明日の株式相場戦略=アルゴ先物買いで底上げ、テーマ物色はAIと5G

市況
2019年9月5日 17時43分

きょう(5日)の東京株式市場は日経平均が一時500円を超える上昇でフシ目の2万1000円台を回復、8月下旬の波乱相場の余韻を引きずっていた投資家にとって、前方の暗雲がいきなり消し去られたかのような、電撃的な戻り足を演じた。売買代金も2兆4000億円台まで膨らみ、留飲を下げた市場関係者も多かったと思われる。

香港政府が逃亡犯条例の改正案を正式撤回したことや、ハード・ブレグジットに対する懸念の後退、米中両国の協議が10月再開の見通しと伝わったことなどが、株価を強く押し上げる格好となった。しかし、これがサプライズを伴うようなポジティブ材料であったかといえば、いずれも該当しない。市場では「ニュースのヘッドラインに反応する高速アルゴリズム売買の作動が背景にあった」と指摘する声もあったが、これが的を射ているようだ。「米中協議再開」となれば、文脈を読むことなく買いのスイッチが入るのが、高速売買の真骨頂でもある。実需の買いで上がった相場ではないことは分かる。先物へのショートカバーオンリーといってもよい急騰劇で、その主役はアルゴという構図だ。これに積み上がった裁定売りポジションが化学反応を起こして上昇気流が生じた。

株価を押し上げた3つの要因を改めて考えてみる。建国70年を控えるなか、香港デモを鎮めることは中国政府にとっては喫緊の課題で、これが「逃亡犯条例」改正案の正式撤回だった。しかし、民主派が提示する5つの要求のうちの1つであり、これで幕引きとはいかない事情がある。一方、英国の“合意なき離脱”については英議会下院が4日に離脱延期法案を可決、法案は上院で成立し離脱は先送りとなりそうだが、目先懸念の後退であって決して回避ではない。そして、米中貿易協議が10月に再開されるとの報道も、これは少し角度を変えてみれば、9月中に調整がつかなかったから「10月に延期する」という話で、むしろ米中対立の見地では悪材料といってもよい話。すべてが“先送り”という状況下、波乱の火種は消えていない。

個別を見れば主力株全面高の傍らで中低位株の水準訂正の動きは続いている。テクニカル的には、日経平均2万円ラインを下限とするもみ合い圏往来から2万1000円を下限とするもみ合いにボックスが切り上がったと見ることもできるが、ここから主力株で値幅を求めるよりは、比較的価格帯の低い銘柄に照準を合わせる方が実践的な選択肢といえそうだ。テーマとしては国内基地局整備が本格化する5G。そして「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」第2号立ち上げで風雲急のムードが漂い始めた人工知能(AI)関連に着目。両テーマは融合して付加価値を生む余地があり、新たな視点で物色の流れが形成される可能性がある。

AI関連では低位の穴株としてミナトホールディングス<6862>が動意含みとなっている。同社は電子機器メーカーでメモリーモジュールやデバイスプログラミングなどを展開、AKIBAホールディングス<6840>とは提携関係にあり業容を広げている。AI分野にも踏み込んでいる点はポイント。グループ会社を通じて東工大発ベンチャーと提携しインテリジェント・ステレオカメラ事業を推進しているが、今年5月にはAIベンチャーのアラヤ(東京都港区)と提携し、ディープラーニング技術とインテリジェント・ステレオカメラ技術を基にしたAIソリューション開発を進めている。中低位株物色が活発な中で株価300円台のAI関連は値ごろ感がある。

また、5G関連では引き続きsantec<6777>の押し目は注目される。通信向け主力のソフト開発会社で5G特需が期待されるアイ・エス・ビー<9702>も底値圏から立ち上がってきた。いずれも中低位株の範疇からは外れるが、人気度が高い銘柄だ。

このほか、システム構築及び管理業務を手掛け、顔認証関連としても注目度の高いネクストウェア<4814>や、直動ベアリングメーカーで半導体製造装置向け制御装置も手掛けるヒーハイスト精工<6433>などは中低位の出遅れ株として妙味が感じられる。

日程面では、あすは7月の家計調査、7月の景気動向指数(速報値)が発表される。海外では8月の米雇用統計が焦点となる。(中村潤一)

出所:みんなの株式(minkabu PRESS)

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