イランにはバランス感覚がある、ソレイマニ司令官殺害から見る中東力学【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

経済
2020年1月14日 16時41分

イランの行動があからさま(ニュースになりやすい派手な動き)になるかもしれないが、紛争による犠牲者の規模が今までと変わらない、むしろ減るという可能性も捨てきれない。核関連の合意も「破棄」するような行動をとるものの、核兵器所有のレッドラインの一つであるNPT脱退までいかないのだろう。イランにはバランス感覚があるため、相手が全力を挙げてつぶしにかかるための口実、先制したというふうに見られる致命的なことをやらないということが理由だ。最低でもそのような事態は、自分たちでコントロールできる範囲で起こさせないと考えている。

1月8日の弾道ミサイル攻撃も、一時的な米国に対する平手打ちで、イランのバランス感覚が見られる。犠牲者を一人も出さないように狙いを定めたと思われる他、これ以上のことがなければイランも追加攻撃をしないという書簡を送っている。

同日、ウクライナ国際航空752便が撃墜された。当初、撃墜についてイランが関わっていると思われることについて、イラン当局は撃墜について事実無根、欧米プロパガンダを通じての印象操作と激しく反発したが、1月11日に一転して革命防衛隊(国軍ではない)の防空関連の部隊が撃墜したことを認めた。これは現段階において推測の域を出ないものの、大まかにまとめれば、強硬・保守派は撃墜を認めれば自らの正統性が揺らぐのを危惧したため認めないという姿勢であったことに対して、最高指導部あたりが誤って撃墜したということが報復しなければならないという面子をダウングレードするための緊張緩和の言い訳になると踏んで認める方針を通したと見られる。対米強硬派の理屈と、あくまで戦略的な忍耐と出来うるかぎり米国を刺激しないで派手なことを控えるほうがよいと考える理屈とでは、後者が勝った場面と推測する。ここでも、イランのバランス感覚と、今後の中東戦略の大枠(影響力の拡大を模索しつつ、反撃も戦略的な忍耐期間を経てから米国を刺激しない範囲で行う方針)が見られたと思われる。

地経学アナリスト 宮城宏豪

幼少期からの主にイギリスを中心として海外滞在をした後、大学進学のため帰国。卒業論文はアフリカのローデシア(現ジンバブエ)における経済発展と軍事支出の関係とその周辺の要因についての分析。大学卒業後は国内大手信託銀行に入社。現在、実業之日本社に転職し、経営企画と編集(マンガを含む)も担当している。歴史趣味の延長で、日々国内外のオープンソース情報を読み解いている。

《SI》

提供:フィスコ

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