桂畑誠治氏【再び下値模索の全体相場、春先にかけての展望】(1) <相場観特集>

特集
2020年2月10日 18時30分

―新型肺炎の影響拭えず、一筋縄では行かない地合いに―

週明け10日の東京株式市場は、依然として中国で発生した新型肺炎 の世界経済への影響を警戒する動きが強いなか、リスク回避の売りに晒された。前週1週間を通じて日経平均株価は先物主導で大幅な戻りをみせたことで、目先は利食い圧力も表面化している。頼みの米国株も前週末はNYダウなど主要株指数が下落に転じており、これも売りの口実となった。果たしてここから春先にかけ東京市場に光明は見えるのか。相場の分析に長けるベテラン市場関係者に今後の相場展望を聞いた。

●「新型肺炎リスク重荷で2万3000円割れも」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

新型肺炎問題はなかなか終息に向けた糸口が見えず、株式市場でも上値押さえの要因として強く意識されている。当面は不安定な動きを強いられそうで、状況次第では日経平均が2万3000円台を大きく割り込むような調整も想定される。ただし、中国では人民銀行が大規模な資金供給を行い流動性確保に努めているほか、3月5日の全人代で政府当局の財政政策の発動も期待され、その場合は下値リスクが低減する可能性もある。

新型肺炎の影響としては中国国内で既に工場が止まり製造業に打撃を与えている。また感染防止のために会合なども禁止されていることから、飲食関連の企業にもデメリットが大きい。サプライチェーン・リスクについては欧州や韓国で既に顕在化している。日本でも自動車をはじめとする国内製造業には注意が必要だ。春節を控え在庫を前倒しで積んでいた関係で今はまだあまり取り沙汰されていないが、早晩調達リスクが現実化してくる懸念も払拭できない。

ワクチンなどが開発されれば光明となるのだが、そうでない場合は長い期間にわたり新型肺炎は相場の重荷となる状況も考えられる。経済実勢への影響という点では2月分のデータから反映されることになるが、これが発表される2月下旬から3月にかけて相場は改めてボラティリティが高まる可能性もある。ハードデータに先駆けてマインド統計が投資家心理を左右しやすい。そのなか、2月21日に発表予定の日本、欧州、米国のPMI(購買担当者景気指数)に対する関心は高い。

物色対象としては、当面はサプライチェーン・リスクが浮き彫りとなっている自動車セクターなどは買いを入れにくいが、輸出セクターでも相対的に同リスクに対して強みを有する半導体製造装置関連などに優位性がある。また、医薬品セクターなどもディフェンシブ銘柄としての位置付けに加え、新型肺炎対策への思惑なども上値期待につながる可能性がある。このほか、新型肺炎の影響を受けにくい内需系成長セクターとして、IT分野でソリューションサービスなどを手掛ける銘柄群に着目しておきたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)

第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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