明日の株式相場戦略=構造的好況業種のICT関連に照準

市況
2020年2月5日 17時48分

きょう(5日)の東京株式市場では日経平均が234円高と続伸。再び5日移動平均線を上回るとともに75日移動平均線との下方カイ離もほぼ解消した。中国人民銀行の資金供給に加え、中国政府による景気刺激策に対する期待感がリスク選好ムードを演出した形だ。

個別では、まず前日に決算を発表したソニー<6758>の動向が注目された。同社株は朝方こそカイ気配で高く寄り付いたものの、これは前日の米株急伸の影響による他力の部分が大きく、寄り後早々に高値を形成した後は漸次水準を切り下げマイナス圏に沈んだ。その後は再び買い戻されて下げ幅を縮小したが、結局前日終値を40円あまり下回り長い陰線で引けた。市場コンセンサスを上回る今期業績の上方修正を発表したとはいえ、新型コロナウイルスによる肺炎の影響で業績見通しを打ち消す可能性も示唆したことで、株価は気迷いムードを象徴する値運びとなった。

もちろん、業績見通しが定まらないのはソニーに限ったことではなく、今期の企業業績全般について不透明感が強いことは否定できない。現在発表済みの3月決算企業(東証1部)第3四半期時点の集計をとると、通期見通しの上方修正に動いたのが全体の15%強、下方修正に動いたのが17%強、残りの7割弱が据え置きという状況のようだが、「これは新型肺炎の感染拡大によるサプライチェーン・リスクなど諸々の影響を織り込んでいないため、参考になりにくい」(国内ネット証券アナリスト)と指摘されている。また、感染者数は4、5月ごろにピークを迎えるとの見方もあり、今期中に収益への下方圧力が払拭しきれない懸念もある。こうした事情から、相場は来週末14日のSQ算出に向けて波乱含みの展開となるケースはあり得る。差し当たって次の変化日は12日水曜日、SQ前の“魔の水曜日”に向けて売り方がうごめき出すというシナリオだ。

しかし、だからといって株は買えないということにはならない。ボラティリティは高まっても、トレンド自体に変化が生じなければ押し目は買い場となる。2016年11月にトランプ氏が大統領選に勝利した後の長期上昇トレンドは、相場が荒れてもそれは波の上下動であって、潮流は発生しないということの繰り返し。そのたびに踏み上げ相場が演出され、その後の株高に拍車をかけるということが相次いだ。

今回の新型肺炎問題は、中国人民銀行にとどまらず、FRBをはじめとする各国の中央銀行が緩和的措置に動く気配をマーケットは肌で感じ取っている。4日に行われたオーストラリアの準備銀行理事会は政策金利の据え置きを決めたが、「必要であれば追加緩和の準備がある」との声明をきっちりと盛り込んだ。今ここでカードを切る必要はないが、いつでも切る用意があるということ。今は潤沢な流動性が相場を支える金融相場の認識、つまり「不景気の株高」というコンセプトで相場を見ておいたほうがよいと思われる。

個別銘柄で順張りを考えるなら、新型肺炎の影響に伴う中国の消費需要低減やサプライチェーン・リスクと交わることのない内需系の構造的好況業種に人気が集まりやすい。システム開発やITソリューション関連はその筆頭であり、改めて見直し機運が台頭しているように見える。そして、以前にも触れたが、カギを握るのは伝統的な業種とICTの融合だ。 教育ICT 農業ICT、医療ICT、建設ICT、不動産ICTといった切り口が銘柄物色のひとつの突破口となる。

農業・医療ICT関連では前日取り上げたキーウェアソリューションズ<3799>が戻り足となった。同社はNEC系のシステムインテグレーターで、農業ICTソリューションOGAL(オーガル)を展開するが、医療ICT分野でも、検査システム、院内感染対策システム、医療安全管理などワンストップでソリューションを提供できる強みを持っている。

一方、教育ICT関連の一角ではシステム ディ<3804>が目先切り返し態勢にあり着目しておきたい。同社は学校を主力に特定業種に特化した法人向け業務ソフトを開発・販売している。このほか、システム開発関連で穴株的ムードを漂わせているクエスト<2332>あたりもマークしたい。主要顧客はエレクトロニクス業界だが、 AIIoTをプラットフォームとしたストック型のクラウドソリューションに注力姿勢を明示し、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)関連需要に対応していく構えをみせている。更に不動産ICT関連としては昨年来何度か紹介してきた不動産向けクラウドソリューションを手掛けるいい生活<3796>。依然として注目場面が続くが、目先的にはあすに決算発表を控えており、発表後の値動きをみてから対応するのが実践的だ。

このほか、富士通系ディーラーで、電子デバイスのほか、クラウド構築やエッジコンピューティング人工知能(AI)分野など多角的な展開力を持つ都築電気<8157>はロングランで目を配っておきたい。

日程面では、あすは1月の都心オフィス空室率、1月の輸入車販売が発表されるほか、30年国債の入札も予定されている。海外ではフィリピン中央銀行、インド中央銀行がそれぞれ政策金利を発表する。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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