明日の株式相場戦略=再び動き出す夢追い相場、材料株の新トレンド
きょう(28日)の東京株式市場では日経平均株価が続落となったが、後半下げ渋る動きをみせた。中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、中国の産業集積地にダメージを与え、同国にサプライチェーンを有する日本企業にとっても影響は免れないとの思惑が株価を押し下げた。しかし、意外に下値は底堅く日経平均は2万3000円台を割り込むことはなかった。中国政府が春節の大型連休を延長したことが、売り方の口上に弾みをつける格好のネタとなったが、そうしたネガティブな思惑に対してもマーケットは冷静に受け止めるムードが出てきている。為替市場ではドル安・円高が加速するような状況になく、それが悲観シナリオへの急傾斜を防いだ意味もある。
新型肺炎に感染した患者数のカウンターがリアルタイムで回り続けることは、事後確認的要素が強い現在の状況では避けられない。しかし、それもいずれ収束する。悪材料が生じても相場はそれを織り込むまでが苦痛なのであって、時間軸が進めばその痛みにも慣れ仕切り直す勇気が生まれる。この手の悪材料は、要はマーケットがどこで腹を括るかという問題だ。現時点ではまだ全体株価は下値を出し切っていないかもしれないが、後々に今年を振り返れば「あの時は絶好の買い場提供場面だった」と語る時が来る可能性は高い。
『ガルガンチュア物語』で有名な、かのラブレーいわく「待つことのできる者はすべてがうまくいく」。今は上昇相場のインターバルであり、意中の銘柄を仕込む好機という見方もできる。したたかな心を持つことは技術にも勝る投資の重要項目である。
きょうは、前日にストップ高の嵐となった“新型コロナ関連銘柄”はその多くが利益確定の売りに晒される格好となった。これも当然といえば当然で患者数が拡大している間、どこまでも上昇し続けるということはあり得ない。ツートップ銘柄の川本産業<3604>と中京医薬品<4558>はいずれも値幅制限上限で買い物を残して引けたが、ここでも最強銘柄につくことが戦略的に有効であるということを証明した。川本産業は7日連続ストップ高、中京医薬は5日連続のストップ高だ。ただし、これも反転してウリ気配で値がつかなくなるというリスクと常に隣り合わせであることは肝に銘じておく必要はある。
全体的にみて、強さが際立ったのはソフト開発・システムソリューション関連。ニーズウェル<3992>、東海ソフト<4430>、システムインテグレータ<3826>、クレオ<9698>、クエスト<2332>など。上方修正好感の両毛システムズ<9691>も忘れてはならない。
目先注目される個別ではメディア工房<3815>の動きがいい。株価は400円台前半での底練りを経て動兆著しいが、時価近辺はまだ初動といえ、全体の地合いに引きずられない銘柄ということもあって一服場面は狙い目となりそうだ。スマートフォンやパソコン向けに占いコンテンツなどを配信、越境ECや医療ツーリズムのテーマに乗るほか、VR関連としての切り口もある。VRでは独自開発のリアルタイム実写立体動画撮影システムに定評があり、直近ではフジテレビへの技術協力という形でコラボレーションしている。越境EC事業としては、子会社を通じて中国消費者向けに一般用医薬品や化粧品を展開しており、訪日客消費に逆風が強い今の環境はむしろ商機につながる。
また、音声合成エンジンや音声合成ソリューションを開発するエーアイ<4388>も面白い。資本業務提携による業容拡大に積極的で、研究開発に重心を置いているだけあって将来への成長シナリオに期待が大きい。1月23日に2205円で戻り高値を形成、その後は調整色をみせているがきょうは陽線で2000円台を回復しており、再び5日移動平均線をまたいで上値指向の強い相場に戻りそうだ。来月4日に東京で「業務自動化カンファレンス2020」が開催されるが、そこで「AITalk」によるナレーション自動作成に関連するセッション講演・ブース展示を実施する予定で話題性もある。
少し毛色の変わった銘柄では朝日ラバー<5162>に着目してみたい。人気化した時の瞬発力は物凄く、今月10日から3営業日連続のストップ高(3日目は取引時間中)で700円近辺から一気に1099円まで跳躍した。切り紙構造とゴムの複合による新しい伸縮配線を開発、ウェアラブル分野への応用が利くことで今後の展開に夢が膨らみ投資マネーを誘引した。その後は調整色を強めたものの、25日移動平均線との上方カイ離解消で再度スイッチが入るタイミングだ。
日程面では、あすは1月の消費動向調査が発表されるほか、今月20~21日に開催された日銀金融政策決定会合の主な意見の開示など。海外では米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表とパウエルFRB議長の会見にマーケットの注目が集まる。このほか12月の米中古住宅販売仮契約など。(中村潤一)