こうして常に臨戦態勢を築いた状態で、特に急に動意づいてS高となるような銘柄も探していくのだ。ただし、S高・飛び乗りを成功させるには、2つの乗り越えるべき壁がある。
1つは、そもそもS高銘柄に買い注文を出して約定させること自体が難しいことだ。S高とは強い買い材料が出た直後に買い注文が殺到し、銘柄ごとに決められた値幅制限いっぱいまで株価が急上昇すること。通常は株価がS高をつけるとその水準で張り付くことが多いので、買い注文を出しても簡単には約定できないケースがほとんどだ。
それでも今亀庵さんは、「買うぞ」と決めた以上は諦めずにトライする。S高を付けた銘柄でも、その後に利益確定売りが出て瞬間的に株価が下がるタイミングもあるため、注意深く相場を眺めながらそのわずかなスキを狙うのだ。
あるいは、S高の当日は約定できなくても、次の日、場合によってはその次の日までも買い注文を出し続けて飛び乗りを狙う。ここは注意力と粘り強さ、スピードと実行力が求められる場面だ。
S高後に株価が伸び続けるヒット銘柄は1年に1つあるかないか
もう1つは、材料が出てS高になったとしても、そのまま株価が伸びていくとも限らず、反対に急落のリスクに巻き込まれることもある点だ。今亀庵さんによると、経験上、S高後にも大きく伸びていくヒット銘柄は「1年に1つあるかないか」。到底多いとは言えない確率だという。
それでも果敢にトライし続けるのは、ヒット銘柄に遭遇すると、たった数カ月で何倍や十数倍にもなる「ハンパない」株価上昇を展開するからだ。「飛び乗りをした5回のうち1度くらいが成功して、全体として勝てばよい」と割り切って臨んでいる。もちろん、アテが外れて株価が急落することもあるので、それも想定し即座に逃げる体制も講じておくのが前提となる。
とはいえ、いくらすぐさま撤退するよう取り組んだとしても、あまりムダうちが多いと損切り貧乏になってしまう。そのため今亀庵さんは、S高銘柄に見境なく手を出すことはしない。最近、ツイッターなどのSNS(交流サイト)を利用して、いわゆる「買いあおり」によって人為的に株価が上げられる仕手株の類と思えるものも多く見られるが、こうしたものはスルーしていく。
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