【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─市場の関心は米決算に移るか?
「市場の関心は米決算に移るか?」
●対中制裁関税拡大の行方が焦点
今週の日経平均株価は、米中閣僚級協議に世界の関心が集まる中、関連する報道に振らされる相場展開となった。事前に行われた次官級協議で進展がみられなかったという関係者の見方が伝わり売りを誘う局面もみられたが、初日の会合についてトランプ大統領は「非常にうまく行った」と述べたほか、11日(日本時間12日)にはトランプ大統領が中国副首相と会談する予定であることを明らかにしたことで、先物主導で買い戻しを誘った格好となった。これにより日経平均はここ最近もみ合ってきた25日線と75日線に挟まれたレンジを上方に突破し、10月初旬の急落局面で空けたマドを埋めてきている。米中閣僚級協議の進展期待を背景に、弱気に傾いていたポジションの巻き戻しが株価を押し上げたのであろう。
来週については、まずは米中閣僚級協議の暫定的な合意に伴い、15日に予定されている米国による対中関税の引き上げが先送りされるかが注目される。現段階ではトランプ大統領と中国副首相との会談を経て、先送りされるとみられている(11日執筆時点)。予想通りなら材料としては“織り込み済み”も意識されるが、リスクオンの流れによって一段の買い戻しを誘う可能性もあるだろう。もっとも、予定通りに引き上げられた場合には、失望につながる。
また、足元の騰落をみても、下落局面で値上がり数が値下がり数を上回り、上昇局面で値下がり数が上回るなど、リバランス中心である。全体の方向感は依然として掴みづらい状況であるため、225型、TOPIX型といったインデックス売買の流入を見極める必要はある。そのほか、日本では三連休に接近・上陸する大型台風の影響が警戒されており、首都圏の被害の大きさによっては、海外勢の資金流入を手控えさせよう。
新興市場ではワークマン <7564> [JQ]への資金流入が継続しており、時価総額ではマクドナルド <2702> [JQ]を超えてきている。ただし、ワークマンに資金が集中することにより、中小型株ファンドなどはワークマンの比率を高める一方で、これまで組み込まれていた時価総額の大きい銘柄等の比率を下げてくるとみられる。これが中小型株全体としては弱気基調につながるため、時価総額の大きい中小型株については慎重になりやすいだろう。
物色としては、来週から米国で決算発表が本格化するため、米企業の決算の影響を受けやすくなる。ゴールドマンサックスなど主要金融株の決算が相次ぐため、追加利下げの思惑にもつながりやすいところである。
国内では安川電機 <6506> が10日に決算を発表し、併せて通期計画を下方修正している。修正幅はコンセンサスの範囲内であり、週末の下げ渋りからみるとアク抜けも意識されやすい。他のFA関連などへの買い戻しを誘うことも考えられる。
また、今週はノーベル化学賞の日本人受賞を受けてリチウムイオン電池関連の一角に動意がみられた。来週は「CEATEC 2019(シーテック 2019)」が15日から幕張メッセで開催されることもあり、「IoT」や「5G」関連などの動意が意識されそうだ。
そのほか金融庁は今月初旬に、東京証券取引所の市場再編に関する研究会の第3回会合を開いている。年内の報告書取りまとめを目指していることもあり、ここ最近目立ってきている東証1部昇格に向けた動きも決算が近づくにつれて増えてきそうである。
●今週の活躍期待「注目5銘柄」
◆弁護士ドットコム <6027> [東証M]
日本最大級の法律ポータルサイト「弁護士ドットコム」を運営する。また、身近な生活トラブルへの対処方法を解説する「弁護士ドットコム LIFE」、税理士相談・検索が行える「税理士ドットコム」、クラウド型の電子契約サービス「CLOUDSIGN」を展開。10月28日に 2020年3月期第2四半期決算の発表が予定されている。なお、足元の第1四半期業績は、売上高・各利益項目が前年同期比および前四半期比でともに増収増益で着地しており、通期計画に対する営業利益の進捗率は35%と順調な進捗だった。株価は5月末高値5830円をピークに調整をみせていたが、8月末安値3620円をボトムに足元ではリバウンド基調が継続。
◆精工技研 <6834> [JQ]
光ディスク成形用の精密金型と医療・バイオ分野向け精密成形品、光通信用部品の製造・販売が中核。車載カメラや監視カメラ等の各種レンズの開発を手掛けている。また、5Gに使用する周波数帯の中でも 28GHz帯を測定することができる光電界センサの開発に成功しており、5G関連銘柄の一角として位置づけられる。株価は7月10日3350円を高値に調整が続いているが、足元では25日移動平均線および75日線を突破してきている。
◆キャンディル <1446> [東証M]
建物のライフサイクル企業として、内装建材、家具などに発生した傷や不具合を、部材交換することなく修復(リペア)するサービスを展開。住環境向けでは、建築中の住宅の各種検査、内覧会の設営から実施など。商環境向けでは、商業施設の内装仕上げ、オフィス移転や内装変更、ホテルの家具取り付けや家具組み立てなどを提供する。戦略的にM&Aを実施。8月には東証1部への市場変更を目指して立会外分売を実施している。株価は8月19日高値894円をピークに調整をみせているが、足元では650-800円処での保ち合いを形成。
◆オーウエル <7670> [東証2]
塗料、表面処理剤、塗装関連機器・設備などの塗料関連事業と自動車向けカスタムICの開発、距離検知センサ、温度センサ、自動車用コネクター、LED照明などの電気・電子部品事業を展開する。2019年3月期は従来予想は若干の未達ながらも増収増益で着地し、純利益は過去最高益を達成。自動車メーカーの生産減の影響はあったが、大型塗装設備や自動車部品メーカー、鋼材向け塗料販売が増加した。電気・電子部品事業においては車載向けモジュール、カーナビ向けソフト販売が好調。株価は7月19日高値718円をピークに調整が続いているが、620円処をボトムに足元ではリバウンド基調にある。
◆バンク・オブ・イノベーション <4393> [東証M]
スマホ向けゲームアプリの開発、運営を展開。グーグル、アップルが運営するプラットフォーム「Google Play」「App Store」を通じてゲームアプリを提供している。主力ゲームの「ミトラスフィア」は累計600万ダウンロードを突破。「幻獣契約クリプトラクト」は累計1200万ダウンロードを突破している。「幻獣契約クリプトラクト」は8月から台湾・香港・マカオで配信を開始。現在は新作2タイトルを開発中であるほか、2つの新規事業を企画・試作中である。株価は9月13日高値3670円をピークに調整しているが、上昇する25日線レベルが心理的な支持線として意識されている。
2019年10月11日 記
株探ニュース