すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 合金さんの場合-第2回
2年で6倍化のお宝株選び、そのマニアックな調査法を丸裸に
登場する銘柄
投資歴18年で、資金を追加しながら3000万円の元手を約2億円に増やしてきた。本人いわく「好きなことに没頭するうち資産が6倍に増えていた」と、お金を稼ぐことより、むしろ知られざるお宝銘柄を発見することに喜びを感じるという。好みのお宝銘柄は、「一見Aカップのように見えて、実Fカップ」。ぱっと見ただけでは通り過ごしてしまいがちだが、じっくり見極めれば大きな魅力を秘めている銘柄を、独特のたとえで表現する。そのために頭だけではなく、足も使って独自の調査も取り組む。
最近は家族との時間を優先するため、勤めていた会社を辞め、不動産投資を含めた専業投資家に転身。不動産投資では保育施設を建設して運用。仕事は辞めても、投資家であるより、社会貢献につながる事業家でありたいという気持ちが、不動産をポートフォリオに加えた理由の1つだ。
「風が吹けば桶屋が儲かる。その銘柄についての様々なことを細かく調査して、この『風から桶屋まで』のプロセスをしっかり把握しておきたいんですよね。言い換えればパズルを解くための設計図を頭に入れる、ということでもあるかな」
今回登場の合金さん(ハンドルネーム)は、前回の記事で紹介しているように、目に留まった銘柄はそれを取り巻く業界を含めて、ともかくありとあらゆる手段を繰り出して調べ上げるやり方をする。
IR(投資家向け広報)資料の読み込み、IR部門への問い合わせはもちろん、資料を基に売り上げ原価を試算したり、業界団体の有料メルマガ会員になったり、はたまた現場に足を運んで聞き取り調査をするなど、「そこまでやるの」というレベルまで調べつくす。
どうしてそんなに情熱をもって深い調査ができるのか、時にはムダな作業になることはないのか――。そんな疑問を持って合金さんに問うと、冒頭のような答えが返ってきた。
――確かに、時間を掛けて徹底的に調べ上げても、必ずリターンを獲得できるわけではない。しかし、惚れ込んで投資している企業に何かサプライズがあった時、「風から桶屋まで」の仕組みを知っていると、材料が株価にとってプラスでもマイナスでも、どちらの要素であっても的確な対応ができる。そして何より人より先に的確な予想を立てられ、先回りができる――
今回は前回のサニックス<4651>に続き、合金さんの名前がつくきっかけにもなった新報国製鉄<5542>の例で、マニアックとも言えそうな銘柄深掘りの考え方を探っていく。
「ほんまかいな」と感じた上方修正の信憑性をとことん調査
新報国製鉄は合金さんのかつての主力銘柄。同社の主力ビジネスは低熱膨張合金や半導体向けステッパー用部品などの製造だ。直近5年ほどの週足チャートを見ると、同社が大きく株価を伸ばした時期は主に3回ある。
1回目は2014年、2回目は16年の前半、そして3回目は17年の後半になる。合金さんが同社株を最初に投資したのは15年の11月。それによって先の2回目と3回目の株価上昇で大きな利益を獲得するのに成功した。
■新報国製鉄<5542>の週足チャート
チャートを見てもわかるように、2回目の上昇後に株価は半値まで下落したり、17年後半の上昇は急激だったりした。こうした株価の変動に応じて、利益確定を段階的に実施しているため、もちろん魚のしっぽから頭まで完璧に利益をさらったわけではない。
しかし、買い出動後、2年のうちに保有株が最高6倍まで膨らむ好成績を打ち出し、この大きなうねりにうまく乗ることはできている。では、どうしてこんなお宝株を発掘できたのか。
そのきっかけになったのが、15年11月に発表された業績予想の上方修正だ。15年12月期第3四半期の決算発表で、連結営業利益の通期予想を4.2億円から5.8億円と前回予想を40%近く上回る数字を公表したのだ。
■新報国製鉄<5542>の2015年12月期決算の上方修正内容
その内容を見て、合金さんは思わず「ほんまかいな」と発したという。よくよく資料を読んでみると、まず第3四半期の連結営業利益は約3億円と昨年実績を12.6%も下回るという振るわない結果だった。
上方修正前時点の通期営業利益は前期比1%増と横ばいであることから、第3四半期時点での進捗率は昨年よりも悪化していることになる。にもかかわらず同社は通期予想を上方修正したため、よくよく計算すると、同社は第4四半期のみで、第3四半期までの累計額とほぼ変わらない3億円近い営業利益を上げる、ということになる。
■新報国製鉄の2015年12月期第3四半期決算の抜粋
同社の売上高は通期で50億円に満たない水準の中で、第4四半期決算に3億円近い営業利益を上げるということは、同四半期の営業利益率は20%近い水準になる計画だ。ちなみに前年第4四半期の営業利益率は7%だった。
合金さんは、本当にこの修正予想が達成できれば大きな反応がありそうだと考え、早速、同社の深掘り調査を開始した。結果的には「これはいける」という確信に至り、同年11月に買い出動した。
■『株探プレミアム』で確認できる新報国製鉄の過去20四半期の業績推移
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