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すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 合金さんの場合-第3回

特集
2020年1月24日 13時00分


集中し過ぎてリーマンでは元本1000万円割れ、そこから進化した集中投資の技

登場する銘柄

ミクシィ<2121>、アールシーコア<7837>

文・イラスト/福島由恵(ライター)、構成/真弓重孝(株探編集部)

【タイトル】合金さん(ハンドルネーム・40代・男性)のプロフィール:
投資歴18年で、資金を追加しながら3000万円の元手を約2億円に増やしてきた。本人いわく「好きなことに没頭するうち資産が6倍に増えていた」と、お金を稼ぐことより、むしろ知られざるお宝銘柄を発見することに喜びを感じるという。好みのお宝銘柄は、「一見Aカップのように見えて、実はFカップ」。ぱっと見ただけでは通り過ごしてしまいがちだが、じっくり見極めれば大きな魅力を秘めている銘柄を、独特のたとえで表現する。そのために頭だけではなく、足も使って独自の調査も取り組む。

最近は家族との時間を優先するため、勤めていた会社を辞め、不動産投資を含めた専業投資家に転身。不動産投資では保育施設を建設して運用。仕事は辞めても、投資家であるより、社会貢献につながる事業家でありたいという気持ちが、不動産をポートフォリオに加えた理由の1つだ。


第1回目の記事を読む

第2回目の記事を読む

「好きなことに没頭するうち資産が6倍に増えていた」という合金さん(ハンドルネーム)も、本コラムで紹介してきたすご腕たちと同様、億トレの称号を得るまでの道のりは、平たんではなかった。

2008年秋のリーマン・ショックの時期には、一時5000万円まで膨らんだ運用資産を2000万円になるまで溶かしてしまったのだ。投資元本は約3000万円だったので、暴落によって利益どころか、元手に1000万円の穴を開けるほどの大打撃を食らってしまった。

これほどのやられ方をすれば、凹んで投資から撤退しても不思議でははない。だが、合金さんは利益拡大を追求する株式会社への投資は、長期で構えていれば「必ずリターンが得られるもの」という信念を当時から持っていた。

この頃は、30代に入ったばかり。凹みを取り戻して、さらにまた利益を増やす時間もあると楽観していた。さらに、仕事が超忙しかったこともあり、投資の失敗を深刻に受け止める暇がなかったことも、不幸中の幸いだった。

これらもあり、投資から身を引くことは微塵も考えず、好きな銘柄研究に没頭しながら、自身の投資スタイルがもたらす弱点の克服に努めてきた。今回はその進化の内容を見ていこう。

天国から地獄に突き落とされた一点買い

100年に1度と言われる大暴落を引き起こしたリーマン・ショックに襲われれば、プロ・アマを問わず投資家にとっては "損を出して当たり前"の局面だった。とはいえ合金さんが元本割れするほどの状況に陥ってしまったのは、極端な集中投資にあった。

第2回までの記事で紹介したように、合金さんは投資で儲けるよりも、好きになる銘柄探しに楽しみを求めてしまうタイプ。儲けることに関心が強ければ、リスク分散の観点から複数の銘柄に資金を振り向けるケースが多いのだが、当時の合金さんはある銘柄をほぼ「一点買い」していた状況だった

合金さんが当時、惚れ込んでいたのが、東証マザーズに上場してまもない某新興IT企業。自身もこの会社の製品を利用し、その質の高さを実感していた。また同社が提供するコンサルテーションが優れていることについて、仕事の関係から熟知していたことも影響している。

「今後、間違いなくこの会社はブレークするぞ」と、友人に勧めたほどの入れ込みようだった。それだけではない。また、当時は内緒だったが、その銘柄の購入資金に、共働きをしていた妻が管理するお金も注ぎ込むほどに。調子に乗って購入資金を膨らませるうちに、いつの間にか「一点買い」状態になっていた。

最初はこの「一点集中作戦」が追い風になり、株価は合金さんの期待を上回る勢いで上昇していった。みるみるうちに運用資産は"億り人達成までの一里塚"、5000万円に到達した。まだ30歳になる前で、「人生って意外と楽勝かも」と感じてしまうほどウハウハ状態になっていた。

ところが、それはつかの間の喜びに。購入し始めてから1年経つか経たないかのうちに、同社の業績は急激に悪化、株価もそれまでの急騰状態から逆回転していく。そこにリーマン・ショックのダメ押しを食らった。同社株の購入を勧めた友人も、同時に大損に巻き込まれたのは言うまでもない。

資産拡大のあゆみ

学生時代にもダイヤルQ2を調子に乗って使い過ぎ、高額の請求書が届く

合金さんが1つのものにハマって、お金で危ない目に遭ったのは、実はこれが初めてではなかった。投資とは関係ないが、合金さんが学生時代だった1990年代、当時流行った情報サービス「ダイヤルQ2(以下Q2)」にのめり込んだ結果、高額な請求書が手元に届く羽目に。

覚えている人もいるだろう。合金さんがのめり込んだQ2 は、まだインターネットが一般的になる前に、さまざまな情報を手軽に得られる手段とし脚光を浴びた。情報料は有料だが、NTT東日本もしくはNTT西日本が情報提供会社に代わって徴収する。利用者からすれば、NTTの回線を契約してさえいれば、後はダイヤルを回すだけだった。

そんなQ2は、そのお手軽さゆえの問題も起きていた。情報料は時間に応じて課金される従量制のため、長く聞けばそれだけ利用料金が高くなる仕組み。またQ2で提供されていた人気の情報サービスの中には、占いや人生相談のほかにアダルト関連があり、親が知らないうちに未成年者が利用して、高額な利用料金を請求されるケースが頻発、社会を騒がせる事態になる。

合金さんも、このQ2の魔力についつい引き込まれてしまった1人。ある月に、5万円もの代金が記載された請求書が届いた。高額の料金を目の当たりにして、さすがに「これでは今後の生活が破産してしまう」と目が覚める。

危機感を抱いた合金さんは、Q2を利用できなくしてもらうためにNTT東日本の窓口に出向く。その決断と行動によって、これ以上の無駄遣いを食い止めることができた。

ささいな笑い話に聞こえるかもしれないが、合金さんがリーマン・ショックで受けた痛手から集中投資のスタイルを進化させていく上では、このQ2の経験を教訓にしている。自分は、のめり込んだら、後先考えずに、お金を注ぎ込んでしまいやすいという弱点があることを再認識し、"自分サーキットブレーキ"を掛けるような工夫を組み入れ始めている。

2008年に2000万円に減ってしまった資金を、足元ではその10倍の2億円超にまで含ませたのには、惚れ込んだ銘柄に集中投資するスタイルは維持しつつも、そのスタイルを進化させたことが貢献している。

それは、

① これまでの2回の記事で紹介したように、「そこまでやるの」となるまで調べ尽くす

② 一方でどんなに調べようが、外部の人間ができる調査には限界があるとわきまえ、そんな不確かな情報で特定の銘柄に資金を集中させるのはリスクがあると認識する

③ 自分の性格の弱点を踏まえて、日本株の集中投資戦略に変化を加える

④ 日本株に資金をつぎ込みすぎないように、敢えて流動性の低い資産に一部のお金を流す

――といった進化を遂げてきた。①についてはこれまでの記事で紹介してきた。今回は②~④について見ていく。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

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